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お茶道具、いろいろ
中国茶の愉しみ

 去年のことだ。

 台湾へ旅行したが、そこで私は茶器と中国茶を買おう(2006.11.23 「旅にしあれば」)と思っていた。

 雑誌で紹介されていた「中国茶」、それも<台湾のお茶>をなんとしても試してみたかったのだ。甘い香りと、柔らかなのど越し、飲んだ後に残る清涼感、どの記述も、私の興味を引くものだった。

 数年前に、胃の調子が悪くて、大好きなコーヒーを少し控えることにした。若い時分から愛飲していたのはもっぱらコーヒーだったが、最近まで日に何杯か淹れて飲んでいた。朝と夜は自分でドリップを、仕事中はインスタントだ。そんな状態を長年ずっと続けていたが、少なくとも仕事中はコーヒーではなく「烏龍茶」を飲む事にした。ステンレス製の350mlほどの保温マグを使い、パックに入れた茶葉を利用するのだ。パックだけが数十枚セットで売られているので、それに茶葉を詰めて置いて自分でティーバックを作っておく。

 私が飲んでいたのは、スーパーで売っているごく普通の中国産の烏龍茶だ。琥珀色の色が出て、口当たりがいい。最初の一煎目だけが芳ばしい香りがした。要するに安物だ。

 コーヒー、紅茶もそうなのだが、日本茶も大好きだ。会社では中々飲めないが自宅にいるときには、よく飲んでいた。日本茶の銘柄としては、鹿児島(鹿児島県溝辺町)、藤枝(静岡県藤枝市)(2006.06.02 「藤枝にて」)を産地とするお茶が大好きなのだ。勿論、地元の「狭山(さやま)茶」も好きだが、鹿児島の爽やかな甘みや藤枝の濃厚なこくの方があっさりとした狭山よりも気に入っている。

 こうした生活背景の中で、その「記事」を目にしたのだった。

携帯用のセット 一番簡単なのは、携帯用のセットを一つ揃えてしまうことだ。

蓋碗(がいわん)と呼ぶ、ふた付きの茶碗ならお茶を淹れることも、そのまま飲む事もできる。

ちいさな茶杯(ちゃはい)も用意すれば、
スタッキングして小さくまとめることができる。


家でも、フィールドでも、愉しむことができるだろう。
写真のセットはNetショップ<萬里工芸>にて購入

携帯用のセット
携帯用の茶器セット

蓋碗(がいわん;ふた付き茶碗)、
茶海(ちゃかい;お茶の攪拌用マグ)、
茶杯(ちゃはい)
携帯用バーナーセット
携帯用バーナーセット
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 台湾で買おうとしていたのは、「ジャスミン茶」や「烏龍茶」などであり、いわゆる私たちのなかでの「中国茶」だ。台湾産のお茶というものも、今まで飲んでいた中国福建省産の味を爽やかにしたもの、と考えていた。ちなみに我が家では「白手長猿印」として親しまれている中国茶を飲んでいたが、その類を想像していたのだ。
( 「白手長猿印(しろてながざる・じるし)」がブランド名だと長年信じていたが、それは家人の勝手に付けた呼称であった。実際は福建省安溪産の「白猿鉄観音茶」が正式な名称らしい。)

 烏龍茶を普段飲むようになってから、同輩が中国茶に関しての文庫版のHowTo本を貸してくれた。その中で<工夫茶器>という紹介があり、「凍頂烏龍茶(とうちょう・うーろんちゃ)」を本格的に楽しむ場合には、その茶器を利用すると書かれていたのだ。

 その記事が頭にインプットされたが、<凍頂烏龍>がどのような味なのかは、実は余り気にしていなかった。漠然と、いままでの烏龍茶のバリエーションの一つ、と思っていたのだ。

 台湾旅行よりも半年ほど前だったが、「Har□−Off」というリサイクルのチェーンストアに立ち寄ったときのことだ。感じの良い酒杯などを見つける場合があるので、この店の食器コーナーは良く覗くのだが、そこで私の頭にインプットされていた「工夫茶器」のセットを偶然に見つけた。

 定価が想像出来なかったが、付けられた値段でこのセットが手に入るなら妥当だろうと考えて購入した。使うかどうかは判らないが、このとき、二度と同じセットは手に入らないように思えたのだ。ちなみにこの店の食器はすべて未使用品だ。リサイクル店だが、使用痕跡があるものは扱っていない。だから、結局、私は未使用の新品セットを大分安価で手に入れたことになる。

(後で調べたら竹製の携帯セットは「日式手提式 竹茶承」という名称で、この携帯セットだけで6,000NT、茶壺は1、700NT、茶海が530NTであった。日本円に換算すると1NT(New台湾元)のレートは約4円なので32,000円ほどだ。「大分安価」どころではなく、空前絶後の安価で手に入れたことになる。)

茶器のセット
<陶作坊>の茶器のセット
茶器のセット
茶壺(ちゃふー;小さな急須)、
茶海(ちゃかい;攪拌用マグ)、のみが入っていた。
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 台湾では、このセットと同一のメーカーの茶器をDFS(ハワイやグァムにある例の免税店チェーン)で見つけた。

 このメーカーの製品はすべて手染めなので一品ごとに微妙に色合いが違うということだ。高くて迷ったのだが、いい色が出た茶壺と茶杯のセットだったので思い切って購入することにした。先に手に入れたセットは、茶杯や聞香杯(もんこうはい;香りを楽しむための専用杯)が欠品していたからだ。

 「茶器」だけではない。旅行前に研究したガイドブックに掲載されていて、現地に着いたら是非寄ってみたいと気に停めていたお茶のショップが見つかり、そこで「茶葉」も購入できたのだ。

 この店、「興華名茶」は無農薬の直製農場を持っている。安全で、品質がよく、良心的なショップとガイドブックに記載されていたのだ。事前にチェックしていたので店を訪れるべく街中を探したが見つからず、ようやく半分偶然に見つける事が出来た。(2006.11.23 「旅にしあれば」 #2印鑑を作る)

 かねて念願の店で、目的のお茶(台湾産の中国茶)を無事に購入することができた。

 そして、そこには、素晴らしい出会いがあった。

高山茶(凍頂烏龍茶)
凍頂烏龍茶

茶葉の鮮度は3週間らしい。

真空パックで購入し、開封後は冷蔵庫で保存している。
数週間に使う分だけ小分けして取り分け、残りは冷蔵庫。
鮮度という意味では若干問題があろうが、産地直結ではないので仕方あるまい。
高山茶(阿里山、高山烏龍茶)

 日本語が話せる若い社長さんの人柄がまず良いが、なんと言っても、気軽に「店お勧めのお茶」を振舞ってくれるところが良いと思う。

 この「振る舞い」が無かったら、今味わっている台湾茶との出会いも無かったかも知れないのだ。

 そのときは、「銘柄」も「産地」も「等級」も、中国茶に対しては何ひとつ知識が無くて、どのお茶を選んでよいかまったく判らない無知な、暗闇の状態であった。そんな私に、お店で薦めてくれたのは「高山茶」だった。そして、そのとき試飲させてくれたのが<高山茶>のなかでも人気の高い「阿里山高山茶」であった。

 「高山茶」は1,000m以上の高地で栽培し、手もみで焙煎した烏龍茶に対しての呼称だ。1,000m以上でも、200m刻みで等級が細かく分かれる。「阿里山・高山茶」は台湾の中南部にある阿里山(ありさん)を産地としていて1,200mから1,400mの地帯で栽培されるいる凍頂烏龍茶を指す。最近人気の銘柄だ。

 私はその味に驚いて、早速購入し、さらに普段用に高山茶よりもランクが下になる「凍頂烏龍茶」―産地が阿里山ではない―も合わせて購入したのだった。

 写真で紹介した茶葉は「凍頂烏龍茶」。すでに、「阿里山・高山茶」はかなり前に飲み終わってしまった。
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 このお茶を飲んだときの感動をなんと表現したらよいだろうか。

 こんな後味のお茶があるのか、というのがそのときの印象だ。お茶の味は「端麗」といおうか、どちらかと言えば台湾の烏龍茶は薄口であり、日本茶と違って「渋み」がそれほど感じられない。

 「爽やかな味」なのだが、その表現だけでは、どのような味かは判らないと思う。具体的なイメージの手がかりとしては、私の好きな鹿児島産のお茶にある微かな甘みだけを強くしたのど越し、といえばよいだろうか。するっとのどを通過していって、日本茶と違って、粘ったり、どこかにとどまる、ということが無い感じなのだ。

 「興華名茶」の社長が、香りがあるのでそれも楽しんでください、と薦める。お茶はなくなったが、杯からは、かすかに甘い香りが漂っている。甘い香りといっても「ジャスミン茶」が持つような香りとはまったく違っている。ミルクの香りとは全然違うのだが簡単に表現すると「ミルキー」というのが一番適切だろうか。

 小さい頃に飲んだ、冬の日のスキムミルクのような「ほのかな甘い香り」が、ほんのりと立ち上がってくる。

大型の茶壺 茶器(工夫茶器)のセット
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 その出会い以来、私にとっては、台湾のお茶は無くてはならない必需品となった。

 一煎目の軽やかな爽やかさ、二煎目に感じる微かな渋み、三煎目のコクと立ち昇る香り、四煎目の親しみ安いまろやかさ、淹れるごとに表情が多彩に変わる。

 休日は、茶器のセット(先の工夫茶器のセット)を出してきて、家族にも薦めて何煎も楽しんだ。お茶を飲む事によってリラックスできるのだが、さらには、先ほど書いたように、このお茶はのど越しだけでなく独特の香りが楽しめるのだ。その立ち昇る微かな甘い香りは、幸福なひと時を与えてくれて、十分な「寛ぎ」と「安らぎ」を引き出してくれる。

金宣茶;「萬里工芸」
金宣茶
東方美人茶;「萬里工芸」
東方美人

 こうして毎日楽しんでいるうちに台湾で買った茶葉が残り僅かとなってきて、あわててNetでショップを探した。

 「興華名茶」はOnline Shopも開設している。航空便の送料に目をつぶれば高品質の産地直結オーダーが可能だ。しかし、航空便の送料はやはりインパクトがあってなかなか注文に踏み切れない。そんな中で日本で台湾のお茶を扱うショップが幾つか見つかった。何度か注文する中で、ようやく気に入りの店もできた。

 いまでは、幾つかの産地によるお茶の種類を常時揃えておいて、それを気分によって使い分けたり、春茶・冬茶と言うように同じ種類でも収穫した季節によって異なる味や香りを楽しむ、というまでになっている。通の入り口につま先を踏み入れた位のところだろうか・・。

 ただし、中国茶全般となると途轍も無く奥が深いので、私は今のところ、台湾産の青茶(低醗酵の烏龍茶グループ)だけに留めている。

名間 四季春
名間 四季春
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 茶葉には色々試してみて気に入ったものを見つけていく楽しさがあるが、<中国茶器>にも同じような楽しさがある。

 茶葉は台湾産でも、茶器製造の本場は中国本土の「宜興(ぎこう)」や「徳化(とっか)」という地域だ。

 「宜興の土で作られた素焼きの茶壷は多孔質で通気性に優れ、茶葉の味と香りを引き出す」と紹介されている。有田や益子などのように窯周辺には伝統工芸師がいる工房が集中していて、陶磁器の一大産地なのだろうと思う。

 ここの陶器は、土の質はわからないがその手触りから考えると、日本の常滑焼をイメージすると一番近い感じだ。宜興で産する良質な土を使って焼き上げられた茶器は、一般的には滑らかな艶を持っている。

 それが使い込むにつれて、茶渋の効果もあいまって段々と滑らかさを増して、肌に深みが出てくるらしい。そんな変化する楽しさが茶器にはある。日本の急須と違ってそのデザインが豊富だが、多彩なデザインを使い分ける愉しみも出てくる。

如意茶壺 茶杯、聞香杯
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「茶盤」のスライドショー    <茶盤(ちゃばん)>

    お茶の道具台

    圧縮竹を利用して防水性がある
    大型(42×26)から小型(24×15)まで各種

 さて、<茶葉>だ。

 茶葉は日本茶同様、産地によって種類があるが、味と香りがそれぞれ微妙に異なっている。

 私は台湾での出会いの後、もっと台湾の烏龍茶の世界を知りたくて、講談社発行の菊池和男著「中国茶入門」を買った。この本によって中国茶全般に対する知識を勉強した。丁度、ケーブルテレビのLala・TVでNHK趣味悠々の「中国茶の愉しみ」が再放送されていることを知った。天恵のタイミング。さらにその後、脇屋友司著 「中国茶の愉しみ」(NHK趣味悠々のテキスト)をアマゾンで見つけることができた。

 私が台湾で買ってきた「凍頂烏龍茶」も「阿里山高山茶」も、ともに<青茶(あおちゃ)>という低醗酵の種類だということが判った。

 <青茶>は「低醗酵の茶の総称」、烏龍茶は「同じ系統の茶樹品種」なので、性質を同じくするさらに幾種類ものお茶がある。さらに同じ品種でも産地によって微妙に異なり、栽培する高度(海抜)によっても違うので、その種類は膨大で、とても全部は試せない。全部をすぐには試せないが、手に入るものを順番で試してみることなら可能だ。そこで、私はその本で紹介されていたお茶の幾つかを順番で試してみることにした。

 ところが、初めの幾つかで気に入ったものが見つかった。「金宣茶」と「四季春」種だ。この2種類を見つけたところで満足してしまい、そこで新たな種類の購入は止まっている。

 実は「金宣茶」には逸話がある。初めの出会いは、何度か茶器を購入したNetショップ「萬里工芸」でサービスとして同封頂いたものであった。それ以来、このさりげない味と高い香りが気に入って注文し(メール便での発送料が無料というサービスがある)愛飲している。

「茶葉」のスライドショー    <茶葉(ちゃば)>

    台湾産の烏龍茶

    中国茶の分類区分でいうと、
    低醗酵の青茶

 先の工夫茶器や色々なNet上での中国茶の作法の紹介は、実は青茶ではなく、私たちにはPetボトルでおなじみの「全醗酵した烏龍茶」を対象とした場合のものがほとんどだ。

 参考までに、私の場合の台湾茶の淹れ方を紹介しよう。

<手順>
  台湾産の半醗酵した烏龍茶(青茶)の場合には、一煎目の爽やかさが特色だ。
  だから「洗茶」は不要だ。紹介されているような一煎目を捨てるという手順は必要無い。
  折角の香りと爽やかさ。茶葉を開かずにさっと淹れて楽しむべきだろう。
  勿論、茶器だけでなく茶壺は十分に温めておく必要がある。

<分量>
  さらに、茶葉の分量だ。茶壷のX分目などとの表記があるが、それでは茶葉が多過ぎて
  渋みしか感じられない。せいぜい7g程度、茶杓で一掬いでよい。

  写真で紹介した凍頂烏龍茶(大粒)の場合は、90・120ml程度の茶壺では10〜15粒程度でよい。
  その分量を基準にして、茶葉の産地や種類によって、自分の好みにに調整すればよい。
   (LUPICIAの茶葉は小さいので倍位の分量)

<抽出時間>
  95度のお湯、通常は沸きたてということになるが、そのお湯を茶葉の玉(最初は広がっていないため
  コロコロした玉状)に勢いよく注ぐ。そして1分(90・120ml程度の茶壺)ほど蒸らす。
  「四季春」などはもっと短くて、一煎・二煎目は40秒くらいでよい。
  その後、茶壺から用意した茶海(ピッチャー状の攪拌壷)に最後の1滴までを注ぎきることが必要だ。
  次は1分より少し長めにする様に書かれたものが多いが、4煎目以降から延ばせばよいと思う。

  200ml以上の茶壺では、茶葉の分量も少し多めで15粒から20粒(大粒の場合)くらい入れるが、
  その場合には、6煎目くらいから少し長めにして淹れる。
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「茶壺」のスライドショー    <茶壷(ちゃふー)>

    中国茶用の小型急須

    100ml から 250ml程度

   <茶海(ちゃかい)>

    茶壺で淹れたお茶を均一にするためのマグ
    一旦こちらに注ぎかえたあと、茶杯へ

 茶葉は、産地によって種類があり味と香りがそれぞれ微妙に異なっているし、形状もそれぞれ特徴がある。

 何冊か買った「中国茶」のガイド本では、「茶葉によって茶器を使い分ける」ことが書かれている。それは、茶葉自体の形状や大きさが異なるため、その形に適した茶壺の形を選んだほうが上手く淹れられるということがあるためだ。先のガイド本から、さらに独特の解釈をしている納富廉邦著 「Drinkin' Cha」を読んで知識を深めたが、この本ではありきたりの道具を使って楽しむ方法が紹介されている。その説も一理あるが、その反面、「趣味の愉しみ」では道具に凝るのは大切な点だ、と私は思うのだ。

 私の場合、最初は淹れたお茶を家族も飲んだが、すぐに楽しんでいるのは私だけになった。(もともと家人はお茶を飲まないためもあるが・・・。)  その後、一人で愉しむための小さな茶壺(120ml 位)を買ったのが茶器が集まりだした始まりだ。

 さらに、高級茶葉用に90mlくらいの大きさを買ったが、このくらいのサイズだと、持っている茶杯が大体40ml 位なので、一回煎で2〜3杯が入る。一人で飲んでも冷めずに楽しめる分量なのだ。

 と言うわけで、形の面白さ、色の楽しさ、淹れる茶葉の形状に合わせて、と幾つかの理由で茶壺が増えてしまった。

「茶杯」のスライドショー    <茶杯(ちゃはい)>

    中国茶用の茶碗

    日本酒の杯ほどで50ml くらい

   <聞香杯>

    香りを楽しむための専用杯

    ここからは、直接飲まず、
    茶海から注いだ後、茶杯へ入れる
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