駅前やコース上には目につき易い案内板があり、町の歴史の紹介や散歩に役立つパンフレットも用意されていて、縦横に街中を歩くには苦労はしない。
学生の頃、友人がこの街で暮らしていて、よく遊びに来た。私の駒込、もう一人の友人が暮らす赤羽、そしてこの亀戸の街。下町トライアングルだ。この街で暮らしていたのは、正義感に溢れていて普段は少し尖っていたが飲めば丸くなる、茨城出身の楽しい友人であった。
彼が居たのは四畳半のアパート(一部屋だったが現在のようなワンルームではない)で、近所に安くて美味しい炉辺焼きの店があり、半分はその店で過ごすのが目当てで良くこの街に来た。皆、下手な自炊には飽き飽きしていて、その店の美味しくて安い季節の料理(初鰹や旬の秋刀魚、鯵のたたき、湯豆腐など)に舌鼓を打った。
大ジョッキで出される安いチューハイも気に入っていた。店の人が学生とみて、少し濃いめに入れてくれたからだ。当然、一品注文するたびに会計の総支払額を計算しつつハラハラしながら注文した覚えがあるが、確か、皆で飲んだり食べたりしてもいつも一人あたり1500円程度であった。(どうも今思えば、店のお姉さんが意図的に伝票に付け忘れてくれていたように思う。)
アパートの主がいる時もいない時もあったが、そうした事に頓着せずに、鍵の所在を知っている我々はその店の帰りに彼の部屋に泊り込むのだ。炉辺焼きで飲み食いを続けていてはとてもじゃないが貧乏学生の財布がもたないので、手土産に辛口の剣菱(二級酒でそれほど高くは無かったと思うが、値段の記憶が定かではない)などを買って、狭い部屋を何人もで一杯にして飲んだ覚えがある。
その時分に「七福神」が設定されていたのかどうか、まったく記憶がない。この土地で有名な亀戸天神(菅原道真を祭った天満宮)には、そうして泊まった翌日に皆で行った記憶がある。
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