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2013.02.24
自転車大国 ベルギーを思う (Ridley TEMPO :「リドレー テンポ」フレーム) ;07.28/ 08.25 追記

カメラ;
 RICOH CAPLIO GX-100 24-72mm F2.5

 (画像添付時に約30%程度に圧縮)


 さて、今回はフレームのお話。

 カーボン・フレームの車体はFELTのレース向けモデル、「F5」を購入して、それに乗っていた。

 何故かは判らないが、その自転車で出掛けると季節に無関係に、必ず雨に降り込められた。出発する時には気持ちよく晴れていても、帰りまでの間には必ず雨になった。

 「よし、今日は大丈夫」と思っていても、その自転車で出掛けた場合には、まず間違いなく、いつも必ず雨に打たれる羽目に陥るのだった。

 ツーリングやポタリングの際などでは、初めから雨模様では出掛けること自体を躊躇ってしまうものだ。自転車に乗る身としては、まず第一に雨空がイヤな事には違いない(ちなみに第二番目は「強い向かい風」だろう)が、しかし途中からの降雨であれば、まだしも我慢が出来る。

 だから行動する日が雨模様となる天気予報であっても、降り始めの時間が帰り頃に想定されるのなら、降られても構わないからと思いつつ出掛けていた。

 しかし、そうした雨降りでの乗車が競技中でも、という事になると、どうだろう。これには、さすがに考えてしまった。

オリジナルのカーボンフレーム 山岳登攀(「赤城ヒルクライム」)に備えて、
組み上げてあった自転車に、さらに手を入れてブラッシュアップしたのだった。


<自分の体>も含めて大いに「軽量化」に挑んだが、その成果は残念ながらいまひとつ、といったところだった。
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広大な裾野を引く赤城山 「桃の木川CR」からの景色。


駒形(前橋の南端)あたりから見た秀麗な赤城山の様子。

 例えば出場するヒルクライム・レース中に雨が降ってきたとなれば、登り坂で雨に打たれて頑張るのも厳しいものがあるだろうし、ましてや雨の中での下山となれば、只でさえ斜面恐怖症の私にとっては、それはもはや恐怖を越えた走行となろう。

 という訳で2012年の初頭、出場目標としていた「赤城山ヒルクライム」に向けてのことを考えると、私の頭の中はその心配でいっぱいになってしまったのだった。

 何故かと言えば、そのいわく付きのカーボン自転車に加えて、赤城山ヒルクライム大会が執り行われる「レース日」自体が台風シーズンの只中でもあるし、頻繁に降り込められる秋雨の可能性も高い時期での開催だったからだ。

 雨を呼び込む自転車のジンクスだけでなく、季節の状況もまさに、雨が降っても少しも不思議ではない。むしろ、雨が降って当然と言える気象条件が開催日前後に、お誂え向きにも揃っていたのだった。
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C-2900フレームで組む ヒルクライム仕様の愛車


フレームの状態から初めて、
軽量パーツを選び組み上げたもの。

 当然ながら懸念や心配は尽きるところが無かった。

 購入した念願のカーボン・フレームの<FELTの”F5”>ではあるが、レースに出場すれば必ず雨が降る。

 その事は間違いが無く、だからレース中に雨に打たれるのは、私にとってはあらかじめ定められた運命なのだろう。努力を払っても、例えば人知れず深夜の神社の境内で「お百度」を踏んでも、そのことを私は避けられない。

 だから<F5>と同じようなカーボン・フレームの車体を持った、晴れを招く軽量な自転車が私には必要だった。そして、そうした憂鬱に明け暮れていた日に届いたのが、TAKIZAWAからの嬉しい通信、半期に一度のセールを告げるDMだったのだ。

 「タキザワ」は、故郷の前橋にある老舗で、手広くネット上でも営業をしている自転車屋さんだ。

 まあ、都内にある有名処のスポーツ・サイクルのチェーン店であればセールなどは常時開催されるし、むしろ普通のことだろうが、地方にあって、ああした規模で営業を続けるのはかなり苦しいに違いない。

 TAKIZAWAのセールは梅雨入りの時期と年末年始に行われている。例年の恒例行事といえよう。普段から値引き販売されている商品が、その時期になると値引き売価からさらに一割引きにされて提供されるのだった。

 だから、購入コストを押さえ込まなければいけない私にとっては、店から送られて来るDMは隅までチェックしなければならない、季節の必須アイテムなのだった。

 店のオリジナル企画商品の「HARPブランド」の製品(フレーム、ハンドル、ステム、シート・ポストなど)は勿論値引き幅が大きいので外せないし、他にも協賛メーカーから提供される目玉商品が、送られてきたDMには沢山載っている。

 セール品を満載したセール案内には、普段値引きされる事の無いカンパニョーロのレース・ジャージやサイクル・パンツなどのウェア類や、2011年のツール・ド・フランスのレースでカデル・エバンス(BMCレーシング所属)が履いて総合優勝したディアドラのロード向けのレーシング・シューズなどといった、触手の湧く消耗品の数々が処狭しとひしめいていた・・・。

 ディアドラのスポーツ・シューズなどというと、私世代の人間には80年代初頭のテニス界で大活躍していたビヨン・ボルグ選手などが思い出される。彼のパワープレイに憧れて、同社のシューズを探したものだ。
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ゴール直前

2012年の9月30日に開催された「赤城ヒルクライム」の様子。

山頂のゴール直前の様子を写したヒトコマ。
体力も精神力も、もう限界、といったところ。
参加の証
赤城山ヒルクライムレース
 9月開催 (今年は28日予定)

公式ホームページはここから

 もちろん何時ものように、送られて来たDMに入っていたカタログ・リーフレットを隅まで確認したのは言うまでも無い。

 遥かな前橋からのメッセージ。自転車店「タキザワ」からのDMは、魔法を呼ぶ入り口であった。

 しかしその時の案内は特に凄いものだった。私の眼は、もう、そこに記されていたフレームに完全に吸い寄せられてしまったのだ。

 何故かと言えば、その艶のある深い蒼い色で仕上げられた綺麗なフレームは、私が兼ねてから気になっていたものだったからだ。そのメールが来る半年前の「年末・正月のセール」の際にも、値下げされたそのフレームを観て大分気持が動いたものだった。

 そのように、しばらくの間、セールのパンフレットを見詰めて想像を巡らし、狙っていた物件なのだった。しかもその狙いのフレームが、目を着けた時点よりもさらに価格が下げられていた。それも、驚くほどに・・・。

 だから私は、そのパンフレットに掲載されたSHOPオリジナルのカーボン・フレーム(「C-2900 フレーム・セット」という製品名)から視線を外す事が、すっかり出来なくなってしまった。

 それはまさに、雨を避けたいと願う私と雨が降らない可能性を秘めたフレームとの、鮮烈な「出会い」といっても良かろう。雨の事を思い、軽いフレームの事を想うと、程なく私の決心は確かなものに固まった。
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ヒルクライム仕様

榛名山ヒルクライムレースは 5月の開催。

公式ホームページはここから
ヒルクライム・レースをターゲットとして組んだ自転車では、赤城の次に今年から開催された「榛名山ヒルクライム」にも出場した。

榛名の大会は、2013年が初回。
これから長い大会の歴史が始まると言えよう。


これには実に多くの参加者が集まった。
全コースで4472名で実走者は3893名だ。

榛名湖コース16.1Kmのレースだけを取ると、その参加は2735名だった。

 そして結局、その優美なフレームを購入して組み立てたのが、赤城ヒルクライム・レース出場の相棒となった車体だった。

 それはまた、私にとってロード車を「手組み」で仕上げる初めての経験だった。

 フレームはTAKIZAWAオリジナル・ブランドの「HARP」のシリーズ中の最高グレードに位置するカーボン・モデルなのだが、これはPB製品(プライベート・ブランド品)であり、もちろん販売店であるタキザワさんが製造しているという事ではない。広く関東圏を商圏とはするものの、大手SHOPのようにチェーン展開もしていない地方の販売店がそこまでの設備を備える事など勿論出来ない相談で、実際に製造して供給しているのは台湾の有名フレーム・メーカの<TRIGON(トライゴン)>社、フレームの原本はそうしたものだった。

 トライゴン社では自社ブランドの製品として、(グラフィックが全く別になるが)同じモノを販売していた。その会社は他にも多くのカーボン・フレームを製造していて、カーボンの成形技術に長けた会社といえるだろう。何といっても今のご時勢、カーボン・フレームは台湾製が世界最高の品質を誇る精度であり、世界規模での供給源となっている。同社は自転車ブランドの大手(例えば「ルイ・ガノ」など)へフレームを供給してもいるが、そうした大手メーカに並んでOEM製品として相手先のブランドを冠した上で、自転車販売店に過ぎない我らがタキザワへも、そのフレームを供給をしていたのだ。

 そうしたPB製品なので他社ブランドの同一フレームや他社製の同クラスのフレームよりも安価に供給できる、という大きな魅力が「C-2900」フレームにはあった。ちなみに、同一のフレームのオリジナル・デザインは多色塗装でかなり手の込んだ仕上げだが、HARPブランドのフレームは単色にロゴのみという、質素な仕上げがされているものだった。


 そうして手に入れた、実に軽量なフレームを素材にして自転車を組み上げていくことは、思いのほか愉しい作業だった。

 そのフレーム・セット(フレームとフォークの両方を合わせた重量)は僅かに1.3キロにしか過ぎず、当然ながらその軽量さを活かすような軽量のパーツを選択して組み上げていく必要があった。

 そうする事で驚くほど軽量な車体を構成できる優れたフレームだったし、完成を思い描いてパーツをあれこれと検討する事や、そうして選んだパーツを組み上げていく作業など、その過程は私にとっては新鮮で素敵な経験だった。時の経過を忘れさせてくれて、私はパーツの選択や車体の組み上げの作業に熱中した。

 そのフレームを購入して以来、およそ3ヶ月の長きに渡って、一心に完成までの過程を楽しめた、といえようか。
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ヒルクライムの様子 榛名山ヒルクライムレースの様子。


写真の版権はPhotocreateにある。

写真の購入者(思いのほか、高額で残念..)である私は、この写真のHP上での利用を許諾されている。

 予算に制限がなければカンパニョーロの「レコード」あたりのグループ・セットにパーツの選択肢が来るのだが、そうは行かない寂しいお財布の事情もあって、欲しいグレードのパーツが無制限に選択が出来る訳ではなかった。

 だから、当然ながら安価に購入できて、しかもで軽量だ、という優秀なパーツを丹念に探して、車体として組み上げていく必要が出る。

 あれやこれやと悩む事や、完成へ向けて仕上げていく事があまりに新鮮な経験だったためか、そのようにしてフレームの状態から購入して自転車を組み立てる事が、愉しくて仕方がなくなってしまった。

 だからヒルクライ・レース参加車の自力による構成後、実家に埋もれていた古いクロス・バイクをレストア(「2012.06.23 SPALDINGをレストアする (クロス車を復活させる))したり、友人のロード車をリビルド「2012.09.23 CADEXをレストアする (レトロロード車を復活させる)」)したり、ちょっと重めのメンテナンスにも取り組んだのだった。


 ところで、自転車を自分の技術で完成形まで何とか組み上げられるという事が判ると、今までの自転車に対するスタンスとは違う視点も芽生えてきて、自転車への向き合う姿勢に変化が現れてくるから不思議なものだ。

 レース向けに仕上げられたメーカー製の完成車や、気合を入れた販売店組み上げの車体を購入するよりも、感応する閃きがあったフレームを購入し、その上で各パーツを選定してアセンブルしたほうが、何かと都合の良い部分がある事に改めて気が付いてくる。

 自分で組めばその車体に対する愛着感もひとしおのものになるし、同じ調整をするにも、改良を加えるにも、何といっても篤い親愛の感情がそこにはこもってくるだろう。メンテナンスは只でさえ楽しい作業で、完成車を購入した場合でさえ気持ちの弾むものだが、そこで施す作業では言い知れない<張りあい>が出てくるのだった。
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2013.04.14 伊勢崎

ベルギーに本拠を置く会社、Ridley(リドレー)社のパフォーマンスモデルの
「TEMPO」と言う名称の美しいフレーム。

RACEフレームのカテゴリー中では、最下位のグレードに「TEMPO RACE」と名付けられた
このフレームを用いたシックな完成車がラインナップされる。

また、パフォーマンスのカテゴリー(FITNESS)には、同じフレームを用いたストレートハンドルの小粋なモデルが掲載されている。
残念ながら、そのモデルは日本では扱われていない。


写真の自転車は
7005アルミ・フレームの車体を使って、
トレーニング用に組んだものだ。



(伊勢崎、植蓮にて)

 組み上げる前の作業としては、いやそれは「作業」と言うより「構想」と呼ぶべきものだが、この時間がまた一際愉しめる。心が浮き立つ様な気分にたっぷりと浸れる過程のひとつと言えよう。

 まず、フレームの各部分を入念に眺めて、その素性を考慮する。すると対面しているフレームを通じて、色々のシチュエーションが浮かんでくる。

 夏の日、路面からの暑い照り返しを受けながら陽炎の揺れる路面を、逃げる水を追いかけながら走る様。また、秋の高い青空の元で涼しい風に吹かれながら快く川岸の土手を走る様、などが次第に浮かんでくる。

 パーツを設定する前の無垢なフレームが、そうした完成後の在り様を確かな想像として沸き立たせて来て、その様子を鮮明に見せてくれているのだろう。様々なイメージと供に、私はさらに完成時の乗り心地をあれこれと想像する。まずは、フレームの乗り易そうな「ジオメトリー」や、7005アルミを使ったダブル・バテット仕上げといった「素材の特製」を考える。そして、フレーム部位の形状や成形具合などといった細かい要素を確認する。

 そうする事で、フレームやフォークから想起される、車体の反応がどういう具合のものなのかを思ってみるわけだ。

 例えば、細身のシート・ステー。これなら踏み込んで力を入れた際には後輪軸の跳ね返りが期待でき、独特の加速感が味わえよう、だとか・・・。あるいはまた、縦方向に太い形状で設定されたチェーン・ステーからは、ペダリングの剛性感や安定感がもたらされるはずだ。だからスプロケットは巡航の快適性を考えてギヤが繋がった12-23Tでいってみようか、などといった風に・・・。
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2013.05.08 桶川 きちんと踏まないと、
きちんとは走ってくれない。

アルミフレームは、
トレーニングには打ってつけのもの。


(桶川、
「県央めぐりんロード」にて)

 そうやって果てしなくアレコレを考えながら、徐々に「走り」のターゲットを絞り込んでいって、目的や目標に見合ったパーツを選んでいく。この作業も、構想段階から進んだ作業なので当然なのだろうが、作業全般の中では、実に変化に富んでいる過程だろう。


 利用するパーツには当然ながら規格があって、それぞれのパーツ同士の適用範囲も決まっている。だから、それらには守るべき組み合わせのイロハがある。不用意に任意の製品から選択してしまうと、解決できない問題が発生する懸念が生まれよう。なぜかというと、パーツには「互換性」という重要な制限があるからだ。

 パーツ相互の適合性にはメーカー側の推奨要件やさらにもう少し強い制約や制限があ。「xxは○○で使用してください」や「xxのためには△△から選択してください」などが推奨要件で、「xxは○△には使えません」などが制約や制限を表す言葉だが、そうしたメーカー側の指示事項を守る必要がある。しかし逆に、それさえクリア出来ていれば、どのメーカのパーツを選んでも大丈夫なのだった。

 推奨や制約の要件にきちんと注意を払えば、完了形の車体としてそれぞれの部位のパーツを、任意の状態で選択して構成することが出来るのだ。各種のパーツは、仕様として適合するならどんなグレードを跨いで選択しても良いのだし、どこのメーカーの製品を用いて組み合わせても良いのだ。

 しかし、組み合わせが自由と言っても、適合するだけで最適な解ではない場合も起こるので、そこは誤解してはならない。例えば、単品のパーツだけを企画、設計、製造、、販売しているメーカーの製品ならばいざ知らず、コンポーネントとして各構成パーツをトータルで設計して供給する大メーカーのモデルは、出来れば単一のグレードで統一したほうが好ましい。それぞれの部位の製品の特製が一致し、その組み合わせの相乗効果によって、(それぞれの部位のパーツが)最大の性能を発揮する様になるからだ。

 構成(機械的な制御機構上)の適合制限はあるが、パーツを供給するメーカーは数が多く、それを思えば、実際の選択肢としてのパーツの組み合わせは無限の広がりを持っているともいえよう。
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2013.04.08 吉岡 利根川CR;
吉岡の運動公園脇にて

<アルミ・フレームの多くのメリット>

 勿論、カーボンのフレームは加えた力に対する反応が素晴らしい。だから最早手放すことは出来ない物件だが、アルミで出来上がったフレームにも捨てがたい魅力がある。

 剛性感というか、カッチリした素性がある。堅牢性というか、そういうものに溢れているからだ。英語で言えば、SUTIFNESSという単語になろうが、まさにその語彙で言い表される感じそのもの。それは、いまさら私がここで改めて言うまでも無いことで、周知のことだろう。

 あのしっかりとした頼もしい堅さは、やはり回帰したくなるものではなかろうか。それにレースに向けてのトレーニングなどで乗るには、アルミの即応性は練習には持って来いのものだろうと思っている。

 勿論、フレームの形状的な工夫が働いて、乗り手の不充分な動作を補正したり助勢してくれたりするが、カーボンの反発性ほどではないから、その分の力加減を乗る人間の側で工夫する必要が出る。言ってみれば、嘘をつかない素性の素直さというか、アルミフレームはカーボンと違って誤魔化しが効かないとも言えようか。
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2013.04.01 前橋(六供:ろっく) 利根川CR: 前橋市六供(ろっく)町にて

 きちんとした力を伝えて踏まなければ、フレームは思うように反応してはくれない。

 だからアルミ・フレームは、カーボンに比べて反応域や応答域が狭いと言えようか。それは「狭い」というよりも「正確」な反応なのだろう。ポイントに一致しないと駄目だ、と言う事だ。感覚的なものなので表現が難しいが、面の領域(一定の範囲)に力が加えられれば良しとなるのがカーボン、一方で、ある特定の点を衝かないと駄目というのがアルミ。フレームからの応答を表してみると、そんな感じになるだろうか。

 長距離を乗っている際に経験する事で考えてみよう。80kmを過ぎる辺りからは疲れも溜まってきて、乗車ポジションが乱れがちになるし、ペダリングも滑らかな回転を続けるという感じから多少ギクシャクしたものに変わってくる。私にとっての80kmはそうした距離帯である。

 「距離」という事よりも、むしろ「運動開始からの経過時間」の問題なのかも知れない。「距離」で言えば80kmを越える前後の数キロ(それは75キロ過ぎから85キロの間くらいだろうか)、「径過時間」で言えば4時間過ぎあたりの一時に、その「魔」の状態が訪れる。

 そこを過ぎると何故か突然にペダルが軽く廻りだしたりする。突如として5キロ程も車速が上がったり、溜まり始めた疲れが不意に消えて実に爽快な状況に変化するのだ。しかし、そうなる手前のひと時を耐え忍ばないとその至福は訪れてくれない。変化を呼び起こすための作業、手前の一時を我慢し続けて運動を継続することが実はとても苦しく、いつもの事ながら本当に厳しいのものがある。
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2013.04.01 前橋(六供:ろっく) 利根川CR:
前橋市六供(ろっく)町にて

 至福の一時を迎える前に必ず訪れる厳しい時間帯がアルミ・フレームでは違っている様に思う。カーボンで走っている場合よりも、そのタイミングがもう少し早くやって来るようだし、時として、そうやって苦しい思いを感じつつ折角運動を継続しても、思ったようにはペダルが廻り始めないという事も起こる場合がある。とうとう疲れたままで終点を迎える、と言うような事が起こり得るのだ。

 どうも思うに、きちんとセオリー通りに車体に乗れていないと、そうした状況になってしまうようだ。だから、私にとっては、それがトレーニングになる。アルミ・フレームで走っていて何時もの状況になれば、ポジションを初めとした運動要素全般が順調な状態にあるという導(しるべ)になるからだ。

 いつもの訪れのタイミングより少ない距離や早い経過時間で疲れが出るようであれば、それはポジションが適正ではないのだし、ペダリングにロスがあるという事を意味しよう。

 そうした意味から、トレーニング時の目安として活用できる素材なのではないだろうか。コーチ要らずでアドバイス(反応)を返してくれるアルミ・フレームは、私のようなチームに属さない人間にとっては打ってつけのものと言えよう。
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2013.05.08 桶川 このフレームはパフォーマンス・モデル。

レース用のモデルとの相違箇所は、色々とあって、まずその素材の仕上げ。

これはダブル・バテットのアルミチューブを使っていて、
6061などに代表されるアルミ材ではなくさらに軽量・高反発の特製を持つ7005アルミ材だ。(同じ素材でもレース・グレードのものはトリプル・バテットでチューブが作られる)

そして、フレームを構成するチューブの形状とジオメトリーが大きく違った指向で誂えてある。運動性や応答性よりも、まず乗車する人間の快適性が重要な点。快適性を求めているために、耐振動性や衝撃吸収性などが大切なポイントとされ、その追求に主眼をおいて設計されている。


快適性の追求という、求める要素の違いによって、車体の反応や路面との応答性がレース・モデルとは異なってくる。
そうは言っても80kmや100kmほどの通常の走行なのであれば、レーシング向けのフレームと比較して何ら不足や違和感は無い。

このフレームでも実に快適に、そうした長めの距離を無理なくこなせる。

それに、このフレームはどちらかと言えば硬いはずなのだが、路面の振動に対しての身のこなし具合(対振動性や衝撃吸収性)が本当に良い。

悪路でも、跳ね返りが少なくて、とても楽に走れる。
振動吸収も非常に良く、その走破性は抜群だ。

 また、トレーニング時の目安となる事とは別の、幾つかのメリットもアルミ・フレームは持っている。

 輪行での移動を考えたとき、車体としてはカーボンの方が軽量なために数段の「楽」が出来る。しかし、アルミであれば気を抜いて持ち歩ける。だから、肉体的な負荷という面ではカーボンが楽なのだが、精神的にはアルミの方が輪行のお供として「ずっと楽が出来る」だろう。

 その両方を天秤にかければ、肉体ではなく精神的なメリットの方に軍配が挙がるはずだ。肉体は他力本願の要素がある。移動体である列車やバスなどの車両に乗ってしまえば、それでもう極めつけの「楽」が出来ることになるからだ。とすれば、肉体面での優位性を大事にするよりも精神衛生上のメリットを享受したほうが良いように思うが、どうだろう。

 車体は一式、輪行袋に収納してあるから傷が付くことはまず無いが、打撃や圧迫などの衝撃はその限りではない。袋があってもダメージを防げず、被害を受ける可能性が高い。

 この場合にカーボンで出掛けている状況だとちょっとしたものでも「ヒヤり」としてしまうが、袋の中身がアルミ製の頑強なフレームだと、随分と外圧に無頓着でいられる。

 余程ひどいダメージをうけた場合にはさすがにアルミ材でもその影響は大きく受けることになるが、バスなどの収納で拠所なく積み重ねをされる場合や、ガツンと倒された場合などでも、被害を蒙ることが少ないのがアルミのメリットだろう。


 さらには、カーボン・フレームから比較すれば「格段に安価」であると言うこと。忘れてならないこのメリットは、今まで考えて来たメリットの中でもかなり大きいものだろう。勿論、入門用やレクレーション用のフレームではないものはそういう訳にはいかないが。

 つまり、ここで挙げたふたつの大きなメリット、「ずっと楽が出来る」ということと「格段に安価」だということ。レース出場などの研ぎ澄まされた状況ではなくて、あくまでも普段使いの場面での優位性は大きいといえよう。

 輪行やサイクリング、ツーリングなどのレクレーション利用時の使い廻しの良さや取り回しの安易さという要素、これはカーボン・フレームへのアドバンテージとしては強烈であろう。
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ヘッド・チューブ ヘッド・チューブ部分(前三角)

購入したこのフレームのサイズは<S>。

ベルギー人はオランダ人程ではないにしろ、どちらかと言えば大柄だとは思ってはいたが、まさかこれ程とは思わなかった。
調度良いと思われた<S>サイズであるのに、予想を上回る。
かなり大きなフレームだった。

Webショップのサイト上で掲載されていた「ジオメトリー」はレディース向けの特別構成のフレームのもので、このフレームとは違うものだった。

そのために、フレーム要素の詳細が判らなかった。

スローピングしたトップ・チューブ長が530mmで、ホリゾンタル換算値は何と545mm!にも達するというもの。
それを知って絶句してしまったが・・・。多分、フレームが想定する適正な身長は175mm以上を見込んでいるのだろう。

 いくらカーボンと比べて安価になるアルミ・フレームとはいえ、ミドル・クラスやレース向けの上級仕様の設計が盛り込まれたフレームなどでは、やはりそれなりの価格になってくる。

 ここ数年の嬉しい円高の影響と、開発技術の蓄積や素材や加工の工夫などによって、従来の価格とはおよそ比較にならない程に大分価格が下がって充分にこなれた感のあるカーボン・フレームの存在があるから、一概に「アルミだから安い」とは言えない状況になってきた。


 ツールに出場するようなグレードのカーボン・フレームの多くはとても手の出せる価格設定ではないが、そうした中にあっても、安価な設定をされた嬉しいモデルも存在する事はたしかだ。だから当然、そうしたモデルは入荷と供に完売してしまう。こちらとしては、本当に流通しているのか、と疑うばかりだ。そうした大人気を博している戦略モデルに関しては、発売の告知と同時に手を打つしかない。どうしても入手したい場合には、最早、店頭に並ぶ前に狙いを定めて予約しておくしか方法が無いらしい。

 その安価になったカーボン製フレームと比較しても、馬鹿に出来ない程に高価なアルミ・フレームが流通しているのも確かだ。しかし、それでも20万円を越えるような設定で販売されるアルミ・フレームは圧倒的に少ないはずだ。見回した平均的な感想は、高いものでもせいぜいが実売で15万円前後、というところだろうか。

 モデルによっては、馬鹿に出来ない価格という思わぬ落とし穴もあるのだが、実はもう少し深刻な状況が、アルミ・フレームにはあった。各メーカーのアルミ・フレームは国内販売を請け負っている輸入代理店が嫌って、扱うことすらないのが日本の置かれた現状なのだった。

 国内に入ってくるアルミ・フレームはといえば入門用のモデルに限られていて、ミドル・クラスのフレームやハイ・カテゴリーに分類されるようなイケてるトップ・モデルは輸入されないのだ。国内向けのサイトやパンフレットにはそうした分類の製品は掲載されないので、注意を払わないと私達にはそうした意欲的なモデルの存在すら判らない状況にある。

 しかし、国内とはまったく自転車事情が異なっている本場のヨーロッパでは、いまだにアルミ・フレームが開発されて、しかも盛んに流通している。例えば、自転車メーカーのサイトの国内版ではなく本国版を見てみると、そうした事情が良く判ってくる。

シート・チューブ部分

この「47」のステッカーはシートチューブのCC長を示す。

ボトムブラケットのセンターからトップチューブの結合部分のセンターまでの長さ。 ・・・結構長い。
チェーン・ステー(後ろ三角)

グラフィックは少しも凝ったところが無くて、到って質素。
質感が高くて無駄が無い。この優美なフレーム、実はそこが気に入ったところだ。

ベースに塗られた「白色」は少し趣があって、パールの入った味のある半光沢のホワイトでの仕上げがされている。(乗用車のマイカホワイトと似ている)
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シート・ステー チェーン・ステー

こうして写すと判らないが、タイヤのクリアランスはかなり大きく採られている。

通勤やレクレーションやフィットネスなどの「パフォーマンス仕様」向けの車体として、固定式のフェンダーが装着できるようなフレームの仕上げになっているためだ。

このため、キャリパー・ブレーキのアーチ長は長いものを必要とする。
装着したカンパニョーロの「ベローチェ」では少し短いようで、一番下の位置に調整したがそれでもギリギリの長さだった。

<スタンダードとのズレ  ― 世界的な標準 と 国内事情の大きな違い>

 日本の自転車事情は、私達乗り手が置かれた杜撰な道路環境や法制だけでなく、すでに流通の段階から標準化の路線を外されているのであった。

 とても性能や品質、流通量や知名度、さらには製品開発力に到るまで、世界トップに君臨する優秀なパーツ・メーカーを持つ幸せな国民の住む国とは思えないお粗末な状況だろう。世界が羨むメーカーの、そのお膝元であるのに・・・。

 例えば、道路事情や交通法規の大きな積み残しの問題がある。

 高速で移動が可能な自転車が、何故、安全に車道を走れないのか。右側・左側通行に無関係に身勝手に歩道を走る極めて多くの自転車が、何故、これほどまでに発生してしまったのか。


 たとえば、私の暮らすさいたまでは歩道を走る自転車は必ず右側車線の歩道上を走行している。つまり歩行者と同じ進行方向を行くので、歩いていると音も無く後方から自転車がやってくる結果になる。このために歩行者は、大きな危険にさらされている。後ろから無音で迫り来る自転車の存在を、歩道上を歩く人はまったく認知できないのだ。これでは事故が起こらない方が不思議だと言えよう。

 また、広い歩道であればあるほど、多くの自転車が並走しているし、歩道の車道寄り側は決して走らない。こうした様相を歩行者の立場になって監察してみると、それはまさに「無法地帯の主の行い」と言えよう。たとえば、左車線の歩道を進行する自転車などは、滅多に見ることはない。

 先日、面白いので日中の散歩の際に数えてみた(さいたま市中央区周辺の状況)のだが、平均すると約20台に1台程の割合が、左側の歩道を走行しているだけだった。そして本来のルール通りに車道上を走っている自転車は、これよりも更に少ない数である。さいたまだけの特異な状況なのかも知れないが、、これは驚くべき状況ではあるまいか。

 交通法規を確認するまでも無く、自転車は車両に分類されている。だから甘えてはいけない。私達は車両として道路の左側を走行する義務を負っている。

 止むを得ない状況にある場合のみ、特に許可された場所では歩道の走行が可能だが、その際には歩道の車線寄りの脇の部分を走行しなければならない。間違っても歩道中央や車道から一番遠い部分(さいたまでの自転車は例外なくこの一番安全な部分を走行している)を走ってはならない。勿論、「逆走」となる右側通行などは言語道断の行為で、歩道走行であってもそれは同様だろう。

 つまり、自転車に乗る場合、原則的(緊急の危険回避以外の目的では)には歩道走行は出来ないものだし、走行する場合は車両走行車線の側近を左側通行を守った上で走行しないといけない。これ程単純明確なルールが何故、守られなくなってしまったのか。ルールを打ち消すような公の大規模なキャンペーンが明瞭な意図をもって張られたとしか考えられない。

 私はそうした自転車の在り様 ―自転車を運転する際の心構え― が不思議でならない。
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ディレイラー・ハンガー

エンド金具は普通のものだが、エンドの斜め上にサービス用のタボ穴がある。さらに、フォーク・エンド後方側にも同様にタボ穴(アイレット)がある。

これはフェンダーやキャリアをつけるためのボルト留め用のもの。

いざとなれば、リア・フェンダーとフロント・フェンダー、それにリア・キャリアを付けて普段乗りや通勤に転用可能なものだ。
フォーク・アイレット部分

この小さな穴の有無で、実用的な機能性が追加出来るかどうかが決まる。
しかもアイレット(タボ穴)の有無は、重さや空力にはほとんど影響しないものだ。

 こうした世界基準の常識からは考えられないような後進性が、未だに改善される気配すらない。ピスト自転車の流通を規制強化している場合などではない状況にある事が、為政者達には判らないのだろうか?。

 正直な視線で見た時、私達が暮らしているのは実に遅れた、スタンダードから取り残された国であった。そうした中にあって、唯一、宇都宮の街が行政区として始めてといっても良い規模で、こうした事象の改善に取り組んでいる。この取り組みは、目を見張る状況だ。


 行政府のあり方からは、歩行者の安全を守る気はまったく無く、自転車を車と共存させる気配はさらにまるで見えて来ない。道路の状況や法規は、何時まで待っても一向に改善される様子がない。こうした長い放置にあっては、最早、国による行政的な改善などは当てにしてはいられないだろう。

 どこの自治体でも宇都宮の素晴らしい取り組みを見習うべきであろう、と思う。少なくとも政令指定都市クラスの行政を担う自治体ならば、その施政としてはそうあるべきだと私は考えている。


 宇都宮の道路は、自転車にとって素晴らしい状態で改善されつつある。それはしかし、自転車にとってだけ有効性のあるものではなかった。その取り組みや改善は、取りも直さず歩行者にとっても大きな安全が確保されると言うことに他ならない。人にも車にも優しい街が北関東に忽然と出現し、それが地域の暮らしや人の在り方に定着しつつある。

 栃木県はそういう意味では「シェア・ザ・ロード」の先進地といえよう。季節ごとに蕎麦を愉しみに訪れる「足利(あしかが)」の街も、街路には大きな工夫が凝らされている。足利の市内は何度となく自転車で走っているが、その工夫のお陰で車との関係で危険を感じた事は一度も無い。また、その車道左脇の広い走行帯の設置のお陰で、歩行者に迷惑を掛ける事も無く済んでいる。

 大宮市街地の一部の区画には似た様な工夫が凝らされている。JR大宮駅の南口側であるが、広い歩道が植栽で区分されて自転車専用の通行帯と歩行者専用の通行帯に分けて設定されている。路面にもそれを示すアイコンがあるし、歩道の入り口となる交差点部分の通行帯の頭上にも判り易い図で掲示が行われている。しかし、残念ながら、多くの自転車はその専用通行帯を走らずに、歩行者側の区画を走る。さいたま市の状況として私が書いた中央区と同じだ。車道よりの区画を走る自転車はほとんどいないし、歩行者用を走る自転車はみな、右側通行を行っている。折角の工夫が何の役にも立たず、歩行者は相変わらず危険にさらされたままだ。

 なぜ、足利の市街地ように、歩道上ではなく完全な車道内に自転車の専用通行帯を設けないのだろう。

 植栽で区分けし、路面に表示し、標識を立てても、さいたまでは少しもそれが生きていない。まさに行政による無駄な手当ての見本と言えよう。自転車は車両なのだから、もういい加減で子供騙しの偽善的な手当ては止めたらよかろう。いったい何時まで、歩道上の通行をさせるつもりなのだろう・・・。
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フォーク・コラム部 2013.04.13 姫百合駐車場

このフレームは、ダブル・バテットの7005アルミ。
フォークはカーボンで設えられている。
しかしコラムはアルミ軸なので、軽量という訳ではない。

<国力としての「円」の評価  円高の恩恵と円安是認政策>

 さて、新政権が発足して以来、折角訪れた我が世の春の「円高の恩恵」は今ではすっかり失われてしまい、最近では円安へと移行して来ている。

 この影響を受けて、来期の海外ブランドの各モデルは、多分軒並み値上げとなるだろう。しかもそれにアップされた消費税が追い討ちを掛ける。

 ようやくの事に国際的な流通価格並みに値段の下がったカーボン・フレームの国内販売価格があっという間に値上がりして、直ぐそこに来ていたカーボン・フレームは再びもとの高嶺の花と化し、私達の手の届かない場所へ行ってしまうかもしれない。

 さらに円安が昂進されていけば、代理店が扱うすべてのものが軒並み価格改定となるような事態だって起こりうるだろう。

 パーツの類をすべてSHIMANO製のものやや国産メーカー製品で揃えていれば良いが、そうでない場合も多かろう。自転車を構成するパーツ群、つまりコンポーネントは海外メーカー製品が多いからだ。

 メイン・コンポにイタリア製の「カンパニョーロ」を利用していたり、タイヤが「ブリジストン」や「パナ・レーサー」の製品ではなくフランスの「MICHELIN」やドイツの「CONTINENTAL」であったり、ハンドル周りやドライブ周りのパーツ・サプライ・メーカーがDEDAやFSAやBBBであったりする場合が多かろう。それに私などは、ジャージをはじめとしたウェアの類も多くは価格自体が安価に設定された海外の製品に頼っている。

 そうした円高の恩恵にまさに浴する状況で、やっと訪れた我が世の春を謳歌していた私としては、少し、いや大分、円安への急速な移行を心配している状態だ。パーツ・コンポーネントやサイクル・ウェアは兎も角、タイヤやチューブなどの必需品やオイルやクリーナーなどレプリカント類のような消耗品が価格改定の憂き目にあっては困ってしまう。

 だから、為替環境の変動やそれを容認(あるいは誘導)する政策に影響されて発生するだろう各種商品の値上がりは、大きな痛手となろう。ましてやインフレなどが政策誘導されては、しがない庶民の私にとって、何ら良いことは起きて来ない。
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フォークと並べて ”TEMPO”のフレーム・セット

フレーム本体がおよそ1.7kgの重量。
フォークは0.54kgである。

<アルミ・フレームの購入方法>

 ところで、「アルミ・フレーム」は国内取り扱いが無いだけで、多くのグレードや種類が海外では取り扱われているのをご存知だろうか。そうした海外市場からの調達を個人ベースで行えば、私達は世界基準の製品の恩恵に浴することが出来るようになる。

 海外自転車メーカーのサイト内の直販ページ(そこでの購入は「ファクトリー・アウトレット」の製品に限られる)や大手販売会社のサイトを利用すれば、すでに国内販売で設定された価格とは異なった実売価格で扱われているから、国内流通品よりも安価(2割から3割は設定が安いだろう)になる。さらに、国内では扱われないモデルやサイズも、数多く登場する。

 それは驚くばかりの豊富さなのだが、その製品ラインナップの多様さは、考えてみれば当たり前の品揃えの話であった。

 そうした用意をしなければ、多様な国民事情から成るヨーロッパの需要は勿論、世界規模の様々な需要を、製品を製造しているメーカーは満たしてやることが出来ない。

 その上に海外通販のサイトではセールなどで値段が割り引かれる場合があるし、さらにディスカウント品(旧モデル:前シーズン品などの処分品)を探せば、尚のこと安価に購入が出来る。
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フォークと並べて ダウン・チューブは底面側が広く上に絞られた卵型を基本とする。それがヘッド側では縦長で、BB近づくに従って円形になる凝った成形だ。

トップ・チューブは卵型の状態。

シート・ステー進行方向に向かってパイプが絞られている。角は丸くなっているが、二等辺三角形の形状を持つ。

そしてチェーンステーは、BB側がほぼ長方形(縦方向が長辺)でエンド側に向かって次第に絞り込まれて最終的には円筒状になる。

 今回紹介しているRidley(リドレー)社の「アルミ・フレーム」は、そうした理由から海外通販サイトから調達したもので、いずれも国内取り扱いが無い、日本では販売・流通していないモデルだ。

 いずれも、掲載されている参考価格の時点で、すでに国内販売価格を大きく下回る。同等クラスのフレームの国内価格(定価)とWebショップの参考価格は、2倍を優に越えるほども違っているのだった。


 例えば英国に本拠を置くの某大手通販サイトでの設定価格は円換算で7005アルミのダブルパテットによるフレーム・セット「TEMPO(テンポ)」が6.2万円、「YANA(ヤナ)」が6.9万円だ。それに、上位グレードの7005アルミのトリプル・バテットのフレーム・セット「ICARUS(イカルス)」が11.7万円という表示。

 もう、この時点で国内で流通する同等暮らすのフレームの設定価格を大幅に(驚くほどの幅で)下回っている。いずれも2/3から1/2の価格が参考として掲載されている。しかも嬉しい事に、実売されるフレームの価格は、この参考価格を基点として大きく割り引かれたものになる。何という幸福なのだろう。
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シート・クランプ オーバーサイズのシート・チューブ。

内径は31.6mm(ポスト径)、
外径は34.9mm(シート・クランプ径)。

写真のシート・クランプが付属していた。

Ridleyのパーツサプライ・ブランド「4ZA(フォルツァ)」の製品。

<フレーム・セット>

 海外通販の大手サイトに掲載されたフレームは、「フレーム」単体ではなく「フレーム・セット」の状態である、

 国内で販売されているのセットでは当然のように付いている「ヘッド・セット」が無いのを特徴としているようだ。注意書きはそこには無いのだが、国内と事情が違っていて、海外通販で購入する「フレーム・セット」には「ヘッド・セット」が無かった。そうした販売形態が一般的かどうかは判らないが、大手サイトがそうした状況なので、まあヨーロッパ諸国ではそれが普通の状態だろうと思う。

 それでは何がセットされているかと言うと、次ぎの構成になっている。

 提供されるのは「フレーム」と「フォーク」の主要部材、それに補助パーツが装着された状態でとなる。「シートポスト・クランプ」、BB下の「ケーブル・ガイド・プレート」、それにダウン・チューブ上の2ヶ所の「ケーブル・アジャスター」が付いている。

 これらを別途購入する必要は無いが、ヘッド・セットはフレームにあった規格の製品を探して、購入しておかなければならない。サイトでの扱いがある製品ならば、フレーム・セットと同時に注文すれば手間が無くてよかろう。

BB(ボトムブランケット)

付属していたBB下のケーブル・ガイド・プレート。
ケーブル・アジャスター

それにダウン・チューブのケーブルアジャスターが付属した。
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コラム

このコラムは30mmの口径で、オーバーサイズの標準径。

対応するヘッド・パーツは「1.1/8インチ」用の製品になる。
FSA BHP-50

このフレームのヘッド・チューブは特殊で、大きな注意が必要だ。

「Headset Type size;41.3mm ID 1 1/8'' Steerer」の記述がある。
これがまさに曲者で、ヘッド・セットは圧入式の製品を想定している。

メーカー推奨の製品はFSA社製の「No10AY]。しかし、これが手に入らない。


探し出したのはオランダの<BBB>社製のヘッド・セット「BHP-50」
この製品はシールド・ベアリングのカートリッジによる圧入式のもの。
ヘッド・パーツ上の分類は「セミ・インテグレーテッド」という方式のものになる。

パーツの口径(外周径)は41.4mmなので、0.1mm分、チューブの内径より適応径が大きい。このため「圧入工具」を使ってパーツをヘッド・チューブ内に加圧しながら挿入しなければならない。

<ヘッド・セット>

 さて、「ヘッド・セット」はフレームとフォークを接合するための重要なパーツである。その正体はベアリングだ。

 フォークから伸びたコラムをフレームのヘッド・チューブに通した際の接点上下にベアリングを入れる必要が出るが、それを賄うためのものである。古くは「圧入式」といって、ヘッド・チューブの口径よりも「ベアリング・ワン」の口径の方が僅か(0.1mm程度)に大きくて、圧迫して入れ込まないと挿入できない仕様だった。

 「ベアリング・ワン」というのは、ボール・ベアリングを受ける為のカップ状の金具である。なお、ボール・ベアリングは通常「リテーナー」と呼ばれる保持金具に嵌められていて、一体化している状態でグリスをたっぷり入れてワン内に収納する。しかもそうした構造パーツの固定方式も今の製品仕様とは大きく違っていて「スレッド式」と呼ばれる複雑な構造だった。
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FSA BHP-50 この9mmある筒の部分が、ヘッド・チューブ内に収納される。

口径が異なり、ヘッド。チューブのほうが0.1mm狭い状態だ。
そもそも両者は密着(圧着)されるのだが、さらに筒に入ると、パーツ側の皿の部分で格納位置が固定される。そして、その位置以上にチューブの奥へは、入っていかない状態になる。

だからヘッド・チューブの上下には、1mmほどの黒い帯(ヘッドパーツの皿の外周部分)が見える状態になる。

ベアリング部分はシールド構造のカートリッジ式になっている。
メンテナンス・フリーであり、また「玉あたりの調整」なども不要。

圧入式とはいえ、こうした処はインテグラル方式と同様の保守性を持っている。

<ヘッド・セットの選択>

 Headset Type/Size:Integrated Campag 1 1/8”」などと表記があればカンパニョーロ互換を謳った製品群から選択すればよいことになる。

 例えば、FSA社なら「Obit CE」や「Obit CF」のカンパ互換を謳った製品や、あるいはTOKEN社なら「Omega A3」などが適合するヘッド・セットの製品だ。

 これらは広く流通していて、国内でも海外でも常備品の扱いになるものなので、簡単に入手できる。しかし、購入したフレームは残念ながらその汎用的な(広く流通している)製品仕様ではなかった。

 購入後にそれが判ったのだが、それからがひと騒動のはじまりだ。

 解決までにおよそ1ヶ月。何度もメールを遣り取りして、やっと適合パーツが無事に入手できた。その顛末はというと・・・。もう、結果としては適合品を調達できたのでどちらでも良いが、一応書いておこう。

 このページの一番最後で記載するので、お暇であればどうぞお読みください。
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<スレッドレス方式のヘッドパーツ>

 マウンテン・バイクの爆発的な流行から新しい方式の「アヘッド式」という形態が考案された。

 それは従来の圧入方式(スレッド式)とは異なった「スレッド・レス」方式で、玉当り調整用のレースを介してチューブ・レースとロック・ナットで締め込む必要の無い仕様になったものだ。下側のクラウン・レースと上側のコンプレッション・リング、それを覆う上カバーがあり、チューブ・レースと「カートリッジ」をその内側に置いて挟む仕様のものだ。

 「カートリッジ」は、ベアリング自体が精度高く加工された金具と供に密閉されたシールド・ベアリングである。

 後にヘッド・チューブ側の切削加工がなされるように改良されて、さらにチューブ・レースが省略された「インテグラル方式」が開発された。

 だから、現行のロード用のフレームは最終発展系であるインテグラル式を採っている。

 ヘッド・パーツは互換性の厳しい部品で多くの規格がある。規格側だけ見ると乱立状態にあってどれが適合するのやら、選定作業が難しいが、カンパニョーロ互換の外形(ID41.8mm)を持った製品とケーン・クリーク仕様(カンパ互換のカートリッジの接合角度を45度ではなく36度で仕上げたもの)の対応フレームが主流だといえようか。

 この場合のヘッド・チューブの内径は42.0mmとなる。パーツ側にはIDとODの表示があるが、IDとは適合チューブの内径(カートリッジの外周の口径が対応)を、ODはチューブの外形(上カバー径が対応)を示す数値で、0.1mmを単位オーダーとしている。

 しかし、フレーム・メーカー毎に相違するといっても良いほど異なる部分なので、適合するパーツ種類(規格)を充分に確認する必要がある。なお、ロード車やクロス車、マウンテンなど、自転車の種類で大まかに分けられるが、ロードにおいてもメーカーの所在地によって大きく分かれる様だ。

 このため、国内で発売される「フレーム・セット」では、すでに適合するアヘッド式のヘッド・パーツが装着されている状態で提供されるのが、一般的だ。<BR>
 フレーム単体の場合には少しハードルが高くなる。そこにヘッド・セットは付いていないので、適合するヘッド・パーツの購入が必要になるからだ。

フレームにフォークを装着する ヘッドパーツ(上ワン)

圧入が完了して、フォークを挿入したヘッド部分 その1(上側)。

 まず、ヘッド・パーツの上部分。

 上ワンとシールド・ベアリングのカートリッジ、それにコンプレッション・リングがヘッド・チューブの筒内に圧迫された状態で挿入され、上カバーが付けられている状態が上の写真だ。

 この段階では、まだヘッド・チューブとフォークはフリー状態。だから放って置くとフォークの自重で、ステアリング・コラムが抜け落ちる。これを固定するのが、アヘッド用のステム機構の役割だ。
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フォークの基部

ヘッド・チューブの上下には、1mmほどの黒い帯(ヘッドパーツの皿の外周部分)が見える状態になる。
ヘッドパーツ(下ワン)

圧入が完了して、フォークを挿入したヘッド部分 その2(下側)。


写真では、
カーボン・フォークの上に、クラウン・レースが作った僅かな空間と、
1mmほどのヘッド下ワンによる帯があり、そこからヘッド・チューブに切り替わっている様子が判る。

 そして、ヘッド・パーツの下部分。

 下ワンとシールド・ベアリングのカートリッジが、ヘッド・チューブの筒内に圧迫された状態で挿入されている。これは上ワンと同様だ。
上に掲載した写真に見えていたステアリング・コラムに、まずクラウン・レースが密着されている状態になる。

 写真のクラウン・レースには、切りかきがあるが、これが無いヘッドパーツも流通している。切りかきが無い場合、コラムチューブの底部へきちんと装着するためには圧を掛けてやる必要が出る。その作業では圧入工具が必要となるが、ホームセンターで手軽に入手できる「塩ビのパイプ」で高額な工具の代用ができる。

 この内径にも規格がある。30mmのオーバーサイズ(1.1/8インチ)が、現状では主流となっているコラム径だ。
セットすると、このクラウン・レースの底面の形状によって、フォークと下ワンの縁部分は僅かに空間が開く状態になる。この絶妙な遊びが良い。

 前輪への突き上げなどの衝撃を受けた際に、この余裕が採られていないと、ヘッドチューブとフォーク基部が頻繁に衝突して、その結果磨耗してしまって大変な事になるだろう。先人の工夫と知恵には脱帽してしまうばかりだ。
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<ヘッド・セットの顛末>

 Headset Type/Size:Integrated Campag 1 1/8”」などと表記があればカンパニョーロ互換を謳った製品群から選択すればよいことになる。

 例えば、FSA社なら「Obit CE」や「Obit CF」のカンパ互換を謳った製品や、あるいはTOKEN社なら「Omega A3」などが適合するヘッド・セットの製品だ。

 これらは広く流通していて、国内でも海外でも常備品の扱いになるものなので、簡単に入手できる。しかし、購入したフレームは残念ながらその汎用的な(広く流通している)製品仕様ではなかった。

 購入後にそれが判ったのだが、それからがひと騒動のはじまりだ。

 解決までにおよそ1ヶ月。何度もメールを遣り取りして、やっと適合パーツが無事に入手できた。その顛末はというと・・・。もう、結果としては適合品を調達できたのでどちらでも良いが、一応書いておこう。


 フレームを販売する海外サイトへ問い合わせると「FSAで販売されているので、そこを探して欲しい」との指示が来るが、しかしFSA社のサイト上では該当する仕様の製品自体が掲載された全ラインナップ製品中に無かった。

 仕方が無いので、リドレーのベルギー本社へ問い合わせてみた。

 すると、「何故、直接の問い合わせなのか。日本には代理店があって、私達はそちらに任せている。普通はそうするものだ」と私のメール送付による直訴をたしなめる返事が来た。日本代理店では扱っていないフレームなので相談したい、と書いた上で本社へ問い合わせているのに、彼らの対応は実にそっけないものだった。

 そこでリドレーの日本代理店に事情を説明し、その上で問い合わを送ると、丁寧な内容だが「該当フレームに関しては扱いが無いため全く判らないので、販売したサイトへ問い合わせて欲しい」との返事が来たのだった。


 再度、リドレー本社への問い合わせをし、合わせて購入した海外サイトへも問い合わせを送った。

 リドレー本社からはアウトレット商品の販売紹介や、新しいフレームの紹介やレースでの活躍の状況などが直接メールで送付されるようになったが、肝心の問い合わせへの回答は無いままだ。そして、さらに肝心な販売サイト(海外通販大手)からは「該当するヘッド・セットは弊社では扱っていない」と言う、なんとも泣きたくなるような返事が送付されて来た。サイト上に扱いがあるか無いかは、すでに問い合わせ前に隈なく調べている自分にとっては、期待に沿わない乏しい内容の返事であった。


 こうなればと、いつも世話になっている前橋の頼れる自転車屋さんのTAKIZAWAのメカニックへ連絡してみた。インテグラル・ヘッド用の45度のテーパー付けの状態へチューブ内筒部分を切削加工できるか、を含めて相談してみたのだった。

 41.3mmという内径のチューブは扱ったことが無いが、45度や36度のテーパーがチューブの内側に付けられて無いのだとすると、そのフレームには「半圧入タイプ」のヘッド・パーツ製品が対応しているかも知れない。そしてメーカー推奨のNo10AYは店が持っているFSA社製品の仕入れ用のカタログには掲載が無い、という事も丁寧に調べてくれた。

 半圧入タイプ仕様のパーツには多くの種類があるので、適応するものがヘッド専門のメーカー製品中で見つかる公算が高い、という貴重な手助けを得られたのだった。


 フレーム購入先の海外サイトへは、その該当するヘッドの製品名や型番が知りたいのだ、と再度問い合わせると供に自分でもネット上を探しまわって、ほぼ同時に該当製品へとたどり着いたのだった。

 まあ、久しぶりに英文メールを沢山書いて、大分勉強が出来たので、その間の遣り取りはプラスにはなったが・・・。
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< 2013.07.28 追記 フレーム・セット(組み上げた自転車)のインプレッション>

 パーツ集めから始まって、ヘッド・セットの調達での苦労、一連の組み上げと調整作業を経て、やっと完成したのがご機嫌なアルミ・フレームの自転車だ。

 主要パーツはすべてカンパニョーロだが、これは主に海外通販で調達した。国内売価より低額なのがその理由だが、もうひとつは国内販売店での在庫が無いという事情もあった。数ヶ月を費やして価格の推移(セールなどの割引)を睨めながら、徐々に集めたのだった。それと共に専用の工具も集めたので、随分とメンテナンスに関しても勉強になった。

 だから最終的に組み上げの準備が整うまでには長い時間が掛かった。しかし一旦組み上げを始めたら、最終的な調整まで一日で終了させることができた。

 思った通りのフレームで、私は大いに気に入った。実家周辺の田園地帯の道路は、前橋では珍しく路面が荒れている。大きな亀裂や凹凸を含めて、まるでヨーロッパのパヴェ(石畳)のような状況だ。この界隈を走ると、たえず小刻みに振動するだけでなく繰り返し前輪の突き上げを食うことになる。そうした荒れ放題の路面で、この自転車は本領を存分に発揮してくれる。

 なんともいえない安定性があり、しかも振動がまるで気にならないのだ。カーボン・フォークの形状やフレーム形状(ジオメトリーとチューブの加工具合)が効いているのだろう。コラテックやフェルトやGTといった他社製の同価格帯のアルミ車にも乗っている(GTとフェルトはもう手放してしまった)が、それらで走った場合は実にこの振動が耐えられず、嫌な感覚が大きかった。けれどリドレーで走ると、過去に感じた嫌悪感がいっさい生まれてこない。路面の荒れ具合が巧い具合に吸収されて、実に爽快に走れる。


 その後、50キロや70キロ程度のポタリング、さらに前橋からさいたままでの100キロ程度の走行を繰り返したが、快適な状態は変わらない。ただし、このバイクでは7・80キロくらいまでの走行が適しているようだ。それを越えると、車重の重さが響いてくる。同様に坂道も、ポタリングで出現する程度のものなら大丈夫だが、赤城山は料金所を過ぎた10キロポイントくらいまでだろうか。その先の姫百合駐車場まで登るのは、ちょっと辛かった。バランス的には快適に走れる70キロ程までの平地走行、つまりポタリングやサイクリングで本領が発揮されるようだ。

 本来の目的としていたノーマル・クランクとアルミ・フレームによるトレーニングについてだが、その効果は大きいようだ。高回転のケイデンスを獲得してさらに平均車速を底上げするためのインナー・ギヤ(フロント39T)による練習や、インターバル練習などを繰り返し行ったが、まさに意図に違わない効果があったようだ。負荷に対する心拍数の5%ほどの押さえ込みが出来て来たし、高回転でのペダリングも随分と滑らかになって来たからだ。

 そのような訳で、私はこのフレームで造った自転車が大いに気に入って、トレーニング走行にだけでなく、帰省のたびのポタリング行にも頻繁に使うようになった。

 カンパニョーロのKAMSINホイールは低価格で性能が良いので評判のものだが、それとミシュランのPRO3(PRO4)タイヤの相性が良く、さらにそのセットとフレームやフォークが良く補完し合って独特の快適性がもたらされる。それにアテナ11速用のノーマル・クランクが巧く溶け合って、効果を発揮しているのだと思う。

 KAMSIN(カムシン)ホイールはカンパホイールの特色となっているG3組がリアに施されている。重量は少し重めだが、そこが練習用にはうってつけだ。「入門用の設定なのは価格だけで、性能は入門用ではありません」とメーカは謳っているが、まさにその通り。持って重いホイールなのに、走り出すと実に軽やかに転がる。進みがいいのはフレームの剛性との相性によるところなのかも知れないが、価格を考えると本当に優秀な良い物件だとおもう。
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< 2013.08.25 追記 組み上げた自転車のその後>

 長く愛せるお気に入りの一台となって、その後も幾つかのパーツ交換を行って楽しんだ。事あるごとに快適に仕上がった車体に乗っていた訳だが、その愛すべきものが今はもう無くなってしまった。

 8月10日、地元前橋の自転車ショップ「タキザワ」の大イベント、夏のガレージ・セールが特設会場の前橋問屋町センターで開催された。同店の浜松町と問屋町で開催される夏のセールは人気で、かなりの集客がある。私も数ヶ月前から楽しみにしていて、ディアドラの程よいレーシング・シューズを購入したいと期待していた。いよいよ当日、特設会場である問屋町センターへ乗りつけ、狩野プロのトーク・ショーを楽しみ、引き続き行われたジャンケンに勝利して見事シューズ半額券を獲得した。レース前の食事や補食のノウハウを仕入れられたし、カーボン・ソールのシューズも安価で手に入って、喜びに溢れて買い物を終えたのだった。

 2階会場を出て、喜び勇んで階段を降り、弾む気持ちで一杯になりながら問屋町センターの入り口を出た。しかしそこにはエントランスにある3基のステンレス・ポールだけが鈍く光って、静かに並んだ光景があった。

 固定ポールの内側 ― 車寄せの車道からはポールが障害となり、スロープの段差があるビル内側なので車体はショーウインドウや入店する人から死角にならず全景が見える状態 ― へワイヤー錠を使ってロックしておいた車体が忽然と消えていた。

 エントランス(車寄せ)はビルのテナント出入り口となる自動ドアの正面であり、ドアの横手には車椅子用のスロープがある。ステンレス・ポールはそのスロープと車寄せの通路との仕切りであった。ビルの出入口からは3mほどの場所に過ぎず、死角は一切無いオープンなスペースだった。ビル一階にテナントで入っている店舗のショー・ウィンドウの直正面で、イベント及びセール来場者の人通りが多い場所だ。

 それに自動ドアのすぐ内側はロピーになっていて、ガラス張りのビル管理の事務所兼守衛詰め所がある。私が来場した際には守衛さんも出入口の辺りを見回っていたし、そうしたビル出入り口という目立つロケーションから、すっかり安心していた。大地ロックを掛けるのでエントランスに車を横付けして自転車を積載しようとしても難しかろうし、訪れた15時という時間帯であればビルへやってくるのはセールへの来場者だけであろうし、と自転車をロックする際に思ったのだ。


 停めていた時間は15時前後の僅か40分間。しかも入り口正面で人通りがあり、守衛や店員の人目がある。さらに死角が無い場所での、ワイヤー錠による大地ロック状態。だから犯行を行ったのは自転車セールへの来場者(丁度、トーク・ショーの時間帯だった)を狙ったプロの仕業であろう。

 装着していたパーツが盗られたのなら、あるいは何時もは外すツール・ボックスや小型ポンプなどが被害にあったというならまだ我慢が出来よう。しかし、その際の私はすっかり安心していて、普段はしない行為なのに慢心していたのだと思う。自転車店の開催するセール・イベントに来る人間に悪人はいないだろう、と装着品の盗難(魔が差しての小さな盗み)のみを想定していたのだった。だからそうした一連の装備を車体に着けたままにしてしまった。

 しかし相手は、装備品を魔が差して盗むなどという同情すべき人種などではなかった。最初から緻密に計画を立てて冷静に網にかかる獲物(車体一式)を狙った、巧緻な悪人だったのだ。

 あっけに取られた後に浮かんできた無念の気持ちや、愛すべきモノを失った喪失感や何とも表現できないやるせない気持ちは、私の半世紀の人生で未だかつて味わったことの無い種類のものだった。


 僅かな時間で隙を突いて手っ取り早く欲望を成就させた犯人は、まさに憎むべきものだ。私達のような善良なロード愛好者はこうした盗みのプロを相手にしては、何ら抗すべくもない。あっけなくワイヤーを断ち切られて、悪人の餌食となるしかないのだろうか・・・。

 果たして、「世の人は善人」という、あるべき大きな前提はもはや通用しないのだろうか。駐輪に関してのみはそうではなく、(実に嫌な気持ちになるが)世間は悪意に満ちていると思って構えなければいけないし、そのように想定して準備し、愛車を防衛すべきなのだろう。

 少なくとも予定が公開されて来場者の動向が容易に想定できるイベントや買い物においては、遠距離といえどもロード自転車で乗り付けるべきではないな、と反省しきりである。
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