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オーディオ : TU−870を作る
キットの組み立て

<TU−870の組み立て>

 TU−870は6M8B管を利用した真空管アンプの自作用キット(キットとの出会いとパーツの紹介)だ。

 ふとしたきっかけで出会った、この人気キットのパワーアンプを組み立てた。12ページに渡る詳細な「製作の手引き」が付属しているが、実際に組み立て途中の様子を記録してみた。手引きに記載されている平面図の補足・参考として頂ければと考える。


 工作は、順番を守って冷静に手順通りに行えば、特に大きな問題は無い。スイッチへのハンダ付けなど、多少手こずる部分もあるが、根気であろう。


 私が制作上で特に注意した点は、このキットで多様する端子ピンの扱いだろうか。秋葉原へ行くと「端子」専門の店がある。ピン径に合うソケットを購入すると、基盤への接続ケーブルの抜き差しが自由にできるようになる。説明書では、ハンダ付けするように指示されているが、プリント基板は、パーツ交換時にはシャーシから取り外したほうが作業が楽で、その際にケーブルがハンダで固定されていると非常に面倒になるからだ。改造も視野に入れている場合には、基盤取り外しは前提となるので、是非お勧めしたい対策だ。(プラグはケーブルをセットして電工ペンチでかしめる必要がある。)

 それと、出力トランスの入力側のケーブル(メイン基盤へ接続される)に対する対策だ。黄色とオレンジ色のケーブル皮膜で非常に目立ち、折角の黒いボディから浮いてしまう。そのでこのケーブルは熱収縮チューブでカバーすると、2本を包んで黒くすることができる。なお、電源系のケーブルはノイズ防止のために良く縁っておく。

 あと、シャーシは組み立て完了時までは保護しておく(包装されていた紙で包んでおく)、ということとフロントパネルは完成後に着ける、ということだ。どちらも、不用意な傷つきを避ける、という意味だ。

 細かい点になるが、基板上の各種パーツの向きは統一しておく。抵抗のカラーコードやコンデンサの値がプリントされた面の表示方向などだ。こうしておくと回路確認が容易となる。


 主な手順は、熱に強いパーツから基板上に順番に設置していく、という点だ。

 ・プリント基板にピンを打ち、半田付けする(パーツのハンダ付けは「銀ハンダ」を利用)
 ・真空管のソケットを基盤裏面へ設置し、半田付け
 ・抵抗、耐熱抵抗を設置(耐熱抵抗は放熱させるため基盤から浮かせて設置;カラーコードは方向を統一)
 ・コンデンサの設置(フィルムコンデンサは構わないが、電解コンデンサは極性に注意)
 ・端子ピンへの接続(ケーブル終端を直接ハンダ付けせずに電工ペンチでソケットを着けて、それを介す)
 ・入力系統の切り替えスイッチの接続と配線(サブ基盤−入力端子−とメイン基盤の接続)
 ・電源スイッチの接続と配線(電源系のケーブルなのでノイズ対策として縁っておく))
 ・電源トランスの設置(電源系のケーブルはノイズ対策として縁っておく)
 ・電源トランスのカバー設置後にメイン基盤のシャーシへの固定
 ・出力トランスケーブルとメイン基盤・スピーカ端子への接続
    (基盤のターミナルピンへはソケットで接続しておく)
 ・ボリュームの部とフロントパネルの設置


 *製品、準備の様子は TU−870の紹介〜AUDIO(アンプ、スピーカ)
 *失敗の無い改造の様子は    TU−870の改造(各種パーツの置換)
 *さらなる改造は      TU−870の改造2(入出力系統の見直し)

 *関連として TB社製 W3−593SGでのスピーカ自作 のページへ
 に記載している。

プリント基板にピンを打つ RCAジャックの接続

ピン メイン基盤にピンを打つ

 20数本のピンを基盤に打つ。各種のケーブルの接続用のターミナルとなる。このピンへは、解説ではハンダ付け、となっているが、改造時の作業性を考えてソケット(プラグ)で接続することにする。

 部品の様子は、( TU−870との出会いとパーツ紹介〜AUDIO(アンプ、スピーカ) )に記載している。
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パーツの足はハンダ付け後にニッパで切断する 真空管ソケットの設置(基盤裏面に設置する)

抵抗の設置 ダイオードの設置

 耐圧抵抗は、プリント基板から浮かせて(2mmほど離して)ハンダ付けし「放熱対策」する。一般の抵抗と各種コンデンサは基盤に密着させ、パーツの足は最短の状態とする。裏面に抜いてハンダ付けをして余った足はニッパで切断する。

 真空管ソケットは、非常に高温になるので、充分なハンダを盛る。電源投入して再生している状態では、真空管は100度近くの高い温度になるのだ。

 抵抗はカラーコードの方向を統一しておく。そうすると、電源投入前の回路設置の確認が簡単になるし、基盤を見たときに美しい。(美しいといっても、基盤はシャーシ内部に格納されるので後から目にすることは無い。)
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パーツの方向(抵抗値の帯や値の表示面)を統一して 電解コンデンサの設置(上:高性能品への置換)

電解コンデンサの設置 電解コンデンサの設置(高性能品への置換)

 電解コンデンサの設置は、極性に注意する。間違えると、コンデンサがパンクし危険でもあり、注意が必要だ。

 真空管からの回路となる部分のコンデンサ(キットのパーツ番号C6、C7)は「ニチコン製の高品位オーディオ用電解コンデンサのFine GOLDシリーズ」に置換している。ニチコンのコンデンサは、キットのコンデンサより大きくて足幅の規格が違うので、残念ながら基盤に密着はできない。このように、電解コンデンサの置換は、足やサイズに要注意だ。

 また、メーカーからは「電源整流用のコンデンサと真空管用メッシュ・カバーのセット」がこのキット専用のオプション品として別売されている。ヨドバ○カメラでキットを購入するとそのポイントで丁度交換できる価格のもの。低ノイズ化ができるので、オプションのコンデンサを着けたが、設置によってノイズの数値が半減するなら最初からセットしておいて欲しいものだ。オプションで増設、というよりカストマイズで置換、というのはどうだろう。たとればメーカ製のロード用の自転車なでのようにユーザ選択による高品位パーツへの置換用の組み合わせを用意するのだ。たとえばフィルム・コンデンサがポリエステルフィルムによるものだとか、電解コンデンサが大容量であるとか、誤差設定値が現行キット添付品の10%ではなく5%基準のコンデンサや抵抗、などという事になっていればさらにありがたいのだが・・・。
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基盤ピンへの配線(ソケットでの接続) 電解コンデンサの設置(高性能品への置換)

RCA入力コネクター基盤ピンへの配線 スピーカ端子(バナナプラグ用に置換)

 基盤の接続用ターミナル・ピンへのコードの接続は、ハンダによる直付けではなくソケット(プラグ)を介して接続している。こうしておけばメイン基盤の取り外しが格段に容易になる。工作上のひと工夫だ。パーツ交換を想定していない場合でも、回路接続にミスがあった場合は基盤をシャーシから取り出さねばならないから、基盤を取り出し易くしておくことに越したことは無いと思う。

 入力切替スイッチとの接続、電源トランス、出力トランスへの接続、スピーカへのFNB接続など、すべてメイン基盤の接続ピンへはコネクターでの接続とする。ただし、入力端子用の基盤(サブ基盤)は、普通なら外す必要はまったく無いのでダイレクトにハンダ付けした状態でも構わないだろう。

 スピーカ端子はキット付属の圧迫端子からバナナ・プラグ用端子に置換している。金メッキ品を選んだのは気休めだ。少しでも音に対して良かれと願ってのことだが、音に対しては、「コンデンサ変更」ほどの変化は無いと思う。

 よく考えてみれば、基盤から出力トランスへの信号入力のケーブルが普通のコードだし、回路からスピーカへNFBを掛ける接続ケーブルも普通の信号用のシールド線だ。だから、その先で金メッキパーツを使おうが、OFC線の高品位のスピーカ・ケーブルを奢ろうが、余り関係が無いように思えてくる。所詮、端子(スピーカ・ケーブル・ターミナル)を変えたところで、実のところはどうということは無いのだろう、と思えるのだ。プラグだけ、ターミナルだけで数千円や万円を越えるようなハイエンド・オーディオ用の製品もあるが、そこまでは、と思うのだ。


 そうは思えるが、少しでも改善する要素があればと、値段との折り合いを考えつつ、パーツを品質の良いものへと取り替えてしまう。各氏の改造例もそうなのだろうが、このあたりが、向上欲渦巻くB級マニアの悲しい習性なのだろう・・・。
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スピーカ端子の接続 電源スイッチの接続

電源系のケーブルは縁っておく 全体の配線

 電源系のケーブルは良く縁っておく。ノイズ軽減のための基本的な対策だ。また、電源系と信号系のケーブルは平行状態にしないほうが良い。平行状態にすると、電源系ケーブルから発生する電界の影響で電磁誘導のハム・ノイズ(ブーンという音)が発生する場合があるためだ。

 これなどはコストが掛からないで音質の向上が望める。ほんのちょっとした工夫(基本的な対応であるが・・)でも、実に効果的だ。
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出力トランスの配置 目立つケーブルは熱収縮チューブでカバー

 熱収縮チューブで、目立つケーブルを覆うと、このキットが持っているシックな外観を損なわないですむ。

 出力増幅用の2つのトランスから伸びる、信号入力ケーブルはカラフルな黄色とオレンジなので、そのままではロボットのカラーリングみたいでどうにも目立つのだ。それがパワーアンプらしくて良いともいえるのだが、好みの分かれるところだろう。

 写真右は熱収縮チューブでケーブルをカバーした状態だ。

リアの様子(スピーカ端子は置換) 真空管の接続(ちょっとコツがいる)

 真空管ソケットのメイン基盤への設置状態を確認する。

 本当は最初の行程、真空管ソケットをメイン基盤へ取り付ける時に「仮組み」し、シャーシにメイン基盤を設置して真空管を挿して「垂直」を確認するほうが良いだろう。イザ部品すべてが組みあがって、真空管を挿したらピサの斜塔のように「大分斜め」、では、少し悲しい。
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ボリュームの接続(六角レンチが必要) フロントパネルを着ける

真空管に灯がともる 組み立てが終わり、何回かの回路確認も一通り終わった。

さて、電源を入れる。


キット作成中に向かえる最大のイベントだ。緊張の一瞬だ。

電源のスイッチトグルを倒してから数秒後に、無事に真空管が赤熱し始めた。温かみ(実際にすぐに高温になる)のある様子だが、出てきた音は澄んでいて、心が躍る。

ヘッドフォン・ジャックの配置

 音の確認は、安物のスピーカを繋ぐ様に各位のページで推奨されている。回路接続のミスによってスピーカを破損する事故も発生しうるから、ということだろう。

 真空管がゆっくりと赤熱し、澄んだ音が確認でき、数十分以上経過しても音が途切れたり、ふいに赤熱がやんだり、焦げる匂いやいやな音(ノイズやハム)がしなければ、まずは成功だ。さらに、入力の切り替えや電源のON/OFFなどの操作を順次確認する。


 テスト用から通常利用のスピーカに付け替えて、気に入りの曲を入力すれば準備は完了だ。あれば便利なツールの部分で書いた「赤ワイン」を抜いて開通をゆっくりと祝おう。安いワインでも充分に極上の気分に浸れるが、ちょっと奮発してもいいかもしれない。
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