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2008.03.15
江戸の情緒(谷中、王子)

アクセス;
 谷中;JR京浜東北線―日暮里駅、王子;JR京浜東北線―王子駅

カメラ;
  RICOH CAPLIO GX−100 24−72mm F2.4

 (画像添付時に約65%程度に圧縮)


 今回は、少しとりとめの無い散歩だ。

 京浜東北線沿いでのもので、谷中と王子がその場所だ。谷中は日暮里駅から、王子は王子駅から上中里駅まで歩いてみた。谷中といえば、少し前から、老若を問わず大分人気の街だ。

 今回は、以前のように街全体を歩く(2006.05.06 「谷中散歩 夕焼けだんだん」)わけではなく、買い物のついでに少し歩いた、といったことろだ。およそ2年振りにやってきたのだった。

谷中の路地裏 伊勢五本店
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 日暮里駅から谷中霊園を横切って、三崎坂(さんさきざか)に出て、そこを地下鉄の千駄木(せんだぎ)駅の方へ下って行く。途中で、豆大福で有名な「岡埜栄泉」からその先の創業300年の酒屋「伊勢五本店」の古い店舗を通り過ぎて坂の中ほどへ行こうとしている。

 坂の途中には、つい寄ってみたくなる喫茶店が道の左右にあり、古い店だけでなく楽しい場所だ。左右には、幾つかのお寺もあって、それぞれ佇まいが違うので、そのあたりも観察しながら歩いてみると面白い。

三崎坂にあるお寺 三崎坂にあるお寺
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 「いせ辰」という江戸千代紙の店が、今回の目的地だ。

 この店は千代紙が本業だが、風呂敷や手ぬぐいなど、染物として和のデザインを活かしたものが並んでいる。風呂敷やランチ用のマットなどは「いせ辰デザイン」として他店でも購入ができる。

 これだけデザインが豊富だと迷ってしまって、なかなか絞りきることができない。どれも小粋なものだが、私はこの店の50cm四方のものをハンカチとして利用している。多くは江戸小紋の気の利いた意匠のものだ。

 気に入っていつも使っていたものを立て続けに2枚ほど失くしてしまって、今回はそれをまた仕入れに来た。この店のものはデザインもいいが、その染め色が素晴らしい。新品のときの張りのある鮮やかさも捨てがたいが、使っているうちになんともいえない味が出てきて楽しめる。写真には撮らなかったが紺地の千鳥柄のものなど、少し紺色が落ちて来ると全体的な雰囲気も落ち着いて、使っていて気持ちが良い。

三崎坂にある「いせ辰」 いせ辰

江戸小紋(ソメイヨシノ)
ソメイヨシノの意匠が可愛らしい
いせ辰(きく)
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谷中コロッケ(肉のすずき) 谷中コロッケ(肉のすずき)

 「いせ辰」で気に入ったハンカチを買うことができたので、この街での今回の目的は終了したわけだが、折角なので一回りして谷中銀座をぶらついて「夕焼けだんだん」から駅に戻ることにした。

 谷中銀座には美味しいものが一杯あるが、今日は「谷中コロッケ」で有名な「肉のすずき」で食べ歩きをする。お店でコロッケをニ枚買って、「ソースを掛けてもらえますか」と聞いたところ、「うちのは、ソースを掛けては駄目」といわれてしまった。「冷凍食品のコロッケなどはソースを掛けて食べてもいいが、ソースを掛けては折角のコロッケの味が判らなくなる。だから、なにも掛けずに食べてください」とのことだった。

 私としては、メンチなどはソースが掛かった味がむしろ捨てがたいと思うのだが、コロッケは塩(クレイジーソルトなどの岩塩がよい)を振って食べることもあり、確かに仰るとおりです、という感じだ。

夕焼けだんだん
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 日暮里駅を基点とした谷中で買い物を楽しんだあとは、さらに京浜東北線でさいたま方面へ戻って、王子駅で途中下車することにした。

 王子は、先日も飛鳥山から旧古河庭園(2008.02.11 「飛鳥山から旧古河庭園へ(王子、上中里)」 )へ歩いたのだが、今回は線路を挟んでその反対側を行くことにする。いつか掲載すると書いた王子稲荷へ寄ってみることにした。

 王子駅を出て飛鳥山とは逆側に行くと石神井川が流れていて、その流域に「音無親水公園」が細く続く。折角なので、少し歩いてみよう。

 飛鳥山もそうだが、この親水公園も桜の季節には実に素晴らしく、川沿いに一面の染井吉野(そめいよしの)が咲きそろう。その様子は壮観で、江戸時代に花見や行楽として栄えた王子の様子はこんな風だったに違いない、と思わせるものがある。また、桜の季節にご紹介しよう。

 全国規模で広がっている「染井吉野」は、ここから近い駒込と巣鴨の王子側に広がる区域が原産だ。

 染井の名前は今も残っていて、遠山金四郎影元(遠山の金さん)の墓地などがある広い「染井霊園」や、地元の商店街の「染井銀座」などがある。植木の町として江戸の頃は栄えた場所だったらしい。学生の頃のアパートがあった場所はすぐ近くの駒込の霜降り銀座の横町を入ったところだった。王子からみると、先日訪れた旧古河庭園の先が「染井」になる。

音無川親水公園 音無川親水公園

音無川親水公園  音無川親水公園

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王子神社の社殿 親水公園の脇から、
急な石段の坂を登ると
王子神社の広い境内となる。

社殿は立派で、
神田明神と同じくらいの大きさだ。

 王子神社から、もう少し行くと有名な「王子稲荷」となる。

 王子稲荷は、関東のお稲荷さんの総本山だ。この神社は、有名な「狐の行列」という行事があるとこで有名。伝説としては大晦日の晩に関東中のお稲荷さんがこの神社目指してお参りに訪れ、行列をなすという。

 社へのお参り前に火事装束に着替えたという大榎の木の下に集まる白い狐の様子を、歌川(安藤)広重が味のある浮世絵に描いている。

王子稲荷 王子稲荷
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王子稲荷 王子稲荷

 実は入口が少し判り辛い。

 道に面した社地は幼稚園となっている。だから正面の入り口は園の入り口となっていて、休園日には参拝者は坂を上って横手から境内に入る。岸稲荷とも呼ばれていたらしいが、その場所が崖沿いの社地だ。そのためか空気が冴えていて、なんだが霊験あらたかな雰囲気で、ご利益が期待出来そうだ。

王子稲荷奥の願い石 王子稲荷奥の願い石
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企業からの寄付 王子稲荷奥の願い石

 奥の階段を上った先には、「願い石」が祭られている。この石を願いごとと共に持ち上げてみて、軽く上がったら願いが叶うという。重たく感じる場合には、残念ながらその願いは適わない。

 いかにも江戸庶民の熱い信仰が感じられる。

 さらに奥の崖の上には、狐穴という祠がある。古くはこれが本殿であって、その後時代が下り、商人の勃興と共に盛んとなった稲荷信仰とともに徐々に規模が大きくなって、社殿や拝殿などが整備され、神社自体が立派になっていったのではないだろうか。狐穴の祠には、信仰心を掻き立てる素朴な強さがある。

王子稲荷奥の狐穴
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名主の滝

名主の滝(女滝) 名主の滝
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 さて、王子稲荷を後にして、さらに上中里駅側に京浜東北線に沿って進むと「名主の滝」という自然な感じが溢れる公園にたどり着く。

 この公園は、幾つかの滝があって武蔵野の渓流を再現するように造成されている。

 もとは、庄屋の屋敷地であったらしい。武蔵野台地の高低差を利用して、幾つかの様子が異なる滝が作られている。大きな池や蛍飼育用の小さな池、雰囲気溢れる渓流など、風光明媚な武蔵野の里山の様子が再現されている。

 周りはまったくの森の状態が保たれていて、そこを歩いているととても静かだ。自分が王子の街中にいることを忘れてしまいそうなほどだ。

名主の滝 「名主の滝」の渓流
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名主の滝 名主の滝

 前にこの公園に来たときは夏の暑い盛りであったが、新緑の季節もよさそうだ。滝は公園内の遊歩道上に点在していて、それぞれに雰囲気を変えている。

 滝を眺める遊歩道から下の流れをふと見やると、椿が落ちて流れていた。

 まるで黒澤映画の「椿 三十朗」のようだ。三船敏郎の用心棒シリーズ。用心棒に登場の桑畑三十朗、そして椿三十郎、いずれもが名前を聞かれた三船敏郎(みふね としろう)がふと外を見やって、目についた物から名乗りとしていた。映画ではそんな演出によって、事情のある浪人者を表していて、その辺りの微妙な雰囲気が良く出ていた。

流れにとまる落ちた椿 名主の滝
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