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オーディオ : 周期的に訪れる枯渇感(オーディオという趣味について)
HDオーディオという潮流


<HDオーディオという潮流>  2009.04.25

 オーディオ再生用のメディア(媒体)はアナログ時代のLPレコードからデジタルのCD・DVD(さらにはHD−CDなどのスーパー・オーディオ)と変化してきている。

 物理的な凹凸として刻まれた線条から機械的に振幅を拾い出して電気的な信号に変える代わりに、予めデジタル信号のピットとして記録された音声信号または磁気的な記録信号(しかもデジタル化された状態)を再生するわけだが、こうしたデジタル・メディアは発達著しい分野で、どんどん高密度化され、更なる小型化が進んでいる。技術革新や改善に加えて、生産量としてのスケール・メリット(工業製品なので売れるほど安くなる)も生まれて低価格化も同時に、あるいは一歩遅れて、進行している。

 レーザー・ディスクからDVD、さらにブルーレイへの変化など、まさにこのデジタル・メディア(あるいは磁気ディスク・メディア)の技術革新の歩みであろう。

 当初、私達が家庭で「デジタル信号」の状態で音声を記録しようとした場合、BataやVHSテープや8mmテープなどのビデオ機器を使ってのPCM録音が主であった。それらを携帯する事など想像もできなかった訳であるが、その後DATテープ・メディアやMDと発展し、こちらも低価格化、高密度化が進んでいる。いまではそうしたメディアからメモリー・オーディオへ移行し、電車内でMDプレイヤーを見かけることも無くなった。

 CDをプレイヤーのディスク・トレイに乗せてローディングさせる(それが通常のフォーマットであれ「MP−3」などに圧縮したフォーマットであれ)という事は一つの儀式だ。遥か昔の「LPレコード」の時代から続く<音楽に向き合うための儀式>であるから、正統に継承したいものだが、なんとも煩わしく思うときがある。

 何か作業をしながら音楽を聴く場合などがそうだろう。気がつくと一枚分の再生が終わっている。そこでまた再生を繰り返したり、別のディスクに差し替えたり・・・。

 メモリー・オーディオの利便性、携帯性は改めて言うまでも無い。この世界を体験してしまったら、メディアを入れ替えるという従来の儀式を含んだ行為に戻ることは難しいものがある。

 人間はものぐさ(特に私の場合はそれが顕著らしいが・・・)に出来ているらしい。一度こうした恩恵に浴すると、私のような横着者で無くてもさらなる欲が出てくるようだ。そもそもがコンパクトでポータブルだったこれらの再生機器の容量を、さらに一気に推し進めて巨大化すれば便利至極ではないか、と。

 そうして出現してきたのがハードディスク搭載の機器だ。アンプとセットになったものが多いが、純粋にデータ・サーバ的な製品もある。大容量のデータを蓄積できて、簡単に操作でき、パソコンよりもコンパクト(ディスプレイやキー・ボードなどの周辺機器が不要なため)だ。内容は特化したパソコンであるからオーディオ機器では発生しなかったようなソフト面や制御面でのエラーなどが発生するだろうが、パソコンから比較すればずっと親しみやすいものだろう。

 私は、パソコンというサーバ的な機能があるのに、別途、ハードディスクを搭載した専用マシンを欲しいとは考えないが、人それぞれだから微妙なところかも知れない。

 ポータブル・メモリ・オーディオはパナソニックのD−Snap(二代目の製品)とiPod−NANO(第2世代)を使っている。

 D−SnapはFMチューナ付きで「SDカード」方式なので通勤や出張のお供には向いている。ワイシャツのポケットにHi−Fi音源を詰めて持ち運ぶということが気に入って、毎日使ってすでに何年目かになる。その間故障は一度もないが、振動や圧迫といったダメージ要素を考えれば実に優秀な機械だ。

 最近、i−Pod NANOを、第5世代の新たな製品へ切り替えた。従来持っていた2MBの状態から16MBへメモリーが増えて、利用頻度が高いFMチューナが付いた。カメラも内臓していて動画も撮れるので、液晶も二周りほど大きくなった優れものだ。このコンパクトな利便性に圧倒されて、先の2機種は出番が無く、無事に予備役入りとなっている。

 これらの機械へのソース(供給源)はパソコンで、それぞれ専用のソフトで管理している。i−TUNE(Apple)の方がパナソニックの管理ソフトよりも直感的で使いやすいように思う。

 勿論これらの管理ソフト上で、つまりパソコン上で、収録してある曲を直接再生して聴くことがある。小さな機械から溢れる鮮度の高い音楽と比較すると、パソコンからは数段落ちた貧相な音が流れてくる。私はこの音が「HDオーディオ」の浸透を阻む遠因ではないか、と考えている。

 パソコンにしてこの音(貧弱極まりない)なのだ。HDオーディオ機器はいまだ価格はこなれてなく、メーカーを問わずどの製品も高額だ。沢山の資金を投入してもあの程度の音(パソコンで経験する音質)ならば、誰だって躊躇するはずだ。まともな判断力があれば、購入を踏み留まるに違いないではないか。


 さて、そういった従来の概念を覆す出来事が起こった。今回、オーディオ・ボードの特筆できる音に出会えたのだ。

 そして開眼したのは、再生する<回路>が優秀であればこの上ないオーディオ・デバイスと成り得る、ということである。パソコンに別途オーディオ・ボードを組み込んで、オン・ボードの回路(素のままのチップセットのオーディオ・コーデック回路)ではない状態で再生してみると、従来にない実に素敵な体験ができる。そこから素晴らしい音の世界が溢れ出し、音の粒や旋律の流れに直に触れられるのだ。

 僅かに回路を変えるだけで、万能を目指したパソコンでこの状況が得られるものである。

 汎用性をそぎ落として音楽の蓄積と再生に特化して専用に設計されたHD(HDはハードディスクか、あるいはハイ・デンシティだろうか?)オーディオならば、パソコンで得られたそれを簡単に凌駕するはずだ。そこから溢れる音の世界はさらに素晴らしいのではないだろうか?

 HDオーディオでは操作上の利便性だけではなく、メディアの管理(CDなどのストック場所の確保、分類、整理は頭が痛い問題だ)も簡単になってしまう。考えてみればLP時代から続いていたストック・ラックが不要となるのだ。まさに磁気記録媒体の特性だ。保存されるのは信号そのものなので、傷などによる本来の音に対する劣化や損失などの要因とも無縁になる。改めて考えると、実に画期的なことといえよう。

 こうしてHDオーディオの可能性に触れ、先行きに想いを馳せてみると、俄然、興味が沸いてくるではないか。
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<HDC−1.0 S (音楽再生用 パソコン)>

 HDオーディオの可能性に触れてみた。その利便性や可能性は充分な魅力がある。

 そうしていろいろ物色してみると、やはり発展途上の分野のせいだろうか、市場がこなれていないのだ。

 価格が高い。これでは到底、手が出せない。それなりの性能や品質を持った製品を目標として考えると、まだまだひどく高価である。これでは当分の間は、高嶺の花と仰ぎ見るほかはないだろう。

 オーディオ・ボードはPCI規格の内臓タイプの製品であるが、USB接続する外部機器としても製品がある。私が作ったパソコンのPCIソケットにはTVチューナー兼ビデオ・キャプチャー・ボードが入っているが、以前利用していたグラフィック・ボードは抜いてしまったので、今は一スロット分空いている。だからPCI規格に準じた内蔵タイプが設置できる。

 さて、考えどころだ。私のデスクトップはベア・ボーン(半既成)の自作マシンで、内容的にはいわく(本日の反省 (2007.02.25)>がある。このマシンでさらにPCIボードを増設して、果たしてどうであろうか。もう一台はノートであるから、こちらはPCIのソケットがない。ボードを購入して設置した途端にマザー・ボード自体が壊れるような気がする。いや、気のせいだろうが、あのマシンはそういう「へそ曲がり」な所があるのだ。いや私自身にか・・。良く体験する悪しきパターンのイメージが浮かんでしまって、振り払っても離れない。

 あれやこれやと様々、検討していたらボードだけでなくパソコン自体もかなり安くなっていることを発見した。ONKYOの音楽再生向けに特化した設計の専用パソコンは当初20万を超えていて、2009年の時点で、未だに18万円代の高値だった。それがどうだろう、最近路線変更したのであろうか、59800円での製品が発売された。驚いたこともあるものだ。新たに発売された機種なのに先行機との価格差が激しく、わずか1/4の値段なのだ。千歳一隅の機会ではないか。

 それでも躊躇していたら、先行機自体も低価格で発売するNet−SHOPが現れた。63000円。ヨドバ○の店頭で昼休みにパトロールして確認してみたら、まだ18万円で販売している状況だった。先の「千歳一隅の機会」が霞んで消し飛ぶような「新たな機会」の到来ではないか。これを逃せばもう購入は出来まい。

 直近で発売されたのは「HDC−1L」という製品。OSはWindowsXPであり、オーディオ・ボードは内部USB接続の専用設計のものが搭載される。映像出力はアナログのみでデジタル出力はない。初期の「HDC−1.0S]と比較すると、ディスク容量は160GBに増えているが、マザー・ボード(チップセット)やCPUはランクが下がる。XP向けの古いチップセットで電脳マシンとしての拡張性はまったくないが、音楽の再生に絞れば充分なスペックだ。(パソコンとしては私の自作マシンと変わらないものだろう。)

外観 大きさは、同社のミニサイズコンポと同じ。

横幅は205mmの小型。
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内部の様子 内部の様子。

DVDドライブのマウントは耐震上の工夫がされている。

ドライブ自体の回転振動を抑えるための制振テープ、ユニット部の保持をシャーシから浮かせる設置状態、振動抑制用のゴムなど、

そのチューニングに驚く。

<HDC−1.0S内部>

 一方、「HDC−1.0 S」はOSはVISTA−HOME・BASICであり、ボードはPCI接続の市買品(SE−90PCI)のカスタム品が搭載され、出力に加えて入力端子が付く。いずれも金メッキのRCA端子で高品位のパーツが使われている。CPUはCore2DUOでマザーボードはノートPC用のものが使われている。映像はデジタル出力のみでアナログ出力はない。ただし、変換用のプラグが付属するのでアナログのディスプレイでも利用可能となる。

 横幅205mmで同社製のコンポと同様の筐体に収まり、フロントはアルミ無垢の肉厚なパネルが奢られている。つまり「CR−D2(「デジタルアンプを物色する 2009.03」)」などと同じ統一感がある仕上げが施されている。筐体設計や実装方法、振動対策などはコンポに準ずる仕様や独自の音響的な考慮がされている。このために実現される静音性は特筆できて22dB(「HDC−1L」だとさらに改善され18dB)、これは図書館内の静粛性だ。無音ではないが、気になる動作音−空冷のファンやディスクのドライブ音−はまるで聞こえないレベルだ。ちょっと考えてしまう部分としては、新品特価であるがメーカーでの出荷はすでに終息している、という点くらいだ。

 パソコンであるが音楽のアナログ再生に特化した専用設計が行われているもの、という意味では先のHDオーディオの製品と同列なのだ。また、音響製品としての仕上げや再生回路はまさにオーディオ製品と同一だ。唯一異なるのは電源部であろう。このパソコンはACコンバータ・ユニットが外部にあり、パソコン本体へはDC供給される。ノート・パソコンと同様だ。考え方によっては、電池駆動と同じなので熱対策は不要であるし、整流回路等は外部となるので電流はピュアな状態に変換されてから取り込まれる。コンデンサーやトランスが機器内にないので熱対策だけでなく電源回路からの不要な発信に対しての防御対策も不要だ。

オーディオ・ボード オーディオ・ボード
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<HDC−1.0Sのパソコン機能の増強(メモリー増設)>

 OSはWindows VISTAのHOME−BASIC。

 搭載する基本のメモリーは1GBであり、説明書やスペック・シートでは「メモリー増設は不可」となっている。

 VISTAの中でもHOME−BASICはAEROが利用できない分、他のレビジョンよりはメモリー負荷は少ないのだが、それでもOS自体は重いもので、1GBの搭載では快適な動作が期待できない部分がある。ネットブック程度のWebやメールの閲覧程度ではなく、パソコン上の各種アプリケーション機能を利用する場合は、何とかしたくなる。VISTAの機能でUSBメモリーを接続し、それをドライブ(固定の記憶領域)としてではなく実行時のOS側メモリーとして利用することができるが、その方法だと処理速度などはとどうであろうか。本職の癖に研究不足で良くわからないが、やはり、内部メモリーを正当に増設したい。


 さて、以下はメモリー増設の手順だ。メーカー側の認識からすれば「不当改造」という状態となり、保障範囲から外れてサポートは受けられなくなる。だから、実施に当たっては「自己責任」での判断と思い極めが必要だ。充分に注意されたい。また、言うまでも無いが、問題が発生してもあくまでも自分の責任で対処すべき事柄なので、参考にする場合にはそこをご理解願いたい。

 「パソコン」をパーソナルに使う決心が付いたら、以下の方法を参照されたい。繰り返すが、推奨すべき方策は「メーカへの増設依頼」だ。HDC−1Lではメモリー増設を受けている(メモリー込みで2万円ほどだったと思う)ようだが、HDC−1.0Sではそうしたサービスは無いかもしれない。(そもそも1Lとはボードが違うし・・・)

 なお、メモリーは<PC2−5300(DDR2−667)>。(バッファロー製の2GBなどでは2000円程度)作業に際しては静電気等には充分注意されたい。勿論、コンセントは抜いておく必要がある。
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フロントパネル DVDユニットのマウント部

<HDC−1.0Sの開放>

 さて、実施に当たっては「自己責任」での判断という認識ができ、こころの準備が整ったら筐体の開放作業だ。

 コンセントは抜いてあるだろうか。作業を始める前に、もう一度確認だ。


 まず筐体裏面のネジを外す。(このあと扱う「ネジ」はすべて黒色のプラスネシだ。)

 軽く後ろにスライドさせると、上蓋部分がそのまま取り外せる。内部が現れるが、マザー・ボードは底板にマウントされているので、盤面へのアクセスにはさらに基盤や部品の開放が必要だ。しかし、この状態でボード上のミニPCIソケットへのアクセスが出来る。ここは空きスロット状態だ。ノートブック同様のベイなので、無線LAN用のミニPCIボードが増設できるようだ。

 さて、フロント・パネル横の隙間から、パネルから出たマウント用ノッチ(プラスチック製の爪)を丁寧に外すとフロント・パネル全体が取り外せる。周辺部は手で手当てできるが下面のノッチは奥にあるのでドライバーなどで外してやる必要がある。爪を折ってしまっては大変なので慎重に扱う、あせりは禁物の要注意の作業だ。

 フロント・パネルが外れると、内部のマウント・パネルが現れる。薄型のパナソニック製DVDユニットとその下部にはハードディスクが懸架されている。このマウント・パネルは何本かのネジで固定されているのでそれを外していく。マウント・パネルを外すと筐体のフレームがあるが、そこに、正面側からマザーボード面へアクセスできる空間が現れる。

 すぐ目に付くのがボタン電池やメモリー・スロットだろう。スロットには二枚のメモリーが挿せる状態で、一つは空きになっている。ノート・パソコンのメモリーを増設した事のある方なら判ると思うが、このスロットへのメモリーの挿入にはコツがいる。斜めに挿してその後下に押し下げるようにする必要がある。


 このアクセス方法であれば、DVDドライブやHDドライブが慎重にマウントされたパネルからDVDやHDの各ユニットを取り外す必要はない。メーカーがチューニングをした「耐震上の基本性能」を劣化させる心配なく、メモリーの交換・増設が出来る。

メモリーベイ フロント・パネルを取り外し、DVD(その下部にはハードディスクが懸架されている)のマウントパネルを外すと、マザーボード面が現れる。

ドライブが慎重にマウントされたパネルからDVDやHDの各ユニットを取り外す必要はない。

耐震上の基本性能を劣化させる心配なく、増設が出来る。
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<HDC−1.0 S から流れる音>

 これは一体なんだろう。驚くべき、再現性だ。目の前にあるのがパソコンとは思えない。

 アンプは搭載していないので、アナログ出力を直接スピーカーへは接続できない。パワー・アンプで増幅してやらないと再生された音を聴くことが出来ないので、スピーカーから流れる音は接続したアンプの影響を大きく受ける事になる。そういう意味では、純粋にこの機械の再生音だけを評価するのは難しい。

 今、接続しているのは真空管のパワーアンプ「TU−870]でもないし、先日購入したCDレシーバーの「CR−D2」でもない。パワード・スピーカーの「GX−D90(Y)」。目を閉じてみると、再生しているのがそんな機械とは思えない。

 そもそもパソコンの再生音とはまるで異質な、高品位な世界が広がる。ノイズが全くなく、音の歯切れも抜群であり、信じられない再現性を持っている。これはもう、優秀なオーディオ・セットの品質だろう。僅かな金額で、これほどのものが実現できるとは考えなかったが、それは嬉しい誤算だった。

 オーディオ機器並みに神経を使ったほうが良かろうから適当な設置場所を考えて、このパソコンを本格的な再生機(オーディオ機器の一部)として接続したいと考えている。

 特に驚いたのが、音楽配信サイトからダウンロードした楽曲だ。「CDを超える再現性」などと表記されていたが、半信半疑であり、また大きく出たな、位にしか考えていなかった。ところが、先の小さなスピーカ−で再現してさえ、音の違いが判るのだ。CDよりも透明であり、定位憾、臨場感がある。音がそこから響く感じ、目の前に楽器があってそこから豊穣な音が溢れる感じ、だろうか。要するに、そこにはこれまでに感じたことのない「高い再現性」があるのだ。

 じつに新鮮な体験であった。

パワードスピーカ
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