<TU−870を改造する 改造への取り組み>
キット・オーナーとしては同じ出来上がりの製品(通常の素組みのものと比較して)でも、少しでも効率の良いもの、音質の良いもの、品質の高いもの、使い勝手の良いもの、にしたい訳だ。
一方にはハイエンド・オーディオの世界がある。そこは投下資本に比例した絶対則が支配している。何を置いても「掛けたコスト」が物をいう。もう少し上のグレード製品や他社の上級マニア向けのキット製品、を選んでしまえば、それで解決。明らかに一ランク上の音が手に入る。それがオーディオの世界です、なのだが、それでは庶民はつまらない。
「価格がすべて」などという事は、最初から判り切った事ではないか。オーダーやカスタム・メイド品などではなく一般的なメーカ製品であっても、対価を支払えた人だけが圧倒的なクオリティを入手できるのだ。手工業や工芸品や芸術作品ではなく一般消費者向けに流通する「工業製品」なのだから「コスト」と「性能」そして「価格」は比例するのが当たり前なのだ。だけど、私としては・・・。自分の背丈に見合った愉しみを自分の懐具合の中で工夫したい、と思うのだ。それが自作に取り組む姿勢であろう。薄い財布と相談しながら、一寸高いなと迷いながら、小さなパーツを変えていく。ちょっとした工夫が閃いて、それを施してみる。少ない予算のやりくりでそうした努力を繰り返すのは、すべては、原音には遠く及ばなくても「いい音」で再現したいがための努力なのだ。
諸先輩各位の改造記にある事例も、みな、発端はそういう部分から始まっているのだと思う。先達も、研究を重ねてあれやこれやと工夫を凝らし、それぞれの判断でパーツを置き換えているのだ。
そうした事例はそれぞれのお気に入りのジャンルの音楽を楽しむ日々の中での工夫の積み重ね、なので、結果をみると良い方向へ向かう事例が実に多い。「交換したら、実は大失敗」という例は、余り聞かない。
実は、そんな失敗談にこそ興味が尽きないが、「ここをこう変えて、上手くいきました」という話を公開する方が圧倒的に多いのは、やはり人情だろう。さて、私の改造記だ。失敗した部分もあるが、そんな訳でそれはまた後日談としよう。
|