江戸の政権は、その初期に制定された「武家諸法度(ぶけしょはっと)」という法令と、それによる規制で支えられていた。
しかし、徹底した中央集権ではなく地方分権も大幅に行われていたのは、みなさんもご承知の通だが、幕府が制定した枠組みの中であれば自主存立を許された<藩>という自治政権が全国津々浦々の広域を統治するという、複合統治の体制を成立させていた。
さて、江戸初期に幕府から「一国一城令」が発せられた。この命令は従来の統治体系を揺るがすような途轍もない内容だったと思うのだが、戦乱が絶えて安定した政権が樹立したことの証といえよう。
民生的なお触れやお達しではなく、極めて軍事的な直接命令だろう。長い戦国が終焉して新しい時代が幕あけ、領主を含めた皆が平和への希求を強くしたという時代背景があったためだ。
「もう戦いはまっぴら御免」という為政者に広がる雰囲気も手伝ったが、全国を統一した力ある武家政権の言うことなので、皆これをよく聞き入れたのだと思う。
|