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2010.11.23
メンテナンス・交換 クロスパイク ブレーキ

カメラ;
 RICOH CAPLIO GX−100 24−72mm F2.5


三脚
 カメラの手振れ補正による

 (画像添付時に約30%程度に圧縮)



 ESCAPE R3 GIANT(ジャイアント:台湾)のクロスバイクの「エスケープR3」はVブレーキで、標準でミドルキャリパーのブレーキバーがついている。

 今回の補修作業は、このブレーキ用アーム部分を交換する事にする。

GTRシリーズ4  2007シーズンモデル GIANT ESCAPE R3
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<ESCAPE R3 のブレーキ形状>

 ブレーキは、MTB用の機構である『Vブレーキ』がついている。現在、MTBの主流はディスク・ブレーキに移行しつつあるが、多くのクロス・バイクでは、圧倒的にVブレーキで設えられている。

 初めてMTBを買った当時、今から20年ほどもまえの話だが、ブレーキは『センター・プル』形式だった。

 今でもシクロクロス(非舗装路を含むクロスカントリー・ツーリング)用のモデルでは、泥詰まりを避けて、この形式が利用される。センター・プルはシート・ステーの中央にコマが付けられて、そこから両ステーに向って均等にワイヤーが掛けられる。ワイヤーはY字になっていて中央(サドル側)から分岐しているが、これがYを逆にした状態でコマに渡され、ブレーキレバーの操作で引かれる仕組みだ。中央を引かれるので、センター・プルという名称が付いていた。ダブル・ピポッドのキャリパーをSHIMANOが開発する前までは、この方式がロード車でも数多く使われていた。先のシクロクロスやランドナー車などは今でもこの仕様のブレーキを見ることが出来る。

交換したリアアーム 交換前のフロント

フロントはオリジナルの状態

 センター・プルのブレーキ・アームは、両シート・ステーに固定された短い棒状のもので、直線あるいは緩やかなL字になっている。

 その棒状のアーム上端に渡されたワイヤーが引かれることで、ステーに固定された下端部分を軸に回転する。棒の内側に取り付けられたブレーキ・シューが、その動作によってリムを挟む。棒にはばねが仕込まれているので、引かれて回転しつつも外側へ反発する。


 ブレーキ・アームの部分の構造は、実を言えば基本的に今のVブレーキも、上に書いた昔の構造と変わらない。

 棒の長さが2倍以上に伸びて、てこの原理で効きを強めている。それにワイヤー部分とシート・ステーのコマが省略されて、無くなっている。アーム上端の器具の開発によって均等に両方のアームを引く仕組みが出来たからだ。しかも、今の仕組みは簡単にシュー部分のリリース(リム面の開放)が出来る優れたものだ。
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 私は車載も輪行もするので、クロスバイクのタイヤの脱着はよく行う方だろう。

 タイヤのハブ部分はクイック・リリースなので、レバーを捻れば車体からは簡単に外せる。問題はタイヤ・ホイールをフレームから外す場合にリム面に迫ったブレーキ・シューがタイヤと干渉し、そのままでは抜けないことだ。これが、かのリリースの仕組みで簡単に外れるから、嬉しい限りだ。

 先に書いた構造なので、このリリース機能の重要パーツである、アウター・ケーブル金具は大切だ。C字を間延びさせた形状のアウターで、ブレーキ・アーム上端の金具部品に組み込む格好で取り付けられる。ここが痛むとブレーキの性能に関わってくる。

 このC字状の金具は比較的廉価なものので、錆が浮いてきたら交換するとよいだろう。


 もうひとつ、アーム自体の剛性、これも大切だ。いかに軽量化した上で強い粘りを出すか、という工夫がメーカーによって凝らされている。先に書いたセンター・プルのアームは単なる四角柱だったと思うが、今のVブレーキのアーム断面は複雑な形状をしている。この形状にメーカの努力が表れていると思う。こうした技術的な工夫によって、あの独特の効き具合がもたらされている訳だ。

今回の交換パーツ 今回のパーツ

 ブレーキのレスポンスは、アーム部分に仕込まれたばねの反発する働きによる。だから、この部分が劣化してくると、ブレーキの操作フィーリングが悪くなる。

 かなりの耐用性を持ったばねで、未だに「なまった」経験が無いので、このばねの状態は気にする必要が無いかも知れない。ではなぜブレーキ・アームを交換するのかというと、より軽量化を目指したり、高剛性のものを求める、といった志向によるものだろう。


 アームのほかに交換する要素としては、シュー部分だろうか。

 ブレーキ・シューは、購入時のままを使う人は少ないと思う。ロード用のシュー同様にハウジングの付いたものがある。こうした製品はシューのゴム自体も工夫があって、是非交換をお勧めするものだ。

 アームの交換より、よほど如実に性能が上がる。取り替えてその性能の違いを体感すると、まさに驚くばかりだ。そのあまりの劇的な変化に、なぜ早く交換しなかったかと自分の怠慢を嘆く結果になるほどだろう。
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<ブレーキ・アームを交換する>

 前に書いたが、この自転車は実に快適で、車重も軽く、高速性もいい。

 だから、特に不満は無く、ブレーキ・シューとサドルを変更したに留まっている。交換後にさらに施した事としては、ハンドル周りを調整したことだろうか。ハンドル・バーの左右を切り詰めて短くし、ステムの天地を入替えて、乗車ポジションを変えたのだ。


 さて、今回の作業。それら調整の延長となるようなメンテナンスではなく、完全な保守作業となる。

 そのため、感覚的な調整を行う部分は無い。安心して工程どおりに、淡々と確実に作業をすれば、めでたく完了となる。

 ただし、最後にやるべき課題があって、これをおろそかにしてはいけない。

 リムに対するシューのあたり角(トーイン調整)とアームの左右均等を、しっかりと調整することがそれだ。この締めくくり作業の手を抜くと、作業は完了しても払ったその努力が全て無駄となるので、充分な注意が必要だ。

 当たり前の話だが、この世界もご多分にもれず、終わりを良くしないとすべてが良くならない。

低廉なパーツだが、充分な剛性を持つ 低廉なパーツだが、充分な剛性を持つ。


各金具やゴムのスプロケット、シューなどが
セットされている。
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<交換の手順>

 パーツ交換の道具は専用工具ではなく只の「携帯工具」で用が足りる。

 基本の作業は、次の4項目だ。

 ・ワイヤーの取り外し
 ・アームの取り外し
 ・シューの取り外しと再設定(交換)

 ・調整作業(トーイン、遊びや引きしろ、左右の均等性)


 なお、シューだけを交換する場合は最後の2点を見ていただければいい。

新車時に交換したシュー ハウジングがあると、
シュー自体の圧迫力が増す。

このため、
同じ力でも充分な制動力を発揮する。



その差は歴然で、
唖然とするほどの違いがある。
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<ワイヤーの取り外し>

 5mmのアーレンで、アームのワイヤー保持ボルトを緩めてブレーキ・ワイヤーを外す。アルミのエンド・キャップを用意する。このキャップは必須なので、常備品として買い置きをしておくといいだろう。ペンチで抉ってキャップを外す。

 ワイヤーの縒りが解けてしまうと大変なので、専用工具になるが「ワイヤー・カッター」で切って処理する方法もある。この場合には、キャップ部分の潰れた場所辺りで切らないとワイヤーが次第に短くなってしまうので、要注意だ。

オリジナルの金具 交換後の金具
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<アームの取り外し>

 同じく5mmのアーレン・キー(6角レンチ)でブレーキ・アームを取り外す。

 固定ボルトはかなり長いので、この部分のアーレンは丸く終端加工されたもの(最後に写真を掲載している)を用意しておくと、作業が楽だ。

 アーレンの用法だが、最初はトルクが必要なので短い側を挿して長い方を手にして回すが、一度回りが緩くなれば、あとは、長い側を挿してくるくると回転を続けることができる。この長い側が丸く加工されたアーレンを用意すると、こうした長いボルト(回転数が多く必要なもの)の処理が格段に楽になる。

ブレーキ基部 ブレーキアームを外す

 古いアームを取り外したら、新しく用意したアームを取り付ける。

 外したステー基部にグリスを塗って、新しいアームを取り付けるのだが、アームの差込穴側にもグリスを着けておくと良いだろう。

 アームの根元にはノッチがあって、これがステー基部の穴にはいるのだが、「エスケープ R3」ではこの穴が3段あって、テンションを調整できる。私の場合は、2段目(中央の穴)で設定した。

 さて、このアーム固定ボルトだが、ボルトのネジ山には、緩み防止の蒼い塗料状のものが塗られている。このため、この部分をねじ込むのに少し力が必要となるが、この工夫が、緩みを防止する働きのためなので、こそげ落とさないようにしよう。
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<シューの取り外しいと再設定>

 今まで着けていたシューをそのまま利用するため、次にこれをアームから取り外す。この作業もアーレンで緩めるのだが、一度に全てとらずに、1本は残しておこう。これは、シューの取り付け位置と角度調整用の皿形状のコマと長さの異なる2種類の輪金具で構成されているのだが、アームに取り付けられて調整されていた状態を再現する必要があるためだ。

 位置調整の基本は、これらのパーツの組み合わせ位置によるので、1本分を残しておけば、既存での接地状態(調整済みの状況)が確認できる。

交換パーツ付属のシュー

アームに付属していたシュー。
新品なのだが、これは外して使わない。

従来のハウジングタイプのシューを利用するためだ。



貧乏性なので、何かに利用できないものか・・・
などと考えてしまう。
取り付け完了
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 新しいアームを購入したらシューも付いてくるが、たぶん当初のメンテナンス作業時に単品で購入して付け替えたシューの方が機能性は高いだろうから、取り外したシューをまた利用することになると思う。ハウジングのものを利用している場合には、この作業と同時にシューのゴムパッドを交換するといいのではないだろうか。

 交換しない場合は、シュー・パッドの状態をよく観察し、金属バリ等の食い込みをチェックしよう。

 なお、シューあるいはハウジングには、回転に対する方向性があるので注意する。これを間違うと、ハウジングからシューがずれる可能性がある。

ブレーキ基部 シューの方向性

回転方向を示す矢印と、左右の区別がある。

<調整作業1 (基本の取り付け位置)>

 ますは手でアームを挟んで、リムに対してシューが直角(平坦に)に当る角度にシュー金具とアームを固定する。

 これが、斜めになっているとブレーキが性能を出さないので、必ず固定角度と位置を調整する。後でトーインを見るので、仮締めにして完全にはナットを締めこまないようにしておこう。

 位置の目安は、シュー上面端が、リムサイドから1mmほど下がった位置に来るようにすること。Vブレーキ用のシューは長いので、リムのR(外周曲線)に良くあわせ、タイヤ面との接触が無いよう注意する必要がある。タイヤのサイド・ウォールは比較的弱い部分なので、ここにシューが接触しているとサイド・カットやバーストを招く危険があるからだ。
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<調整作業2 (トーイン)>

 続いてトーインを調整するが、これはシューの『鳴き』を抑えるためだ。

 シューの固定ボルト部を支点として前側・後ろ側と呼ぶとすれば、その前側を後ろ側よりもほんの気持ち狭くするのである。

 そのための角度調整用のガイド・ツールとして0.3mmほどの紙厚(名刺ほどの厚紙を2度折りが適当だろう)を両方のシューの進行方向後ろ側部分に挟んで、アームを手でリムに押し、固定位置を調整する。

 この作業・調整の局面で、今まで仮止め状態だったシューを完全にアームに固定する。このため、行った調整位置を崩さないように注意して、アーレンでしっかりとナットを締めこもう。

愛用の5mmアーレン 携帯用具のほかに、
写真の5mmアーレンを用意しよう。

長い柄の部分先端の加工が味噌。
ここを微妙に当てて回せば、狭い場所での締め込みや緩め作業が格段に楽になる。


5mmは調整や締め込み作業で多用する。

だから、折りたたみ式のツールとは別に
携帯ツールとしてサドルバックに常備している。

使い慣れると手放せない。
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<調整作業3 (遊びや引きしろ、左右の均等性)>

 リムに押し付けたアームを手放すと、基部に仕込まれたばねで反発するが、それが調整前のアーム位置だ。

 リム面から2mmほどの離れた場所にシューの接触面が来るように、左右の均等性に注意して、これを調整する。もしそれよりも広いようだとブレーキ・レバーを握ってもレスポンスが悪く、結果としてブレーキの効きが悪い状態になる。その場合には、ブレーキ・ワイヤーの留める位置を変えてやる必要がある。この調整に関しては、ワイヤーを通して結線を済ませ、タイヤを設置して通常と同じ稼動状態にセットして行う必要があるのは、いうまでも無い。

 まず、ブレーキ・ワイヤーの固定によって左右アームの遊び幅の位置を決める。合計で4mmの空間が必要だ。その後、左右を均等化する。これは、アーム下部に付いた小さなネジで調整する。締めたり緩めたりを左右で行ってみると、アームが左右方向に微妙にずれるので、それで様子を見ながら徐々に行うのだ。

 もっとも、片側だけネジで回しても両方が移動するから、それでも調整できる。ネジは外れると一大事、片効きという状態になるので、緩めすぎないようにしよう。

ワイヤー・カッター 今回の交換作業では、アウター・ワイヤもカットする必要があった。

ワイヤーは、インナーもアウター(外側の保護皮膜のついたチューブ)も切るには、ペンチやニッパでは無理。
頑張ればニッパでもカッターの代用が出来なくは無いが、ひどく難しい。



私は、ワイヤー・カッターを使っている。
探せば安くても充分な性能のカッターがある。
写真は1500円程の低価格のものだ。
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