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2009.12.12
メンテナンス・交換 ブレーキ

カメラ;
 RICOH CAPLIO GX−100 24−72mm F2.4


三脚
 カメラの手振れ補正による

 (画像添付時に約30%程度に圧縮)



 GTR シリーズ4(2009.11.15 「いざ、ロードへ(自転車に乗ってU)」)  には 前後輪ともにデュアルピボット制御式のアルミ製キャリパー・ブレーキが装着されている。

 今回の作業は、このブレーキを交換する。

GTRシリーズ4

2010シーズンモデル GTRシリーズ4 LTD  RITEWAY カタログ・ページより転載 (2009.11 メーカー許諾済み)

 ブレーキ・レバーは、STIシステム(Shimano Total Integrate System)のマルチ・レバーが付いていて、ブレーキ操作だけでなく、シフトチェンジの操作も同じレバーで行う仕組みになっている。レバーの反応は悪くはないので、このレバーを交換するつもりはない。ブレーキだけでなくシフターも兼ねたこのタイプのレバーは、実に精密な制御機構を持っている。このため、値段となると高額な部類のパーツになる。自転車の総体価格に占めるコンポーネント・パーツ類の割合は大きなものだが、その中でもかなりのウエイトを占める部位といえよう。価格表を見ると、私などの感覚からしてみれば目が点になってしまう性質の代物だ。

 交換となると大変なコスト及び労力が必要になるので、今回、交換するといっているのはレバー周りではない。今回の試みは「シュー」や「キャリパー」などの、ブレーキ本体に対しての話になる。


 「GTR シリーズ4」を購入して最初にコストを掛けて組み替える部品はなんだろうと考えると、リム(組み立て済みホイール)一式か、このプレーキ・キャリパーか、といった所だろう。リム一式の交換は走行性能に響いてくる。回転系の部品なので、交換すれば確かに「走りの質」は変わり、快適性は増すだろう。

 しかし、私自身はレースを目標にする訳ではないから、そこを睨んでの交換は緊急性も必要性も共に薄いといえる。だが、ブレーキは制動性能を大きく左右し、安全な走行に直決しているパーツであり疎かには出来まい。

 グレードアップを図りたいという気持ちはともかく、掛けるコストの優先順位はこのパーツが最も高いものだろう。
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<デュアル・ピボット・キャリパー ブレーキ>

 さて、「GTRシリーズ4」のオリジナル・キャリパーはアルミ製のロード用デュアル・ピボット機構を備えたものが付いている。

 そしてSHIMANOと同じ機構での、タイヤの脱着を助けるための「開放レバー」がキャリパー・アームのサイド部分に組み込まれている。アーム動作の機構はSHIMANOが開発して他メーカーも採用している最新の方式(デュアル・ピボット式キャリパー)なので、はじめに着けられたパーツに関しては何の問題も無い。シングル・ピポッドのものと違って、左右のアームが別体の軸によってテコの要領で動作する。そのため、パーツ重量は若干重くなる。しかし重量増加というコストを費やしてももたらされる効果を選んで選定されているのは、支点が2箇所ある仕組みで効率よく相互に動作するという事によるからだ。


 ただし、RITE WAY(日本内での販社)のネット上のGTR−4についての仕様紹介ではキャリパーのブランド名が明記されていなくて、いわゆる「無印」ものだ。だから、このキャリパーの製造メーカーは不明で、出自(詳しい仕様)は判らない。

オリジナルのブレーキ アルミ製のデュアルピボット式、
キャリパーブレーキが付いている。

 当たり前の話だが、走った状態で制動性能などに不安を感じるようであれば、まずはブレーキ・シューのリムへの接地面や引き代などを調整し直した方がよかろう。そして調整の次は「交換」作業となるかも知れない。

 それは、ブレーキ・シュー部分を交換、次にキャリパー全体を交換、さらにワイヤーを交換、という手順になろうか。

 新規に購入するブレーキ本体(キャリパー)にはグレードに応じたシューが付いてくるので、その順序でパーツを交換していくと最初に買った交換部品のシューと重複する。ゴム製のものだから、交換した本体の付属物を利用する間に最初に単体で購入して交換・保存したシュー自体は劣化してしまうかもしれない。そもそも、ブレーキ・シューというパーツは消耗品だ。しかしシュー単品からさらにブレーキ本体を購入しても心配は無用で、本体付属のシューが消耗する期間は保存していた物が劣化してしまうほどの長期とはなるまい。

 保存しておいたシュー自体は次の交換用として利用出来るだろうから、その事を考えれば上に書いた順序で手当てしても問題はないだろう。
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<ブレーキシューを交換する>

 最初、ブレーキを操作した際には「鳴き」があった。前後輪ともに音が出たのだ。

 これはもう、「調整」の問題なので、リムへの当たり角を含めて、再度、シュー部分の設定を行った。

 この操作で、前輪の鳴きは納まったが、後輪を強く制動させると、かすかに鳴く状態が残った。後輪のキャリパーのセンター調整と、シートステーへの取り付けボルトの増し締め、それからシュー面の清掃とシュー装着ボルトの増し締めを行った。

 シューを取り外してリムへの当り面を見てみると、リムの破片のような金属のバリ状のものがゴムに食い込んでいた。乗りはじめでリムを路肩に当ててしまった後遺症らしい。これらの食い込んだ異物を取り除いて、ゴムの表面をヤスリで削って改めて綺麗な面を出したわけだ。

 こうした一連の調整で、一応、「鳴き」は収まったが、そもそも「初期当り」がついていなかったためとも考えられる。そう思う理由は、納車直後から次第に音が減っていったためだ。丁度、微調整を繰り返してもいたので、ゴムが仕組みに馴染んだためか、それとも私の処置変更(調整)のためか、どちらの理由でしつこかった「鳴き」が収まったのかは、実は判然としない。

 オーディオで言えば「エージング」の工程、車で言えば「慣らし運転」の期間だったのだろう。回転系の部品や機構では、当初から設計上の性能は発揮されないで、いくらかの動作期間(慣らし)を必要とする。機構自体に「馴染み」が出ないと本来の性能が発揮されないらしい。物自体は回転動作はしないが、シューが接触して働く相手となるリム(タイヤ)は完全な回転体だ。そういう意味では、まさに「ブレーキ」も馴染み出しが必要となる部品の類であると言ってもよいだろう。

オリジナルのブレーキ シューを外した状態
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 「鳴き」は50kmほど走ると収まったが、その後100kmほどを乗ってから、思うところあってやはりブレーキ・シューを交換する事にした。

 ブレーキそのものの制動力=「効き(利き?)」が思っていた状態と違って「いま ひとつ」弱いと思えたからだ。

 実は、「ロード・レーサー用のキャリパー・ブレーキは停止のためでは無く<減速>のためにある」などの言葉を聴く事がある。詭弁であろう。何を言おうが、ブレーキは制動のためにある機構に違いない。

 MTBやクロス車の「Vブレーキ」はすばらしい制動力で、思ったとおりに反応し、ピタッと止まってくれる。タイヤがロックして前にのめる場合があるほど、そのシューは強力にリムを圧迫するが、この信頼できる制動力のために常時安心して利用が出来るわけだ。

 コントロールのコツを覚えれば、「Vブレーキ」のシステムほど安全・確実な機構は無い、といえよう。

 そうしたマウンテンバイクやクロスバイクの利用者からすれば、言いかえれば「Vブレーキ」の恩恵に浴した者から言わせれば、ロード車の「キャリパー・ブレーキ」は所詮はこんなものかと拍子抜けがした程で、あまり効きが良いとはいえない代物だった。

105のシュー(SHIMANO)との比較

既存のブレーキ・シューは、カセット式ではなくハウジングの無い「全ゴム製」のもの。

シューを5mmのアーレン・キー(六角レンチ)で脱着して交換する。
シューをSHIMANO 105へ交換

 たぶん、それは「慣れ」の問題なのだろう。停まる為ではなく「減速するための仕組み」と割り切れば、効きの悪さにも納得がいく。

 しかし、そうすると、実際の走行で急停車しようと思った場合、つまり、「ゆったりと減速していってやがて止まる」のではなく「ピタっと思いを伝えて停まりたい」場合、これはどうすればよいのだろうか。

 予め予測・予定した停車など緩やかなものばかりではなく、突然停まるという必要性は無視できない。実際、都市での走行では歩行者が混在していたり逆走する自転車が飛び出してきたり、CR(サイクリング・ロード)並みの秩序は期待できない。車道・歩道を走る多くの自転車が右側を走っているため、急制動して危険を回避するのが日常茶飯事となる。

 公道上での走行にルールが無い(共通の認識が無い)以上、急停車という行為を避けられ無い場合が頻繁に起こるはずだ。仮に急制動がNGとなると、実は走行上非常に危険な要素を含んで来るのではあるまいか。

 そうした理由から、やはり効力の薄い既存の「ブレーキ・シュー」を交換する事にしたわけだ。
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<シュー交換の手順と効果>

 シュー交換ではキャリパー・アームへの接合部分のナットを5mmのアーレン・キー(六角レンチ)を利用して脱着する。

 私が交換したのは、SHIMANOのロード用コンポーネントの「105シリーズ」用のものだ。

 SHIMANOのパーツにはグレードがあって、2200・2300 > SORA > TIAGRA > 105 > URTEGRA(アルテグラ) そして最上級プロ仕様の DURA・ACE(デュラ・エース) と細かく階層が設定されている。まあ、一番最後のシリーズは、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなど世界的なプロ・ツアーレースの世界をサポートする、世界最高峰の技術を凝縮した最高の性能と品質が保障されたプロ・パーツだ。だから、これは別格。「いつかは、クラウン(すこし、古くてゴメンナサイ・・・)」の世界は、深い憧れだけでよい。

 さて、実買価格帯(私の財布で買える範囲、または買おうと考える対象範囲)にある「105」のブレーキ・シューだが、本体はアルミ製のハウジングに包まれている。中身のゴムを劣化から守る仕組みと、シュー全体の剛性を保つ働きがあるのだと思う。金属面としての圧力をゴム全面へ均等に伝えるため、制動力が増すことになるはずだ。さらに、運用コストでの利点が生まれる。ゴムが劣化すればソケットして交換が出来る「カートリッジ式」の優れたものだ。消耗品のゴムだけであれば、高品位のものであっても価格はそれほど高くはない。「105」シリーズ以下のグレードではシューを覆う金蔵製のハウジングが無く、シュー全体がゴム製の一体式のものになる。ハウジング式ではない場合、ゴムと同時にアーチに固定するための金属軸や、角度調整のワッシャ、締め付けナットなどの一式が交換となる。それら耐用部品は捨て去ってしまうので運用効率は悪いといえよう。

 ハウジング式のものは、写真の様にアームへの取り付け面が「球状」になっている。これは取り付けの状態を微調整するための仕組みだ。「トー・イン」といって、回転の先側を末端側より狭く設定することが出来る。

 トーインは0.5mmから最大で1mm後ろ側より前側を狭く、リム面に対して平行ではなく斜めに取り付ける。こうすると、ブレーキングの際に最初に先頭部分がリムへ接触し、その後、加えられた圧力で全面が密着する。制動力の面での効率がいい接地方法であり、リムとの間での余分な振動が抑えられるので「鳴き」が発生しない。ゴムを面で押さえ込むハウジングの金属カバーがキャリパー・アーム部にしっかりと接合されるために微調整が可能となり、こうした効果が成り立つ訳だ。


 ブレーキ・シューの交換は実に効率が良かった。シューを換えただけなのにまるで別の「効き具合」が現れて、満足この上ない状態を得ることが出来た。

 人間、欲張ればキリが無いが、シューだけでブレーキングの質が一変するのだとすれば、キャリパーまでを交換したら、いったいどうなるのだろう。そう考えるのも無理は無いだろう。前輪のシュー交換は、それほどの効果があった処置なのだ。

フォークへの接合ボルト(裏面) フォークの基部、後ろ側に固定ボルトがある。

5mmのアーレンキーで、このボルトをまわすと、キャリパー全体が車体から取り外せる。

当然のことだが、ブレーキは重要保安部品だ。
そのため、この5mmのボルトは、すごいトルクで締めこまれている。

最初は回らない程で、肝を冷やす。


キャリパー交換後は同じトルクを掛けておく必要がある。キャリパーが脱落したら、命に関わる大事故になるからだ。
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<ブレーキキャリパーを交換する>

 ブレーキ・シューと同様に、キャリパーにも性能・品質にグレードがある。

 先に紹介したSHIMANOのコンポーネントでいえば、やはり「105」シリーズから内容が一変する。それまでは、ただの鍛造アルミ製だったものが、「冷間鍛造」による製造となり、アームその他の剛性がまるで下位グレードの製品とは異なる状態になってくる。

 SORAシリーズから比較すると、2倍近く価格は高くなるが、TIAGRAシリーズの購入までを考えているなら、そのひとつ上の105シリーズのものを選択したほうが良かろう。キャリパー本体の製法も違うし、使っている回転部品もベアリングが組み込まれて滑らかになっていたりする。そして何より、先に書いたように「105」を境としてシューの構造がまったく違う。

 ハウジングを持ったカートリッジ形式のシューを単独で買い換えると、これが2000円(左右のワンペア)近くする。侮れない代物なので出費は仕方が無いと思えるが、そのパーツ価格、支払うべき金額を目の当たりにするとちょっと引いてしまうだろう。

 最初から「105」シリーズのキャリパーにしておけば、そのハウジング式のシューが付属してくる。だから、シューを新たに購入する必要がない。また、カートリッジ式のゴムだけであれば、上位のURTEGRAシリーズ用のものでもさほど値の張るものではなく、あとで高位のグレード品へ交換したくなっても、充分に手が届く。

 だから、105のブレーキ・キャリパーのコストパフォーマンスは抜群のもの、といえよう。勿論、その性能は不明・未知の事ではなく先のシュー交換で発揮されたので、すでに確認済みの項目だ。

フロントのキャリパーを「SHIMANO 105」に交換 アーム部分の長さは、両者でほぼ同じ。

ただし、センターからシューまでのアーム長ではなく、横への広がりは「105」の方が大分狭い。


105のキャリパーは全体に一回り、
コンパクトになる。

 写真右は、既存部品で、車体付属のメーカー・オリジナルの無印キャリパー。

 別に品質が悪いわけでも、なんでもない。アームなどの剛性に関しても問題があるわけではない。キャリパーに関しては不満があった訳ではなく、充分満足できる部品といえる。

 先にも書いたように「シューの交換」作業というひと手間で、その効力は一変するのだから・・・。

 ただ、シューの交換でブレーキの効率が激変したので、キャリパーまでを換えたら一体どうなってしまうのか、と思ったのだった。
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お蔵入りとなるオリジナル部品

お蔵入り、となるオリジナルのフロント・キャリパー。

150kmほどしか利用していないので、ほぼ新品状態といえよう。



右は置換後のフロント・ブレーキの様子だ。

最初の掲載写真のオリジナルと比較すると、大分、コンパクトな姿となったと思う。
交換したフロントブレーキ(SHIMANO 105)

 キャリパーを交換したので試走したいのだが、12月に入ってから、しつこい風邪をひいてしまった。

 何日か会社を休んでも効果がなく、この週末も咳が止まない。午前中に交換をしたが、結局、日曜日は一日寝込んでいる形となって、ブレーキの効果を確認できないでいる。

 そんな訳で、キャリパー交換の感触は未知のままだ。来週予定の、ワンゲルのポタリング「東京の下町を味わう」(2009.12.19 「江戸の情緒を味わう」)での確認という事になろうか。

 来週末の企画では、荒川を西浦和から千住まで走り、そこから「三ノ輪(みのわ)」、「浅草」、「谷中(やなか)」と走る予定だ。前半以外は低速での市街地走行(隅田川沿いになろうか)だし、谷中では下車して歩いていよう。

 だから、交換した後の新しいブレーキの味は、よく判らないかもしれない。
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交換したリアキャリパー

置換後のリア・ブレーキの様子
交換したリアブレーキ(SHIMANO 105)

2009 12.30 追記

 交換したフロント・キャリパーは実にレスポンスがいい。先日のポタリング「江戸の情緒を楽しむ」では、都合80kmを走行し、前半は高速走行もしたし、坂道もあった。そこでのブレーキの感触は、従来とはまるで別世界のもので、交換して良かったとこころから思った。フロントはキャリパーごと、リアはシュー(カートリッジ)のみの交換だ。

 リア・キャリパーはもとのままだったが、シュー交換の効果は抜群だ。出現した別世界に、笑みがこぼれてしまうほどの激変ぶりで、我ながら驚いている。リアは、フロントほど制動を必要とはしないので、この状態でも充分だ。先にも書いたが、シュー購入のコストを考えてキャリパーを一体で購入していた。いや、実は買った店の表示が間違っていてショー・ケースに展示されていたのは、プレートは「フロント」と書かれていたが、実態はリア用のキャリパーだったのだ。

 80kmのポタリング行の一週間ほど後に、荒川CRを上流に向かって国営武蔵丘陵森林公園のすぐ手前の「吉見(よしみ)」迄走り、その後、日を改めて下流の「小菅(こすげ)」までを走った。走行距離はそれぞれ65km、50kmほどでどちらも休憩を入れて3時間少しのツーリングだった。そこでのフロント・ブレーキの具合は、クイックなレスポンスも良いし、グリップからくる反応やカチッとした剛性が感じられもして、抜群のフィーリングを持っていることが感じられた。

 だから、新年を前にして、購入してあったリアのキャリパーも付替えてしまった。シュー交換でブレーキの効き味は一変したが、キャリパーまで変えると、レスポンスというか、ブレーキ・レバーの戻りが変わる。要はフィーリングが良くなるのだった。また、ぐっと握りこんだときの効き様が、ジワットとしたものからギュっとしたものに変わった。うまく表現できないが、硬質の締め込みに変わったようなのだ。キャリバー交換での効果は言葉で表すと大きな変化なのだが、リア側は実際にはフィーリングの問題かも知れない。投資するコストを考えれば、フロントはキャリパーごと、リアはシューだけの交換で良いかもしれない。

 しかし、両方を換えると、一段、自分が乗っている自転車の格があがったようなイイ感じが味わえる。
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<自転車は車両。だから道路の左側を走る、ということ>     2010 8.21 追記

 余談だが、「自転車が右側走行している以上、出合頭での衝突事故は無くならない」といったのは、自転車ツーキニストを自称する「疋田 智(ひきた さとし)」さんだ。本職はNEWS23なども手掛けたTVプロデューサで、自転車に関する著述が数多くある。

 たとえば、街中や住宅街など「交差点での出合頭」を想定すると、自転車が右側走行している場合の交差路では、走り来る車の直近左交差路の死角から忽然と自転車が現れる結果になる。お互いに距離が無く、しかも通行路上に塀や植栽や看板などといった遮蔽物が多い状況においては相手の存在を認識できない。気がついた直後には相手がもう間近に迫っているため、衝突は避けられない。自転車が左側を走行していれば、走行してきた車からは交差点へ進入する少し前の位置にある自転車の走行が認識できる。死角から突然出現はしないし、両者は余裕ある位置でお互いを視認できるので、回避行動が採れるのだ。

 氏はだから、自転車は左側走行を徹底すべき、と主張している。

 まったく、その通りだ。「右側走行は事故が起こるメカニズム」なのだ。私も同じように右側を走る自転車が気になっていたので、この主張が徹底されれば事故が激減する、と思った。ひとつ付け加えると、左側走行する限り車道の車をあまり気にする必要は無い、ということ。かなり手前から自転車は視認されているからだ。同方向へ走る車の動きで注意しなければいけないことは、左ウインカーが点灯された場合くらいに絞られる。むしろ、左側から通りへ出る道、特にそれがT字路や細い道の場合。それらが前方にある場合には十分な注意を払わなければならない。自動車、自転車、歩行者が飛び出す可能性がある。そうした交差路の左側が死角の場合は、いつでも停まれる心積もりが必要だ。


 走行の方向性に加えて当たり前のポイントをもう一点。自転車は歩道を走ってはいけない。小道ほどの広さを持つ歩道であればそのもっとも車道寄りを走れるだろうが、低速な学童の自転車などは別として原則はすべての自転車が車道を走行すべきだろう。歩道は危険回避で一時的に逃げ込む場合だけ走行が許される、と考えるべきなのだ。しかもその際には、強者である自転車は充分な低速走行を心がける必要がある。

 蔓延する走行方向の問題は、自転車が歩行者側にあるという大きな思い違いが元にある。「自転車は車両である」という認識が必要なのに、それが無いため、様々な問題が発生する状況にある。無灯火での夜間走行であったり、イヤホンを差しての走行、携帯電話でしかもメールを打ちながら、などなど・・・。それで衝突しないわけが無かろう。自転車は車両なのだ。歩く人が他者を交通事故で殺してしまうことはまず有り得ないが、自転車では有り得るし、実際に近年、加害者としての死亡事故は増加している。

 走行音が発生しないという大きな特色を持っている唯一の交通手段、それが自転車だ。 ― 最近は電気自動車やハイブリットカーが現れて、その無音性に驚いている。実際には音が出ているのだろうが、騒音の多い道路上ではそれらの車種はあまりに静音なために存在が認識できない時がある。

 自転車は「無音」というその特性から、歩行者とは対面する左側走行に徹すべきなのだ。 さらに事故を減少させるには学童以外の歩道走行を止める必要がある。我が物顔で歩道を、しかも道路右側を平然と走る買い物自転車などが最悪の部類で、さらに歩行者へベルを鳴らすオヤジやオバサンなどもいて最低極まりない。一大キャンペーンをはって左側の車道走行を広く認知させ無ければならない。ロード愛用者では滅多に見かけないが、クロス・バイクやマウンテンといった他のスポーツ車ではまだまだ右側走行を見かける。団塊世代のオジサンやオバサンは別の世界観で生きているので仕方が無いとしても、最近スポーツ自転車の愛用者となった層をきちんと啓蒙して、自転車が車両であることを再認識させるべきだろう。
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