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オーディオ : TU−870を改造する(入出力系統の見直し)

<TU−870を改造する 入出力系統の見直し>

 TU−870は、「6BM8」管を利用した真空管アンプの自作用キット(九州は大宰府にあるメーカー、エレ・キット社製)だ。

 「TU−870との出会いとパーツ紹介」、「TU−870の製作」「TU−870の改造(パーツの置換)」と別ページに記載しているが、基本性能が良く、低価格で、真空管の音が楽しめる、という非常にいいキットであるが、実は改造もいろいろできる。

 電子回路上に配置される部品はすべて規格品。だからパーツに関しては、規格が同一であればキットのオリジナル状態から好みのものに置き換えが可能だ。たとえば、コンデンサなら耐圧や容量がキットの設計基準を満たしていれば、別の会社の製品や誤差が高精度の製品と差し替える事が可能なのだ。コンデンサや抵抗などの電子パーツだけでなく、各種端子類も同じだ。RCAジャックやスピーカ端子であれば、形状、材質、など好きなものに置き換えができる。配線材なども同じように、伝送効率の高いOFC線などに入れ替えることができる。



 *製品、準備の様子は TU−870の紹介〜AUDIO(アンプ、スピーカ)
 *製作の様子は     TU−870の製作〜AUDIO(アンプ、スピーカ)

 *失敗の無い改造の様子は    TU−870の改造(各種パーツの置換)

 *関連として TB社製 W3−593SGでのスピーカ自作 のページへ


  に記載している。
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<TU−870を改造する 改造への取り組み>

 キット・オーナーとしては同じ出来上がりの製品(通常の素組みのものと比較して)でも、少しでも効率の良いもの、音質の良いもの、品質の高いもの、使い勝手の良いもの、にしたい訳だ。

 一方にはハイエンド・オーディオの世界がある。そこは投下資本に比例した絶対則が支配している。何を置いても「掛けたコスト」が物をいう。もう少し上のグレード製品や他社の上級マニア向けのキット製品、を選んでしまえば、それで解決。明らかに一ランク上の音が手に入る。それがオーディオの世界です、なのだが、それでは庶民はつまらない。


 「価格がすべて」などという事は、最初から判り切った事ではないか。オーダーやカスタム・メイド品などではなく一般的なメーカ製品であっても、対価を支払えた人だけが圧倒的なクオリティを入手できるのだ。手工業や工芸品や芸術作品ではなく一般消費者向けに流通する「工業製品」なのだから「コスト」と「性能」そして「価格」は比例するのが当たり前なのだ。だけど、私としては・・・。自分の背丈に見合った愉しみを自分の懐具合の中で工夫したい、と思うのだ。それが自作に取り組む姿勢であろう。薄い財布と相談しながら、一寸高いなと迷いながら、小さなパーツを変えていく。ちょっとした工夫が閃いて、それを施してみる。少ない予算のやりくりでそうした努力を繰り返すのは、すべては、原音には遠く及ばなくても「いい音」で再現したいがための努力なのだ。


 諸先輩各位の改造記にある事例も、みな、発端はそういう部分から始まっているのだと思う。先達も、研究を重ねてあれやこれやと工夫を凝らし、それぞれの判断でパーツを置き換えているのだ。

 そうした事例はそれぞれのお気に入りのジャンルの音楽を楽しむ日々の中での工夫の積み重ね、なので、結果をみると良い方向へ向かう事例が実に多い。「交換したら、実は大失敗」という例は、余り聞かない。

 実は、そんな失敗談にこそ興味が尽きないが、「ここをこう変えて、上手くいきました」という話を公開する方が圧倒的に多いのは、やはり人情だろう。さて、私の改造記だ。失敗した部分もあるが、そんな訳でそれはまた後日談としよう。

<入出力の見直し>

 まず、入力端子用のサブ基盤(B基盤)を取り去って、パーツ用の空間を確保する。

 入力用のRCAジャックを単品に付け替えるためだ。そして、空いたニ系統目のコネクター穴にステレオ・ミニ・ジャックをつける。このミニ・ジャックをスイッチ・タイプにして、接続優先切り替えにするのだ。

 ミニ・プラグが挿されている場合はその入力がアンプに無条件に接続され、それが外されていると一系統目のRCA入力が接続されるように配線し、ニ系統の入力をコード接続による自動切換えの仕組みを作ることにする。


用意していたヘッドフォンや入力系統の改造のためのパーツは・・・

 ・入力端子:RCAターミナル(金メッキ品、テフロン絶縁材使用の高品位品;1個260円)
 ・スピーカ出力からヘッドフォン接続用出力端子への、インピーダンス調整用のコンデンサと抵抗

 ・RCAジャックとミニ・ジャックの入力分岐用端子 (オフ・スイッチ付きのステレオ・ミニ・ジャック)
 ・ヘッドフォン接続用端子 (出力信号の分岐用オフ・スイッチ付きのステレオ・ジャック)

入力端子(未装着) ヘッドフォン接続用パーツ(インピーダンス調整用のコンデンサと抵抗)
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ミニプラグ入力端子 ミニ・プラグ入力端子の接続用ピンの配置
端子のオフスイッチターミナル

ミニ・プラグを入れた状態の入力端子 ミニプラグの極性

ミニプラグの極性(書き残してい置かないと、すぐに忘れてしまう。)
ミニ・プラグ入力端子への回線接続

端子のオフスイッチ・ターミナルの接続配線例
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ヘッドフォン端子(未装着) ヘッドフォン端子(装着した上面)

 キット既存品の「入力系統切替のスイッチ」を廃止すると、不要になる切替スイッチのシャーシ穴が開放されるので、ヘッドフォン用のジャックをつけるスペースができる。

 または、後ろで一つ(一系統分;LINE2の入力用)空いているRCAジャックの穴にヘッドフォン・ジャックをつけて、フロント上部は通電インジケータ用の発光体(暗めの発光ダイオードやランプの類)を付ける、という案もある。あるいは、フロントをヘッドフォンやパイロット・ランプとせずに、優先入力のピン・ジャックとする方が利用勝手が良いかもしれない。

 このように「スイッチ付き端子」の利用によって色々のパターンが考えられる。


 今回は用意していたパーツを使って、ヘッドフォン出力のためのスピーカ信号を分岐させる配線、それから入力系統切り替えスイッチを廃止したための新たな配線、を行った。入力は、先に書いたようにミニ・ピン・ジャックの接続優先による2系統とした。
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以下は、 2008.05.31 追記


<ヘッドフォン・ジャックの設置 ステレオ標準プラグ用>

 ヘッドフォン出力を行う場合、スピーカへの出力信号を分岐させる。ヘッドフォンの接続優先、つまり、ヘッドフォンのプラグを挿すとスピーカからは音が出なくなる仕組み、とすると使い勝手がよくなるだろう。

 ステレオ標準プラグ用のジャックを設置する場合、そのままではシャーシ上の穴と口径が合わずにセットできない。注意が必要だ。(3.5mm径のステレオ・ミニ・ジャックならシャーシ径に適合する。)

 また、端子の設置と、スピーカへの出力配線の分岐だけではなく、大切な部分の手当てが必要だ。

 ヘッドフォンへの出力は微小信号で良いので、アンプのスピーカ出力の信号を調整して、ヘッドフォンに適したインピーダンスに落としてやる必要がある。分岐した接続部分に、抵抗とコンデンサ(上に掲載したパーツ)で簡単なゲイン低減の回路を作る必要があるのだ。

ヘッドフォン端子(装着した上面) ヘッドフォン端子
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<ヘッドフォン・ジャックへの接続 インピーダンス調整、ゲイン低減回路>

 スピーカ出力からヘッドフォン接続用の出力端子への接続では簡単な「回路」を作る。

 インピーダンス調整用には、コンデンサと抵抗を利用する。

 ヘッドフォン配線のプラス側に470Ωの抵抗を、その抵抗の手前にマイナス側から0.22μFのフィルムコンデンサと10Ωの抵抗を直列に配線した。この回路はWeb上に掲載されていたものだ。当初、ラグ板などの基盤への配置によるセット化も考えたが、抵抗4個とコンデンサ2個による回路であって、大層なものではない。そこで結局、ヘッッドフォン・ジャック裏面のスイッチ接続ターミナルに直接パーツの足を使ってハンダ付けして済ませることにした。(見た目は、大分悪い状態だ・・・)

 従来のスイッチ用の口径と今回設置したヘッドフォンの口径(標準ピン・ジャック;6.3φ)は異なっていて、シャーシ穴よりジャック側が大きい。そのままではシャーシに設置できない。ヘッドフォン・ジャックとして下記の入力切替に書いたステレオ・ミニ・ジャックのスイッチ付きのものを利用すればシャーシへの手当ては不要となる。

 しかし、ミニ・プラグ用のスイッチ付きのパーツでは、入力からヘッドフォン側への出力配線ターミナル(配線図の4番ピンと8番ピンに相当するもの)が省略されている。入力ターミナル・ピン(2番、6番ピン)とOFFスイッチとなる出力ターミナル・ピン(3番、7番ピン)しかないので、抵抗などの回路を入れることができないのだ。

ヘッドフォン端子への配線とインピーダンス調整

インピーダンス調整用の抵抗とコンデンサを付けた端子部
ヘッドフォン端子への配線とインピーダンス調整

 秋葉原のスイッチ類や端子を扱う店を巡ったが、ミニ・ピンタイプのステレオ・ジャックで標準ピンジャック(ヘッドフォン端子)と同じスイッチ構造のミニ・プラグ用の部品が、どうしても見つからなかった。

 だから、今では余り見かけない昔ながらのヘッドフォンプラグの径にあった大きなジャック(標準ピン仕様)とせざるを得なかったのだ。そのため、「リーマー(金属の穴をえぐるための道具)」でシャーシ穴を繰り広げた。

<試聴の結果>

 スピーカの音のニュアンスとは、また一味違うものがある。

 テスト用の音源として利用したのは、アップルの「iPod NANO」とパナソニックの「SV−SD350V」。「iPod NANO」はその操作性、「SV−SD350V」はメモリーとしてSDカードが利用できてFM放送が受信できる点が気に入っている。

 どちらも、携帯用のメモリー・オーディオ・デバイスで、直接イヤ・フォンで楽しむことができる。だから、スピーカで聞くのでなければ、間にパワー・アンプを介在させて信号を増幅する必要がない。

 最初は、私もそう思っていた。パワー・アンプを通して何もイヤ・フォンやヘッド・フォンで聞く必要は無いではないか、と・・・。


 メモリー・オーディオはEQ(イコライザ)が組み込まれているので、試聴の際には、少し注意が必要だ。たとえば、SV−SD350Vには「リ・マスター」のモードがある。このモードは、デジタル信号への変換で失われた高音の張りや音の艶を、アナログ変換後に取り戻して原音に近付ける、というもの。だから厳密には、少し味付けがされていて、その意味ではごく僅かに癖のある音になっているのだ。

 さて、そんな再生モードも考慮に入れた上での<試聴>であるが、オープン・エアーや密閉のタイプと、取り替えながら聞いてみた。

 デバイスに直結した場合の音と、真空管パワー・アンプを通して増幅された音。これは、まるで印象が違う。なんと言ったらよいのだろうか。それは「まさに激変!」と言っていいだろう。 ソースの密度が高く、音の粒が際立っている、のだ。一音づつに元気がある。上手く表現できないが「音が走っている」という感じなのだ。その活発な音には、荒削りであったり乱暴であったりという嫌味な部分がまったく無い。爽快で健全な活発さ、が溢れているのだ。

 たとえて言えば、味のあるJAZZのライブ・スポットに行き、最初に着いた席で聞いていたが何曲目かでステージ間際の席へ移動した、そんな感じなのだ。周りを取り囲んでいた客席のざわめきや反響音などの喧騒が無くなり、直接、楽器が響いてくる。ウッドベースの弦を這う指のこすれや、スネアドラムをこするワイヤーブラシのささやきやバスドラムの響き、ボーカルのふとした息遣い、などが鮮明に感じ取れるのだ。

<ヘッド・フォン端子設置後の危惧>

 回路は大した物ではなく、単にインピーダンスを調整し、信号のゲインを減衰させただけなのに、絶大な効果が生まれたのには、驚くばかりだ。

 同社のキットには、最初からヘッドフォンへの出力を目的としたパワー・アンプがラインナップされている。これは、近寄ってはいけない「禁断の果実」だ。限定品なので、店頭在庫品しか購入できないのが幸いだ。

 単純な回路で聴いただけでこの状態だとすると、微小信号用に専用設計された真空管アンプを通したら、一体どんなことになってしまうのか。または、そこには何が待っていて、どんな出会いが期待できるのか。多分、着けたイヤ・フォンやヘッド・フォンを外すことが出来なくなってしまうのではないだろうか。
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<出力系統の再設定  (スピーカ・ターミナルへの再配線)>

 出力トランスからスピーカ端子へ接続してあった配線をヘッド・フォン用ジャックの入力ターミナルへ持っていって、ジャックの出力ターミナルからスピーカ端子へ配線する。トランス間は、例によって取り外しの利便性を考慮して4極のコネクターを利用した。

 メイン基盤へのNFB入力となるスピーカ端子からの接続もあわせて変更することにした。キットのマニュアルどおり、スピーカ端子の切片に出力信号線とNFB線をハンダ付けしていたが、それをやめて、別にカシメの圧着端子を利用して再配線した。圧着端子のスピーカ端子への取り付けはナット締めで接続しいつでも取り外せる状態とした。

出力トランスからの内部配線 スピーカ・ターミナル内部配線
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 また、出力トランスからの配線は既存のままだが、接続経路が伸びたし、ヘッド・フォン用ジャックのスイッチが入ったので、多分、信号が減衰しているものと思う。

 そこで、トランス出力からの4極ターミナルから本体前部にあるヘッドフォン・ジャックとの間、そこから本体後部にあるスピーカ・ターミナルとの間、の各配線材はすべてOFC線に切り替えた。線材は一般の信号ケーブルではなく、MONITER社製のスピーカ・ケーブル(ジュニア・ライン)を利用してみた。

メイン基盤へのNFB配線は、キット既存のシールド線のままなので、いずれ切り替える事にしようと考えている。

スピーカ・ターミナル外部 スピーカ・ケーブル、
入力ケーブルを接続した様子

スピーカ・ターミナル(金メッキ バナナ・ジャック)
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<入力系統の再設定  (RCAジャックの交換とミニ・ピン・ジャックの優先入力配置)>

 既存品のRCAジャックが付いたキットのB基盤を取り外し、新たな入力系統を配置した。

 ヘッド・フォン出力のためのジャックを設置するために、入力切替のスイッチを取り外したのだ。本来なら、スイッチなどなくて、ケーブルセレクト(要は配線の組み換え)で入力を切り替えるのが一番だ。その方法なら確実に伝送ロスやスイッチ回路での減衰が防げるからだ。

 では入力が一系統のみでよいか、といえば、折角、LINE2のRCAジャック用の穴が左右二個分も空いているのだから、やはり何とか利用したい。そこで、先にも書いたが、スイッチ形式のミニ・ピン・ジャックを付けることにした。この設置で、入出力系統の組み換えは当初検討したとおりになる。ミニ・プラグを挿せば、その入力が優先されてスイッチ操作無しで切り替わる、というものだ。ヘッドフォンを挿せばスピーカから音が消えて、ヘッドフォンのみから音が聞こえるという仕組みと同じだ。

RCA端子(内部配線) 再設置したRCA端子と新たに設置したピン・ジャック
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 ステレオ・ミニ・ジャックのターミナルを観察すると、プラグが刺さっていない状態ではスイッチ片の接地面積が面接触なので普通のスイッチよりも広く、伝送ロスが少なそうに見える。信号経路としては、あまりスイッチが介在しているという事を意識しなくても良さそうだ。B基盤で利用していたRCAジャックは何ら問題は無かったが、ローコスト品であり、なんとなく今ひとつの感じがするものだったが、新たに設置したものは金メッキが輝く高品位(金メッキ+テフロン絶縁材使用)なものだ。

 メイン基盤から入力切替スイッチへの配線が無くなり、信号経路は少し短くなった。メイン基盤からピン・ジャックへの配線、ピン・ジャックからすぐ横のRCAジャックへの信号配線材を出力側と同様にOFC線に切り替えた。ミニ・ジャックのスイッチ端子が追加されたことによる伝送ロスは、これで十分に補えるものと思う。(スイッチ付きピン・ジャックにもう少しいいものがあれば、さらに気分がよいのだが・・・)

RCA入力端子と分岐となるミニ・ピン端子(内部配線) RCA入力との切り替えに利用。

ステレオ・ミニ・ジャックは形状が小さい。


スイッチ・ターミナルへのハンダ付けはタイトな作業だ。
こて先の熱でプラスチックが溶けてしまった。
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