子供は、「あれ、このバラ、本当はローズマターじゃなくて『キャラ・ミア』っていうんだ」と大きな声を上げている。花名の案内板のカタカナがすっかり読めるようになり、キャラ・ミヤという名前に気付いたらしい。
どうやら、私の教えた水彩絵の具の色名を、バラの種類の名称として覚えていたようだ。私は逆に、子供がその色名を言うとき、自分の絵のバラの色のことを言っていると思い込んでいて、お互いずっと思い違いをしていた訳だ。
これには思わず、二人そろって笑ってしまった。
それぞれ別のアングルからスケッチを始めたはずなのに、子供の様子をふと見ると、スケッチブックを広げずに途中で仕入れた「ねるねる・ねるね」を作り始めている。 なんという大胆さ。緻密な顔付きをしている割には、行動が雑駁に過ぎるようだ。
そうか、スケッチする父親を尻目にして、「花より団子」と来た訳か。・・・それでは私も遠慮せずプシュっと行こうではないか。 |