前回の大胡までの登りは45分ほどが掛かったように思うが、もうこの坂道にも慣れたようで、今日の登りは快速だった。
駒形から大胡駅までで30分。まずまずの速度だろう。
さて、今日の相棒も、いつも付き合ってくれている友人H。口は悪いし、ぶっきら棒だが、それはポーズにしか過ぎない。内面が子供だから、大人っぽく見せようとしているに違いない。いや、そんな風に書くと怒られよう。
冗談はさておき、彼の内実は繊細なこころと途轍もない温かみを秘めているのだった。そうした思いやりは中学生のころから変わることなく、だから交わる私も、彼の前では素直でいられる。
あまり調子に乗ると、怒り出して凶暴化するが、普段は実に穏やかな性格だ。
介護をしていた母が、体調を崩して入院し、改めて検査をしてみたらひどく転移した末期がんが発見された。桜の散るころまでが、と主治医に告げられて呆然とする私を、何時もと変わらず励ましてくれたのが彼を含む友人達だった。
えっと思うまもなく亡くなってしまってからも、毎夜、私を訪ねてくれたのだった。
葬祭ホールに泊り込んだ当日から、飲むだろ、っといって四合瓶を片手に現れて、深夜まで付き合ってくれた。ベタッとするわけではなく、何時もの態度で接してくれることが、私にとっては本当に有難かった。そうやって前橋にいる一週間の間、慰め、励まし続けてくれたのだった。日本酒の地酒、これ旨いんだろ、などといって持って来てくれたのは、八海山や地元の酒。赤城山や町田酒造の清瞭など。彼自身は酒を飲まないので印象は薄いはずなのだが、よく私の好みを覚えているのだった。こうしたところが、友人Hの温かさなのだ。
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