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オーディオ : TU−870を作る
キットについて

<TU−870 について>

 TU−870は、「6BM8」管を利用した真空管アンプの自作用キットだ。

 真空管には規格による種類があるが、このキットで利用する「6BM8」は、電力増幅用の五極管と電圧増幅用の三極管の二本分が口金が無い小型のチューブ(MT管)に一体となって収められている。ステレオ・アンプなので右と左で各1本、合計2本のガラス管がこのパワー・アンプの回路上の心臓部だ。

 回路は美しいプリント基板に展開される仕組みなので、各種のパーツを回路図に従ってハンダ付けしていけば、誰でもが素敵な真空管アンプを手に入れられる。部品点数は131、メーカーでの位置付けは「入門用キット」だ。製作マニュアルは12ページ、別冊で「ハンダ付け、虎の巻」がつく。

 詳細な図面や丁寧な注意が記載されている。ここまで懇切・丁寧に書かれているので「音が出ない!」なんてことがあるのかと思うが、同社には「エレキット・ドクター」という有償のサービスが用意されている。基本料金7,000円で点検・手直し・調整をしてもらえるのだ。これなら組み上げに失敗しても安心だ。

 しっかりとしたシャーシ、基本設計のわかり易さ、低価格・高性能が売り物の優秀な製品。だからそのままでも非常な満足が得られるのだが、さらにプラスαを求めて改造の土台としてこのキットを利用するユーザが多い。

 超低リーケージ・フラックス(トランス内部から外に漏れる磁束が極めて少ない)、低損失過負荷特性に優れた余裕のある大型の「R−コア・トランス」を電源トランスに使っている。「R−コア・トランス」は高品位オーディオ用でよく使われる「トロイダル・トランス」の欠点を改良したものだ。このため、そのままで充分にクオリティの高い音が楽しめる。

 回路の変更まで行うといった改造までは難易度が高く知識無しには出来る話ではないのだが、そこまで手が出なくても楽しめる。この製品は完成品ではなくキットの組み上げなので、「パーツ交換(置換)」という奥の手を使うという楽しみな余地がある。そのままのパーツでも性能的には充分良いのだが、少し変えれば効果絶大と各氏のWebページで紹介されているのが、基板上に配置される部品単位での交換だ。なかでもコンデンサを取り替えると格段に音が変化するらしい。特定のメーカー製のコンデンサ(製品名「ビタミンQ」やサンヨー製の「OSコン」)が評判がよく、僅か数百円の出費で、音が鮮明(すっきりとしたり)になるらしい。



 *製作の様子は     TU−870の製作〜AUDIO(アンプ、スピーカ) のページへ
 *失敗の無い改造の様子は    TU−870の改造(各種パーツの置換) のページへ
 *さらなる改造は      TU−870の改造2(入出力系統の見直し) のページへ

 *関連として TB社製 W3−593SGでのスピーカー自作 のページへ

TU-870 真空管に灯が入る

点灯した真空管が、これほど美しいものとは。
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<TU−870 との出会い>

 もう、二年も前の話になる。仕事で秋葉原へ行った帰りに、何気なく「コイズミ無線」へ寄った時のことだ。その店は、国内・海外メーカー製のウーファーやスコーカーやトゥイター、フルレンジなど各種類・各口径のスピーカ・ユニットが所狭しと並ぶ、自作スピーカ御用達の専門店で、その道の<老舗>だ。

 スピーカーを作ろう、という明確な意図は無かったのだが、なにか惹かれるものがあって久しぶりに寄ってみたのであった。入った店内では「アート・ペッパー」の曲が流れていた。ガラスの瓶(お菓子を入れる100均で見かけるような容器)に入った小さなスピーカーから、素晴らしいアルト・サックスの音が響いていたのだ。スピーカ・ユニット自体は直径が8cmほどの小型だが、辺りにはサイズを圧倒する豊かな潤いのある音が溢れているのだった。そのスピーカーをドライブしていたのが、後で知る「TU−870」(あるいはその上位機種のTU−879であったかも知れないが・・・)であった。

 もう、今ではすっかり珍しくなった真空管のアンプだったので、小さなボディでも、きっとかなり高価なのだろうと最初から意識しなかったのだ。いい音のするスピーカ・ユニットばかりに気を取られ、鳴っていたのと同じスピーカーユニット二本を、次に秋葉原へ出掛けた際に購入したのであった。購入したユニットは、パソコン用のIOデータ製スピーカからオリジナルのユニットを外してその換わりに取り付けて利用していた。スピーカーボックス、正確には「エンクロージャー」と呼ぶが、バスレフ型(スピーカ裏面で発生する低音を箱の空気振動として外部に出す構造、低音が増福され音が深まる)の小さなものだ。

 スピーカーだけ購入したが、2年の後に再度このアンプにめぐり合った。「コイズミ無線」の向い側にある店で、このアンプが展示販売されていたのをたまたま目に留めたのだ。「あっ、これだ!」と思った。値段を見ると2万円程だ。真空管を利用したパワーアンプでこの値段・・・。ちょっと揺さぶられた。

 大好きなアート・ペッパーが、あの音で聴ける、と思った。Netで情報を調べると、メーカーでは価格維持が難しく、在庫限りで「3月には販売終了し、新モデルとなる」ということが判った。すでにメーカーからの出庫は無い状態だから流通は無く、店頭在庫のみなのであった。

 今買わないともう買えない、ということになる。なんだか追い詰められた気分だ。人気キットなので内容に不安は無いし、音も確認している。そのコストパフォーマンスの高さと相まって非常に魅力的な製品なのだ。

 その後、少し経ってからスピーカ・ケーブルを物色して「ヨドバ○カメラ」のオーディオ・コーナーを覗いたら、各社のスピーカ・ケーブルのロールが壁面一杯のラックに収納された裏側にあるガラス・ショーケースの下段にあのキットがあった。店員さんに聞くと「あるかなあ・・」と言いながらストックを調べ、「2つだけ残っています!」との返事だ。さらには、一寸調べて、在庫限りです、という追い討ちを掛けて来た。これぞまさに「天からの啓示」・・・。

 こうして、あこがれの「真空管アンプ」が(4回払いで)私の元にやって来たのであった。
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<部品の紹介>

 組み立てる前には、各氏のWebページでの紹介事例を検索し、一通りの事前調査をした。コンデンサの変更が効果的、改造の土台に最適、などという情報はその際に仕入れたものだ。

 勿論、私もその記事を目にしてジッとしていられずにコンデンサを買いに走った。秋葉原駅横のパーツ店が所狭しと立ち並ぶ横丁は中学生の頃には良く通ったところだ。コンデンサ専門店があり、そこで目的のものが手に入るはずだ。回路図片手に探してみると、ニチコンのオーディオ用の高品位の電解コンデンサを見つけることができた。Webページでの各氏の改造記事では紹介が無いが、メーカー製品のアンプカタログなどでも高品位パーツとして基盤上の写真として掲載されているものなので、迷わずに購入だ。

 極性のある電解コンデンサだけではなく、通常のフィルムコンデンサも目的のものが最終的に手に入った。何度か秋葉原に通ったが、その中で、コネクター(RCA端子やスピーカ端子)の類も気に入ったものが見つかった。

 そういうわけで、私のアンプもご他聞にもれず、本来の製品そのものとは少し違ったパーツ構成となっている。

 音出し前に入手できていたものは変えてしまったので、実のところは部品交換による効果の程は明確ではない。交換の前後を聞き比べて見たわけではないのでどれほど変化したかの正確なところは判らない。だから自己満足そのものの世界だろう。

 ただし、このキットは別段パーツを変えなくても、充分なクオリティの音であろうと思われる。秋葉原の店頭で鳴っていたものはメーカ製のデモ品であって個人ユーザ所有のような改造された中身ではないだろう、と思うからで、私はその音を聞いて購入を決めたのだ。


 交換していないキット添付のオリジナルパーツを紹介しておこう。

 ・プリント基板(メイン基盤とRCAジャック用入力端子基盤を切り離す)
 ・ケーブル接続用のピン(基盤上への配線ターミナル)
 ・各種スイッチ(入力切替と電源スイッチ、ヒューズケース)
 ・コンデンサーと抵抗(設置部位ごとにパッキングされている−間違えやすい値は別の袋にセットされる)
 ・各種抵抗(耐圧抵抗と通常の抵抗;設置部位ごとにパッキングされている−値別の袋にセット)
 ・各種ビス(径ごとにパッキング)
 ・真空管
 ・トランス(出力トランスと電源トランス)
 ・内部配線用ケーブル、電源ケーブル
 ・パネル、シャーシ
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プリント基板 プリント基板(RCAピンジャック用)

プリント基板で利用するピン スイッチ類
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各種コンデンサ 各種抵抗(水色は耐圧)

ビス ビス
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電解コンデンサ、RCAジャック 間違いやすいパーツは別の袋に入っている。値の違う抵抗やコンデンサ、ネジなどだ。だから手順どおりに開封していけば、着け間違いは起こらない。

キットメーカーの良心だ。

真空管 6B8M管、ロシア製
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出力トランス 電源トランス(R−コア・トランス)

ケーブル 出力トランスと電源トランス。

電源トランスはカバーケースに入るが、それをつけてから、メイン基盤を設置しないと、基盤を外さなければならない羽目になる。

手順としては、トランス、カバー、そして内部配置だ。
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フロントパネル 電源トランスケース

メインシャーシ 頑丈なシャーシと、高級感あるアルミパネル。

電源部に奢ったR−コア・トランスと相まって、このキットの人気の秘密だ。
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<道具について 組み立てに必須のもの>

 必須なものは、「半田ごて」と「はんだ」、ニッパとプラスドライバーと六角レンチくらいだろうか。他にも色々あれば工作はやりやすいので、「説明の手引き」に記載されている道具の類が揃っているに越したことは無い。

 私が用意したのは、以下の道具だ。

 ・オーディオ用の銀入りハンダ(銀含有で音の劣化が防げる、らしい? ・・気休めである)
 ・ヒートシンク(ICやトランジスタは無いので、実際にはあまり必要ない。ハンダ付け時の加熱から熱を逃がしパーツを守る)
 ・ラジオペンチとニッパ(ニッパは抵抗やコンデンサなどのパーツをハンダ付けした後、余った足を切るために必須)
 ・半田ごて(20Wとコードハンダ付け用の30W)

ハンダ ヒートシンク(ハンダごての熱を逃がす)

ラジオペンチとニッパ ハンダごて
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<道具について あれば便利なもの>

 必須なものは、無ければ工作そのものができないが、以下は、あると便利な道具。

 必ず用意する必要は無く、しなくても代用が利くので特に問題は無い。ただ、あればすこぶる楽になるというものだ。

 ・ハンダごてクリーナー台(こて先はハンダ含有のヤニで汚れるので、ハンダ付けの際はこまめに先を綺麗にしておく)
 ・電工ペンチ(ケーブル皮膜をむいたり、プラグをかしめるため)
 ・保持ピンセットと保持用ツール

 ・音が初めて鳴った時の感動を高めるスペシャルツール。祝杯用の赤ワイン(気分の問題なので安物でかまわない)

ハンダごてクリーナー台 電工ペンチ

パーツ保持ピンセット
保持ピンセットの類が一つあると便利だろう。
保持ツール
ケーブルを保持してハンダ付け、なんて局面が結構あるのだ。
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<道具について 改造する場合>

 一度、基板上にパーツが実装された後に改造する場合、ハンダで固着されたパーツを外す必要がある。

 基盤上のターミナルピンへの接続例で書いた、プラグによる接続はそのための布石だ。そうやって取り外したメイン基盤から、さらに交換対象のパーツを取り外す必要がある。

 そのときには、パーツへの加熱によるダメージを防止しなければならない。そのため、溶着されたハンダを溶かした後にすばやくパーツを外すための補助ツールが必要となる。

 ・ハンダ吸い取り線(パーツ取り外し用、溶かしたハンダを毛細管現象を利用して吸い上げて取り除く)
 ・パーツの取り外し用のピンツール(パーツ足の曲げと「てこ」により基盤から持ち上げる)

 すでにパーツの足は、ハンダ分を残して切り取ってあるので、ハンダが無くなり少し持ち上がれば取り外せる。

ハンダ吸い取り線 パーツテコ
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