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オーディオ : 月刊STEREO誌 付録 LXU-OT2
STEREO誌の付録 ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC <LXU−OT2>を手当てする

<LUXMAN ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC <LXU−OT2>を手当てする (2013.01.26)>


 月刊のオーディオ専門誌「STEREO」に今年(2013年)の正月も実に嬉しい付録が付いた。ヘッド・フォンアンプ付きのUSB−DACの音声(オーディオ)ボードである。

 その剥き身の基板ままの状態で、動作確認(パソコンの通電、ボードの認識化、ソフトでの再生)と回路のエージング(のんびり行こうよ: <月刊STEREO付録 「LXU-OT2」を聴く>)が一通り済んだ。

 さらにそこからエージング作業を兼ねた聴きこみを続けつつ、合わせて、世間の喧騒の様子なども小まめにチェックした。

 Web上で多くの症例として報告されているノイズの発振現象は私の所有する物件では発生していないので、放っておいても構わない。だが、紹介された多くのノイズ対策には見るべき点も多くあって、そうした紹介事例の要否の判断や、あるいは対応必須の項目の有無など、眼に留まった点をひとつづつ確認(のんびり行こうよ: <月刊STEREO付録 「LXU-OT2」を確認する>)したのだった。

 聴き込んで見ると、そのボードでのオーディオ再生は素敵な再現性を持っていて、実に驚く内容のものだった。試聴した結果の音質や再現性は実に良好なもので、この状態であれば基板上に実装された回路に対して、敢えて何事かをいじる必要はないな、と思われるものだった。

 ボードで過ごした最初のひと月は、およそそんな状況で過ぎていったのだった。そのようにして情報と取り組んで過ごすうちに、薄曇りの空模様の中でも晴れ間が覗いてくる様に、やっとモヤッとした気分もスッキリしたものに変わって来たようだ。そこで今回はいよいよ、1月号の14ページに渡る特集誌面で紹介されていた「お手入れ」の数項目の対応を進めていくことにした。


 関連ページ;

  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を聴く>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を確認する>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を改造する>

  ・のんびり行こうよ: <TA1101Bボードで「LXU-OT2」を拡張する>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を収納する> 新規更新のページあり
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」で応募する> 新規更新のページあり

特別付録が付く2013年1月号

記念すべき、2013年1月号   定価は2800円。

「フル活用マニュアル」として特別付録の特集記事が14ページに渡って展開されている。
特別付録の特集記事(14ページ分)
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 雑誌付録のボードはパソコン用のオーディオボードで、私はその小さな基板を、今となってはもうすっかり据え置き状態に成り果てているノート・パソコンへ接続して利用している。

 据え置き版のパソコン(のんびり行こうよ: <HDオーディオという潮流>)はオーディオに特化した機能を持っていて、格段に優れた性能であると思われるDAC機能とアナログ信号処理の回路を基板を装備している。そのため、そのパソコンやリビングに置いてある他のパソコンなどでは、今回のボードを利用する予定はない。だからこのボードはもっぱらHP社製のノート・パソコン専用の装備になりつつある。


<改造の方針 について>

 話が飛んで恐縮なのだが、遥かなその昔のことになる。

 それは私がまだ中学生の純粋な美少年だった頃(いや、高校生になったばかりの頃だったか・・)のことだ。当時、確か夜の遅い時間(洋画劇場のあいだなどが多かったような気がする)が多かったと思うが、テレビで見慣れたサントリー・ウイスキーのコマーシャルがあった。

 そのコマーシャルで流されるナレーションは「何も足さない、何も引かない」という静かな語りで始まるもの。コピーは今は亡きかの巨匠、開高健 氏か、はたまた山口瞳 先生によるものか・・。

 優秀な素材に対しての、それが臨むべき私達の謙虚な姿勢というものだろう。そんな採るべき態度といったものを少年の頃の小さな頭の中にしっかりと刷り込まれ、重い言葉として定着されたのだった。

 でもそう思う一方で、そのコマーシャルの対象としたウイスキーの銘柄 ―ピュアモルトの「山崎」だったかな、と思う― のような入魂の代物というわけではないのだから、基板に対してなんらかの足し算や引き算をしたところで充分に許されよう、とも思うのだ。

ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC LXU−OT2 <LXU−OT2>


ヘッド・フォンアンプ付き
USB−DAC

パソコン用の
USBオーディオボード。

 丹精込めて醸造させたシングルモルトの高級ウイスキーと同様に、このボードにも随所にクラフトマン・シップが充分に注ぎ込まれたのだと想像はするが・・・。なにせ、雑誌の企画自体がそうした楽しみ方を推奨しているのだから、多分手を加える行為もきっとお許し頂けるもの、と思っている。

 と、言うわけで、今回はあの優秀なボード「LXU−OT2」に対していくつかの点で手を加えてみる。でも、基本としては回路設計をした老舗オーディオ・メーカーのLUXMANが意図したカラーからは外れないような機能追加だけを行うつもりだ。

 つまり、電源系の回路や各種インターフェイスは別として、音声回路上の抵抗やコンデンサーの規定値は変えない。要は音の回路として吟味され設計され実装された内容は決して変更しない、という基本方針で行くという事になる。

 まあ、回路そのものまでをも変更しようにも、私にはそうした知識が欠落している。残念な事にはそこまで突っ込んだ改造など、もとから「行うすべ」を持っていないのだった。
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PCM2704 チップ <異常な発振音の対策>

ノイズが発生している、とされるのは、この電源系の回路が原因だ。

根本から排除するためには、5VのUSB供給電源から3端子レギュレータで作成している3.3Vの降圧回路はともかくとして、他の昇圧回路して作っている電源を外部から投入すればよい。

DACチップ動作用の5Vをバス・パワーから変更して安定した外部供給とし、あわせて既存の回路で3.3Vを作る。

そしてさらにオペアンプ動作用の6Vと12Vも外部から投入するという作戦。


そうすれば、ノイズ発生経路の利用を停めることが出来る。

<U4>の6Vへの昇圧系と12Vへの昇圧系を中心としたごっそりしたパーツがすべて不要となってしまうので、少しもったいなくはあるのだが・・・。

 Web上で報告されている「ノイズ」や「異常な発信音」に関しては、すでに数々の検証が熱心に行なわれて原因が深く究明され、有効な対策が立てられている。

 そして、その「実験的な対処」と思われていた内容の多くが追確認され、「有効な対策」であり、本当に「効果的なのだという確信」というレベルにまで、今では変わってきている。多くの有能な先達の尽力のお陰である。

 彼らは、基板面上に実装された<C11>のチップコンデンサーがその対策の主要な対象だ、という点を指摘している。この規定値を下げる(”220pF”程度のより小さな値を持つコンデンサーに交換する)と<U3>電源系回路上のノイズ発振周波数が上がるのだという。

*交換する事によって回路上の異音周波数(発振周波数)が従来の可聴帯域から、例えば90KHzほどに移動するのだということ。


 そのパーツ交換の結果として、盛大に聴こえていた発振音が私達の(・・いや、若者達の)可聴帯域から外れるのだという。

 しかしながら、利用者サイドに「老人力」という大きなフォースが備わっていれば、すでに存在する発振音などは実際には取るに足らない小さな存在に過ぎないだろう。

 私にその高音が聴き取れないのと同様に、その気になる音は多分、もうすでに偉大なフォース具有者の可聴帯域の遥か外れたところにあるはずなのだから。
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<改造 その1 :ノイズ対策  ― コンデンサーの交換(容量)とパーツ・基板のシールド化>

 電源系での話題が沸騰中だ。

 しかし、私のボードでは異音は発振されていないし、ノイズもさほどのものとは感じていない。どだい、その異常音は私の可聴帯域外の可能性が強い。だから、ここは一番、ゆったりとした姿勢で臨んで、ちょっとした「改修」を施そうと思っている。

 懸念を持たれている<L1>インダクターの遮蔽処理、基板(水晶発振子の裏)面の遮蔽処理、ボディアースの設置など、構造的な土台をまずは足固めしていく方針だ。

シールド済みのボード シールド済みのボード
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話題の<L1>インダクターと<C3>コンデンサーが表現された回路図


L1のインダクターは特に問題発生の対象物件らしいので、
本来ここはケース付きの遮蔽タイプのパーツへ変更したいところだ。
L1インダクター

<U3>のIC、その横に並ぶ<L1>インダクターと<C3>電解コンデンサーのペアと<D1>のダイオードが基板上の左した隅に見て取れる。

 勿論、パーツ自身はノイズを発生しているわけではないが、ノイズ発生の仕組みとなる定数で設定されている<C11>の小さな基盤面実装チップは、その容量を220pFのコンデンサーへと置き換えることにする。

 私にはターゲットのノイズ音が聴こえないとはいえ、その成分が再生音(楽曲や音声)の各周波数に混入して倍音に影響を与えるのだとすれば、それは音楽の余韻や響き具合に現れるはずだ。勿論、その作用は悪い方向に向かってのものだろう。

 その実在している高周波のノイズは作成者(回路設計者)の意図した内容では本来なかろうから、当然の対応としてしっかりと排除しておくべきものと思うのだ。
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 <C11>のコンデンサーは交換することにしているが、相手は交換を主眼において企画・配置されたリードつきのパーツではなく固着された基板面実装チップなので、実は交換に踏み切るには勇気がいる。

 パーツを取った基板面には、新たなパーツのリードが入るべき、ホールがないからだ。うまく新しいコンデンサー(ラジアル型など)をつけられるか、どうか。

 新しく付け替えるコンデンサーは200pFの容量なので、極めて小さいもの。そのためにパーツを取り付けるエリア的には大丈夫なのだが、巧く半田付け出来ない場合も考えられて、ちょっと躊躇してしまうのだ。

シールド素材

インダクター遮蔽のための素材
シールド素材

まずは「熱収縮チュー」を利用し、
インダクターに巻かれた剥き出しのコイル表面を絶縁する。
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シールド素材で<L1>インダクターを巻く
シールド素材で<L1>インダクターを巻く
シールド素材で<L1>インダクターを巻く

 有効なノイズ対策としては、<L1>のインダクターの本体のコイル部分をアルミ板を絶縁加工したものでしっかりと覆ってしまうというもの。そでだけでも充分に効果がある、という事がWeb上で紹介されていた。そこでは「異常な発振音が消えた」という話(本当だろうか?)まであがっていた。

 そこでまずはコンデンサーを交換するまでの間、ノイズ低減策として<L1>インダクターの遮蔽化などで対応する事にした。シールド化は上で書いたようにWeb上では効果がすでに検証されているので、恒久的な措置として施すものになる。

 インダクターの外周を金属板で取り囲むわけだが、そのためにはまずパーツの筐体を絶縁しなければいけない。ちょうど、あつらえた様な口径の「熱収縮チューブ」が手元にある。これで、コイル部分を覆ってやれば良いだろう。(熱収縮チューブはパーツのリードや線芯を保護する際に利用する絶縁材)

 そして2重に取り巻いてパーツ表面(抜き出しになったコイル面)の絶縁が出来たら、今度は、その周囲を金属板で取り囲む。私が使ったのはユニクロ素材の金属板だ。遮蔽効果を考えると、亜鉛めっきの板や鉛板(釣りで使う「板錘」が丁度良いだろう)、銅板などのほうが適しているかもしれない。

 そして、さらにウイスキーのボトルキャップを取った後に残る「帯」状の金属板で、巻き終えた金属板の周囲に、さらに取り巻いて被せる事にした。丁度、黒い艶ありでペイントがされているから見た目もさほど悪くない状態で仕上がる。

 こうして「効果的だ」と紹介された説を採って、パワー・インダクターを金属板のシールドで一応は遮蔽したのだが、改めてその効果を調べてみた。その結果、コイルパーツ製造の大手「SAGAMI」の技術資料がネット上で公開されていたのを見つけたので紹介しておこう。
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シールド素材(アルミ)のシャーシに収納する。天地を逆転させて、ケースとして利用する。

シールド素材(アルミ)のケースに収納
シールド素材(アルミ)のケースに収納

 その明解な資料(本当に判りやすいので、皆さんにも読んでみることをお勧めする)によると「パワーインダクターで金属ケースを使用しないのは、開磁路インダクタの場合はシールド効果に対して電気特性の性能低下が激しいこと、また閉磁路インダクタの場合はコスト増加の割りにシールドの効果が少ないからです」と書かれていた。
 (「電磁シールドの効果」:<コイルを使う人のための話 第一部>  サガミ エレク株式会社 技術統括部 PDF資料 より抜粋)

 「LXU−OT2」で使っている<L1><L2>のタイプの開放型の(パワー)インダクタを鉄・銅・アルミなどの金属素材でシールドをしたパーツ自身に関して、開磁路の場合に性能低下が見られた事や、あるいは閉磁路では性能向上がそれほどもたらされなかったという事が記載されており、ちょっと残念な結果になっている。

 大手専門メーカによる上記資料に記載された性能検査の実験では、リン青銅の板材を利用してシールドし、シールドなしのものと比較して性能の検査がされている。こちらは係数化したグラフなども掲載されている第一級の(技術)資料なので、内容はすこぶる信頼できるものだ。

 実施の状況だが、インダクターに対してシールドを施した私のボードでは「ノイズ解消」を確認出来ていない。もともと高周波の発振音が発生していないために、それがシールドの効果で解消されるものかどうかがわからないのだ。

 パワー・インダクターへのシールド化処理は、気持ちの整理みたいなもので、実のところはそれほど劇的な効果といったものはなさそうである。勿論、僅かな手間で済む処置なので、シールドした方がいいに決まっている。

 なぜかといえば、オペアンプのOPA2134PAでのシールド有無はそれほど再生音の変化はなかったけれど、それがデフォルトのNJM4558Dだと違ってきたからだ。NJM4558Dを付けた状態でインダクターをシールドした場合、一段再生音が鮮やかに変わったのだ。私の貧弱な耳でも、ハイハットの音や後ろで響くドラムのスネアのこすれた僅かな音などがはっきりと聴こえる様に変わることが、確認できたのだ。

 特定のオペアンプにおいては現状のパーツ状態の影響を受けるようだ。その再生音の変化がノイズ発生の有無(つまりシールドによる抑制作用)によるものか、何が影響したのかは明確には判らない。確認したオペアンプの違いはアンプ内回路での増幅手法の相違であり、それは4558Dの方が電流増幅型だ、という点にある。これが2134PAだと「完全なFET入力段」となっている。だから2134PAでは回路の仕組み上、前段からの電流の流れの影響を受けない。これだから、オーディオは判らないな、と思う。

 4558Dを使っている際には前段での電流の影響を大きく受けてしまっていた、という意味になる。そこでシールドによって信号上からノイズが消えると、それが綺麗な流れに変わったことになって、結果として高音域での再現性が高くなった、ということが発生したようなのだ。本当だろうか・・。
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 ヘッド・フォン出力の音量調整用の2連ボリューム(Aカーブ;20KΩ)。

 これはこれで小型で非常に良いのだが、しかしこのボリューム・パーツのボディ・パネルが基板上でアースされていない。

 実は、ボリュームのアースの有無(アンプなどでは、通常はアースを採る)もノイズに関係するポイントだ。だから、ボリュームのノブ周りの金属部分(本体パネル)に半田付けで一本のケーブルを結線して、それをアースに接続させる。そうやってボリュームのボディアースを採るつもりだ。なお、このボードではUSBポート(Bタイプのメス側端子)の金属筐体面が基板上へ半田付けされて固定されている。随分と大きな半田箇所なので、ここを基板裏面上のアースポイントに利用出来るものと思う。


 ところで、この2連ボリュームで扱っている信号はアナログ回路。しかもヘッド・フォン出力の音声信号に直結しているものだ。

 その信号はヘッド・フォン専用のオペアンプのラインから供給されるのだが、しかしそのオペアンプの入力はRCA出力用のライン信号(ライン出力のオペアンプ増幅後の出力信号)の出力箇所から分岐しているので、ヘッド・フォン側で発生したノイズ(パーツが拾ってしまったノイズ)がライン出力の信号回路上まで遡って、そこに混入する可能性がある。

 その点に一抹の危惧があるといえようか。

 はやりここに関してはアースを採るように改修するべきだろう。改修といっても大層な内容ではない。それは単に既存部位を利用して結線するだけなのだ。細いリード線一本の半田付け作業という、実に簡単な手当てで済んでしまうものだ。

ボリューム本体のアース化

ボリュームのアースの有無もノイズに関係するポイントだろう。
アースのポイント
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 ネット上で紹介されていたのは、基板上の「水晶発振子」の裏の部分、この周囲をシールドすると効果的だという。

 その位置に大きさを合わせた金属板を張るわけだが、勿論そのまま張ってしまっては導電体であるシールド板で回路がショートしてしまう。だからそこは遮蔽板をテープ等でしっかりと絶縁し、その後に基板裏面へ貼り付けなければいけない。まあ、当たり前のはなし・・・。

 先に、<L1>インダクターのシールドの部分で使ったのは「ユニクロ板」と書いたが、ここで利用するのはその材料の残り。ケース内のコード類を留めておくための金具がその正体、「ワイヤー・スティッカー」という製品名の電線支持用のパーツである。留めになる爪の部分の大きさがインダクターを覆うのに丁度良いが、ケースに貼り付ける土台のプレート部分を2枚つかうと、今度は基板裏のシールドする面積に丁度良い。

 しかも、そのプレートには厚手の両面テープがついているので、至極便利に基板裏面へ付けられる。

ノイズ対策のシールド位置

<ノイズ対策となる基板裏面のシールド板の添付位置>

水晶発振子の裏面基板を遮蔽することで、ノイズ発生(あるいは輻射)を対策できるということだ。

丁度、写真の中央部に2個の半田があるが、その辺り一体を金属板によってシールドするのが最大の効果ポイントだ、という。
シールド素材を基板の裏面の規定位置へ添付する。

シールド素材を添付する
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<改造 その2 :電源系の強化  ― 外部供給電源の投入と自動選択化>

 電源系の強化を行う。

 このボードはUSBケーブルからのUSBバス・パワーの5Vだけで動作する設計となっている。だから、敢えて外部からの別電源の投入は不要なのだが、USB接続とは別に5Vの外部電源を受けるようにDCジャックを設置することにする。

 ちなみに「DCジャック」の中には、電源アダプターからのDCコネクターが挿される事で切片の接続と切断をおこなうという、ON/OFFのスイッチ機能を持つタイプ(標準DCジャックのMJ−14などではなくMJ−10という型番の製品;「マル信無線電気」製)がある。そのジャックを使えば外部投入動作によって通電を制御できるので、接続を工夫すれば排他的に制御が出来る。

 バス・パワーか外部電源かという事が自動で切り替わるようになり、電源アダプターからのDCコネクターが接続されている場合はバスパワーを遮蔽するような仕組みが達成できるのだ。今回は一応その辺りのパーツの利用を考慮しておくつもりだ。

電源系の電圧増幅回路 <電源系の電圧増幅回路>

このエリアの一連の回路で、バス・パワーの5Vを受けて加工している。

増幅側は<U3>のICを使って5Vを昇圧して、新しく6Vと12Vを作っている。オペアンプの動作供給用に6Vと12Vをと供給するためだ。


なお、この写真の範囲外だが、写真の上側にあるのが3端子レギュレータ。そこではバスパワーで受けとった5Vを3.3Vへと降圧している。

3.3VはDACチップ(PCM2704)の動作に必要な電源である。
前段の<U4>のICを使った回路でさらに3.3Vを安定化している。
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<改造 その3 :電源系の強化  ― コンデンサーの交換(耐圧、容量)>

 外部からの5V投入化だけでなく、内部で作成する電源系の強化も行う。

 対応として扱うのは<C18>、<C33>の2個の電解コンデンサー。

 USBジャック横(USBバスパワーによる電源の投入口)に隣接するそれらの電解コンデンサーは耐圧を50Vへ上げ、容量も10μFから100μFへ変更するのがよいように思われる。

 しかし、鬼門パーツとして評判を呼んでいる<C3>の電解コンデンサーに関しては、そのままとしておくほうが良さそうだ。

 <C4>の12V電源用の電解コンデンサーは後に触れるが耐圧を50Vへ上げて、さらに容量を現状の100から220μFへ切り替える。(この措置だけは、オペアンプへの電圧上昇策として誌面で紹介されていた。)


 ライン出力増幅用のオペアンプの直近(左端)に置かれた<C7>の電解コンデンサー。これは6Vの電源供給の安定化に対するものだが、これも耐圧は25Vのままでよいが、22μFの容量を100程度に増量させたほうが良いように想われるが、どうだろう。

 特に雑誌では触れられていなかったが、電源系の電解コンデンサー(USB端子からの5Vと、降圧した後の3.3V用や昇圧した6Vや12V用など)を変えて容量を増加させれば、それもまた低音の厚みや音の余韻や余裕に関係してくるはずだ、と考えている。

 誌面にあった信号系回路の電解コンデンサーのパーツ変更は勿論のこと、電源供給系への改造も必ず良い結果となって現れるのではなかろうか。

 なお、ライン出力増幅回路側の電解コンデンサーの強化(高品位のオーディオ用パーツへ交換)に関しては、<改造の「その5」>で実施している。

12Vのオペアンプ供給の改造

オペアンプへの12V。この供給電圧を上げてみようと思っている。
<R30>の抵抗値を合成(4.3KΩを並列化)して変更し、
<C4>の耐圧を16Vから25Vや50Vへ変更する。

すると、12Vのオペアンプへの供給電源のボルト数を高めることが可能だという。

これは誌面で紹介されていた<U3>回路での正統派の改造手法。


動作仕様を調べてみると、オペアンプの対応量は2V−22V程度で動作するようになっている。

だから、従来のままでも問題ないはずなのだけれど、誌面に記載されていた「電源強化」策でのインプレッション内容が気に掛かる。

ああまで書かれると、ちょっと試しに改造して音の変化を味わいたくなってしまうではないか。
コンデンサーの上げた耐圧はそのままでも良し、並列に半田した抵抗を分離してしまえば、すぐ元に戻せるのだから。
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 <C18>、<C33>、そして<C4>と<C7>のそれぞれの電解コンデンサーの交換を行うことで「PCM2704(DAC回路搭載のLSIチップ)」と後段アナログ回路の増幅を担う2個のオペアンプへの供給の安定性を図るとともに、さらにオペアンプの動作を強化するのがその狙いだ。

 オペアンプICを動作させる6Vが安定し、12Vの回路をドライブしている電圧が高くなって、それを受けるチップ側にはオーバードライブが掛かる事になる。その結果、動作能率の向上が見込めるものだ。

 オペアンプといえば<C30>及び<C37>の 容量47μFの2つの電解コンデンサーも替えたいところだが、これはアンプ回路のバイアス電流供給安定化用のようなので、そのまま放置しておいて、今回はあらためた交換をしないことにする。

L2インダクターとC4電解コンデンサー

<L2>インダクター、<C4>電解コンデンサーのペア
電圧増幅回路

写真には、12Vを嵩上げする為の、懸案の<R30>抵抗が見える。
基板面実装のチップ抵抗だ。

C4の耐圧(50V化)の切り替えと共にこれを変更して12Vの
オペアンプへの供給電圧を切り替える。
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<改造 その4 :ボードの固体差への対応  ― 実装抵抗の切り替え補助ピンの設置>

 手持ちの3枚中の1枚の付録ボードに関しては未だ確認していない状態だが、実は2枚あるボードの基板に実装されたパーツには違いがあった。

 ヘッド・フォン出力用のペア(右Chと左Ch用の2個)のカーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)のカバーの色(抵抗値を示すカラーコードではなく、その背景色:全体色)が相違していたのだ。外見だけでなく内容を比べると、両者の再現する音には透明感の違いがあるように感じられた。

 背景色(全体のボディー・カラー)で言うと青い着色の抵抗が実装された基盤の方が、私には好もしく感じられたのだが、どうだろう。緑色の抵抗が付いたボードと切り替えて比較するとほんの少しだけだが確かな差があるようなのだ。しかし、改めて直ぐに切り替えて聴かないと気が付かないようなレベルの相違といえて、素の状態で聴いてどちらのボードの音かを言い当てるのは難しかろうと思われる。言っているのは、その程度の差である。

 そういった試聴で得た、音の感触や再現性などについて、また機器を変えての比較、さらにボード上に実装されたいくつかのパーツの違いによる音の印象、などの諸点については先のページの「LXU−OT2を聴く」や「LXU−OT2を確認する」で詳細に触れているのでご参照願いたい。

青抵抗のボード

2枚のボード上のカーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)
ヘッド・フォンジャックとLEDの間にある抵抗のパーツ色に着目
緑抵抗のボード

2枚のボードで、青と緑の相違した皮膜色になっている
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抵抗の基板PIN仕立て 基板ピンを使って、
簡単に置き換えを可能とする仕立て。

抵抗の足は半田付けしていない状態だが、基板ピンのソケットによって固定される。

リード式の抵抗パーツなので、こうした仕立てが可能になる。
チップ式の抵抗(基板面実装タイプ)を選定しない、
企画者の周到さと先見の明に、脱帽してしまう。

 DAC回路LSIの「PCM2704」の交換や電源系の2つのICの交換などは、いずれも基板面に直接半田付けされているので、私などにとってはそのままでは手が出せない。けれどヘッド・フォン用の33Ω抵抗の<R8>と<R10>の2本のリードタイプのパーツに関しては大丈夫。相手が2本足であり他のパーツに比べれば格段に熱に強いものなので、思い切った交換など、基板から抜き去るような新たな手当てが可能だろう。

 半田ごてで熱して抵抗が付けられた基板上の半田部分を溶解させ、抵抗を一旦基板面から抜く。そして新しい抵抗を選んで再度それを半田付けすればよい。カーボン皮膜の33Ωの抵抗が付いているが、それを金属皮膜のものや他のものに変更すればよいであろう。

 しかし、そうすると一回あたりの変更に結構な手数がかかるし、それを繰り返すと基板上のランド(半田を盛る基板面の切片)や信号経路となる銅箔のラインなどをはがしてしまうこともありうる。だから今回はそれを回避するために、抵抗の通電部分(足元)を基板ピンへ仕様変更することにしたのだった。そういう具合にピン用のソケットで手当てしておけば、頻繁に取り替えるか否かは別として、半田ごてを介在した作業抜きでいつでも簡単に抵抗が抜き差しできるように変えられるからだ。
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抵抗の基板PIN仕立て 抵抗の基板PIN仕立て

 まあ、誌面で書かれているように抵抗を替えると本当に音が変わるのかどうか、随分と怪しい話だという気がするし、実は私は半信半疑でいる状態だ。

 だから、そういった事象(音の明確な変化)が本当に起こるのかどうかを実地で検証(確認)してみたい、というのがその仕立てへ変更する本音のところ。なぜなら、電解コンデンサーの置換では確実に音が変化するし、まさかとは思ったが、誌面に書かれていたとおりUSBケーブルを付録に添付されていたものに変えたら、確かに音質が変化したからだ。

 そのUSBケーブルの体験は正しく「眼からうろこ」といったもので、随分と驚いた。その新経験(初体験)からすると、100本で100円程度のカーボン皮膜の製品をメタルグラッドの1本で100円近くする製品に買い替えて接続し、再生音の違いを確かめる価値は充分にあるかも知れない、と想像されるのだ。

 何せ、炭素皮膜(カーボン)と金属皮膜(メタル)では製品コストがかなり違うだろうし、販売される値段だって数十倍以上も違うのだ。勿論、性能誤差も違っている。だからひょっとすると、その切り替えは途轍もない音の透明感の違いをもたらすものなのかもしれないではないか。

 その差がはっきりと瞬時に判るほどの如実な変化があれば、実に嬉しいと思うのだ。
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<改造 その5 :アナログ信号系の対応  ― コンデンサーの交換(耐圧や種別 の変更)>

 「不具合の封じ込め」のための改修や改造、あるいは回路変更による高性能化への取り組みといった方向ではないもの。そういうものではなく、「企画者が意図した本来の楽しみ方は?」といえば以下のような内容になるだろうか。

 改造は自己責任なのだから何をやってもかまわないが、どうせならいい方へ向かっての変化をもたらすモノとして手を加えたい。

 そうした最右翼は、オペアンプの変更だろう。これなら半田作業は不要だ。しかし、そうではなくてもう一歩踏み込んだ達成感のある手当ての種類がある。それが、すでに「STEREO」誌面で紹介されているような「アナログ再生系に利用されている電解コンデンサーの交換」なのだと思っている。

 音声ラインでの電解コンデンサーの変更は劇的に音が変化し、改修した喜びもひとしお、という顕著な改造例となるだろう。

 しかも私の少ない経験からでさえも、アナログ信号回路の電解コンデンサーを「オーディオ製品」として流通する製品へ置き換えれば、確実に音質が変化することは明確なのだ。

 さて、そうした訳で、変更の対象となる電解コンデンサーに関して、もう一度ここで確認しておこう。

 この設計ではRCA端子によるライン用出力と直接楽しめるヘッド・フォン出力とでは、その増幅回路が別立ての2段構成になっている。その一連の回路はそれぞれの構成(ライン、ヘッド・フォン)で4個の電解コンデンサーで設計されている。右Chと左ChのSTEREO各チャンネル用の両系統で分かれていて、アンプ入力(前段)と出力(後段)の各2個づつというもの。

 そうしたペア・セットが使われている。音の質を変えるためにはそれらの電解コンデンサーをオーディオ用として開発され、改修を加え続けられて安定した性能を持っている高品位の製品(音声回路、音楽再生のための専用品)へ交換する、というわけだ。

美しく仕上げられたLXU−OT2のボード実装 美しく仕上げられた<LXU−OT2>の様子

ボリュームの左にみえるのは12V用の電源供給のための電解コンデンサー。

そしてボリューム後方にはアナログ音声用の信号を扱う電解コンデンサー群が林立する。



両方のコンデンサーが同一グレード(普及品)の製品だ。

勿論、
回路上の使用部位によってその耐圧には
16Vや25V耐用といった性能の違いがある。

(なお、50Vのシリーズはこのボードに使われていないようだ)
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 ライン出力用とヘッド・フォン出力用のふたつのオペアンプへの安定した電源供給や、音声信号用の電解コンデンサー群が基板上に並ぶ。今回の改造(パーツ変更)の中心点は言うまでもなくここにある。

 構成される回路ブロックはライン出力用とヘッド・フォン出力用、ステレオ音声それぞれのチャンネル分のアンプへの入力段と出力段があり、それぞれ容量が異なっている。さらに、音声信号が通る経路ではなく、アンプ動作用の12V電源供給の安定化のための電流経路用のコンデンサーも設置されている。

 そうした多くの電解コンデンサーそれぞれが基板面のスペースの関係で適宣な場所に配置されていて、右と左のチャンネルの区別や入り口と出口といった経路の位置でそれぞれシンメトリー化されている訳ではない。まるでその様は、昔やっていた「新婚さんいらっしゃい」にあった「パネルの神経衰弱」ゲームのようにまったく配置としてばらばらな状態だ。多様オーディオ用の基板で見られる様な機能美さえ感じさせるような安定したシンメトリー配置といった状況にはなっていない。

 だから、コンデンサーを新たなものへと置換する際には、その対象とするパーツ番号を回路図で把握し、その上で基板上の位置をさらに充分に確認する必要がある。パーツの識別番号は、種別1桁+種別内での連番(最大)2桁の組で3桁(あるいは低連番のものは2桁)の英数字として表現される。すべてのパーツに関してそのID番号が基板面にシルク印刷されている。だから、回路図との相互参照などの確認自体は容易なものだろう。

 整列した状態でない様を見ると、この辺りがコストの表れだろうと感じられてくる。メーカーによる流通商品の高級ボードと端的に異なるところだろうと思う。

 なお、先に書いたように音声信号用の電解コンデンサーはライン出力用とヘッド・フォン出力用で2回路ある。それぞれ右と左の2チャンネル分に関してセットが組まれているので、各Ch分の対応は必ずバランスさせる必要がある。でないと、STEREO再生での音像定位が狂ってしまうだろう。パーツ番号と容量のダブルチェックの確認が必要という理由は、ここにある。

電解コンデンサー群

実は、ペアリングされるべきコンデンサーの配置は、随分とランダムに行われている。
敢えてシンメトリに配置しない事でパーツ間の干渉発生を防ぎ、チャンネルセパレーションを高めてるために工夫した、ということなのだろうか・・。

多分、そうした明確な意図があるに違いない。


もし、基板上に大きなロゴを入れるエリアの確保のためだとしたら、もう少し何とかならなかったか・・

とほんの少しだけ残念に思っている。
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 ライン出力側は、右Ch用の<C31,C38>と左Ch用の<C88,C39>の組で、ヘッド・フォン出力側は、右Ch用の<C21,C32>と左Ch用の<C16,C45> のそれぞれのペアとなってコンデンサーが司っている。

最初の(C31,C88)がオライン出力信号用ペアンプの入力段、後ろがアンプ出力後の信号を賄っている。そしてヘッド・フォン側は最初の(C21,C16)がオペアンプ入力前段で、後ろがアンプ出力後となるものだ。くどくなるが、これを意識して交換しなければならない。

 なお、「STEREO」誌面に掲載された回路図を確認してみると、ヘッド・フォン側の信号入力経路はUSB−DACの集積回路”PCM2704”のアナログ出力ラインに直結しているのではなく、ボード上のライン出力用アンプ回路の出力最終位置(外部機器への接続口となるRCAジャック最終位置にある抵抗の手前)から分岐して、その入力に接続されている。

 だからヘッド・フォン出力の音質や諸々のもの(入力となる音の要素)は、その入力信号経路の前段に位置するライン出力回路の最終結果を引き継いでいるし、明らかにその影響を受ける形になっている、といえよう。このため、ヘッド・フォン出力回路部分を手直しする場合には、そこだけに手を加えてても不充分といえよう。

電解コンデンサー群

ライン出力増幅回路側の電解コンデンサー
4個の内容は右Ch用の<C31,C38>と左Ch用の<C88,C39>で、それを強化する。
高品位・高性能の
オーディオ用パーツへ
交換する。

ニチコン製の高グレード品で、MUSEシリーズ。

素晴らしい再現性を持つ状態に保てる、オーディオ基板の定番だ。
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<改造 その6 :ケースの手当て  ― ケースの選定>

 さて、ますはケースの選択だ。

 このボードの基板面の平面サイズは、言ってみれば「名刺サイズ」。全体で見れば横長の立方体になっていて、横幅95mm*奥行き54mm*高さ20mmといったサイズのものだ。 (なお、この数値にはボリュームのシャフトやRCAのジャックなど、各種パーツの出っ張り部分はこの計測サイズに含んでいない。)

 試してみるとよいが、薄型の名刺ケース(名刺が印刷鵜されてパッキングされてくるプラスチック製のあれ)などはこの基板のために作ったのではと思われるほどのサイズであって、まさにジャストフィットする。

 しかし、名刺ケースではその板厚が薄いしようだし、メーカのロゴが表面(上面)あったりするので不具合なものといえよう。しかも、大抵入れられて手元に来るそのケースは「乳白色」のものだし、中途半端に透けていたりして外見はパッとしない。

 まあ、小さくまとめるのなら、名刺サイズで粋にデザインされた外国製の文房具などが置かれた店(銀座の伊東屋など)を確認してみるといいかもしれない。そうまでしなくても、ロフトやMUJIあたりで物色して気に入るサイズの小粋なケース状のものを探し当てれば随分いい収納状態となるのでは、と考えている。

ケースへの設定(レイアウト中) LEAD社のアルミ製
<実用ケース>の
シリーズ製品

型番は「PS−1」
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 私は、この小さな基板を周辺にある外部機器などのノイズ源からしっかりとシールドした状態で包み込みたいと考えていたので、プラスチック製のものではなく、金属製のケースに入れることにした。

 誌面の記事では、重量級のケースに入れると電子パーツの制振作用により音にいい効果がある、などとまことしやかにインプレッションされていたが、素人が聴いて直ぐに判るような変化が発生するはずがない。通常に通電状態にあるパーツに与えられる程度の振動の影響の状態を拾うには、もはや測定限界という際どい世界を扱うほどの高精度の計測器が必要だろうと思うからだ。

 たとえて言えば、江東区にいらっしゃる手技(てわざ)を持った職人さんレベルの微妙な感覚をもった人が辛うじてその研ぎ澄まされた指先によって始めて感知できるような誤差や違いを、(ただのズブの素人衆に過ぎない)私も判るのです、と吹聴しているようなものだ。

 そこで再生音に違いが現れたとすれば、それは安定した重量によるためではなく、外部の磁気や電界やノイズといった電気的なものからシールドされたことによる効果に違いない。

 これは電子回路であって、音を作り出すための装置部分が「振動板」で成り立っているスピーカユニットなどとは、訳が違うのだから。あまり、振動抑制による有効性は無いだろう、と考えている。勿論、その効果が皆無といったことはあるまいが。

ケースへの設定(レイアウト中) 表面のレイアウトと裏面のレイアウト


つまみやコネクター類の大きさの型紙を作って、おおよそのレイアウトを検討する。
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 さて、そういうわけで、ある程度のシールド効果が期待できて、しかも安価な素材を探してみた。すると加工がお手軽なアルミ板を使ったもので「実用ケース」と呼ばれる種類のケース製品が見つかった。LEAD社から丁度良さそう普及品が発売されているものだ。

 今思えば、たしか、中学生になりたての頃に電子工作として自作(図書館にあった「ラジオの製作」の特集記事で掲載されていたものだと思う)した目覚まし鳥(Cdsによる抵抗変化を利用した発振装置で、丁度、鳥の鳴き声に聴こえる)の装置なども、同じケースに入れたような気がする。しかし、もうそれは40年近くも昔の話なので、同じと思うのは私の思い違いにすぎず、多分どこか別のメーカの似た様なケースだったのだろう。

 そう思わせずにはおかないほどに、レトロな昭和の頃の雰囲気を、この「実用ケース」は背負っている。それを私はWebサイトで見つけたのだが、まるでプラスチックケース並みの価格なのでちょっと驚いてしまった。シリーズ製品でいろんなサイズが用意されているが、「PS−1」と「PS−12」の2種類が今回の収納には良さそうだ。

 そのサイズはW100*D75*H50と W100*D95*H50(単位はともにmm)というものになり、横幅が基板のサイズに丁度よく、奥行きの違う製品を選択することで内部に収納する回路などの量を調整することができそうだ。

 ただし、残念ながら、実用ケース中の最小サイズの製品が「PS−1」。それを選んでみても付録のUSB−DAC基板の奥行きとは合わない。そのためケースに対しては勿論穴あけなどの加工を加えるが、それだけでなくボードに対しての若干の機構加工が必要になってくる。雑誌に掲載されていたボード専用の開発商品という様なものとは違って汎用品なので、こうした対応が必要になるのは致し方ないところだろう。

 一方の「PS−12」だが、電源用の安定化回路やスピーカー・ドライブ用のパワー・アンプなどを一体にして収納する想定なら、奥行きの深いこちらのモデルの方が良かろうか。

ケースへの設定(穴あけ中)

パーツ用に穿った各種パーツ用の穴。
位置をスケールで確認してマジックでポイントを付けて、
そこにポンチで小さな窪みを付ける。

ポンチは金槌などで打つのだが、アルミは柔らかいので手で押し付けるだけでよい。


その後、ポンチを打った部分に2mm程度のドリルで穴を開ける。

最後にその穴に向けてリーマを差し入れて、で周囲を広げて行って口径を調整する訳だ。
写真では穴の周囲に切りかきによるバリが付いているが、丸棒タイプの金やすりを使えば、いとも簡単に取り去ることが出来る。
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 例えば、USBジャック側(基板のうしろ面)をそのままとして手を加えないで、前面側で調整する方が手間は少ないだろう。

 その場合は中継アダプター(パイプ・ジョイント)を介して、そもそも長めのボリュームのシャフトをさらに延長するだけで済むからだ。そうしないで、前面側をそのままとした場合には、今度はボード上に固着されたUSBコネクターの部分に手を加えなければならなくなる。

 RCAジャックの改修は比較的に楽なものだが、USBジャックの方は筐体が金属なだけにそれがヒートシンクの役割を担ってしまって、半田がなかなか溶解しない。悪戦苦闘しても、パーツを基板から抜けないのだ。しかも筐体が熱をためてしまって恐ろしい熱源となって、回路上の先にあるパーツ(つまり電源系の電界コンデンサーなど)へ熱が伝播され損壊手前の状態にまでなってしまう。実に手強い存在なので、ここをいじるのは出来れば避けたほうがよろしかろう。

 また、後面を基準としてボリューム・シャフトをジョイントで延長しない場合には、ボリューム・パーツの基板からの移動作業が必要になってしまう。。ボリュームのパーツを基板面から離脱する作業も実に手強く、簡単に基板上のランドを損傷してしまうので注意が必要だ。しかもそうやって移動させた後にまだ作業が続く。基板面の6箇所とボリューム上の6箇所の小さな切片をケーブルで接続しなければならないのだ。基盤から外すだけでもひと苦労する訳だが、この半田付けが大変なのだ。対象が小さいし、しかも密集した狭い場所になるので、本当に辛い作業になってしまう。

ケースへの設定(穴あけ中) LEDやスイッチやボリュームシャフトなどパーツの取り付に応じた穴なのだが、それぞれに適合する口径がある。

パーツ用に穿ったの穴の口径は、「現物合わせ」で確認して、金やすり(先ほどの丸棒など)で仕上げていく。


削り過ぎてしまうと、どうにもならないので、くれぐれも用心しながら作業を進める。
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 削り出しの厚みのあるパネルを持った高級ケースに収納すると、随分と印象が違うものになる。

 しかし、見かけの良いそうした製品は素敵ではあるが、とても高額なものばかりだ。どれも5千円を軽く越えるほどのものなので、私などでは躊躇してしまって、ちょっと手が出せない。

 ちなみに「STEREO」誌で紹介された専用のケースなどは、なんと8500円もしている。この価格にはさらに驚くほかはないが、新たに専用品として設計して金型まで起しているとすれば、そのあたりの値付けが妥当な金額、という事なのだろう。それは私などの懐具合からすれば、世間はデフレ下にあるのではなかったか、と思ってしまう程の大層な金額なのだが。

 こうした様子を眼のあたりにすると、「だからオーディオの世界というものは恐ろしい限りだ」とつくづく思う。しかも今回、観察していたら皆さんが競ってそれを購入してしまっているではありませんか。予約時点でもう一杯いっぱいにオーダーが集中しまっているのだから、まったく・・・。

 勿論そうした少しお高いケースについても一応はどうしようか、と検討したのだが、どうにも仕方がないようだ。無駄な金遣いは激しいくせに、こうした際に妙にストイックになってしまって踏み切れないのだ。本当に自分は肝っ玉が小さいな、としか言い様があるまい。

 だから、私としては安心の「LEAD」のケースでいきましょう。そう、喜んで・・。

 ケースに関しては、いつもの「プア・オーディオ」路線で行くしかなさそうだ。(「ピュア・オーディオ」ではありません。念のため。)  しかし、いいなあ、アルミ厚板を使った重厚なケース・・・。

ケースへの設定(パーツ配置中) パーツ配置中 ;ケース内面

 なお、アルミケースの加工に関しては、いくつかの工具が必要になる。

 ポンチ、ドリル、リーマー、金工やすり(丸棒や平型、正三角があると作業性が良い)、などの基本的な工具は金属ケースへの収納作業ではやはり必須のものだろう。

 さらにあれば実に便利なものにケース・カッターがある。「ニプリング・ツール」という工具で、言ってみれば四角に切れる金属用のパンチャー状のはさみだ。グリップを握ると上部の四角の刃先が金属版を切断してくれる。「板材切断工具」というもので、自在に金属板を切断して<加工>が出来る。これがあると、USBジャックなどの四角形の穴開けや板材部分の切断が極めて簡単に行えるのだ。

 なお、板の先端部から切り進めない場合には、盤面へドリルで穴を開けて、そこに刃先を入れて切り回す必要がある。

 私が今回購入したツールでは、アルミ板なら1.5mmまでが切断できると説明書きされている。使ってみると素晴らしく便利なもので至極気に入った。本当に楽に四角い穴を簡単に造り出せるからだ。ただし歯の切断幅が6mmもあるので、少し大きめの板材からの切り抜きなら良かろうが、小さな部材の切断などで使うには切代が大きすぎよう。

 なんの気遣いもせず、直ぐにケース裏のUSBアクセス用の穴をそのツールで穿ってしまったが、今思えば缶詰の「空き缶」などで綺麗に四角い穴を穿孔するための練習をすれば良かったかも知れない。

 思い通りの状態とまでは行かないまでも、それに近い綺麗さで四角に切れたから良しとするが、練習を積めば更に美しく空けられる気がしている。そう思ったところで、すでに四角い穴は2箇所(USBとTOSLINK端子用)ともに開いてしまったので、もう後の祭りなのだが・・・。  なお、刃先は消耗品だが、刃先だけがリペアパーツとして用意されていて、別途購入が可能だ。
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<改造 その7 :ケースの手当て  ― パーツの移動>

 ケースにボードを収納する際には、そのパネル面のデザイン(パーツのレイアウト)をどうするかが問題だ。

 このDACボードは外部とのインターフェイスとなるパーツ類がすべて実装済みであり、しかも半田で基板上にしっかりと固定されている。USBジャック、RCAライン出力端子用の保持パネル、ヘッド・フォンジャック、それにヘッド・フォン用の音量調整ボリュームなど。

 いずれも抜き差ししたりして力が加わる部位だという事もあってか、実にしっかりと基板面へ半田付けされている。これが逆に、私の様なはんだ下手には少し困ってしまう状態なのだ。

RCAライン出力のパネル 基板上の手当て(基板ピン)

RCAライン出力のパネル後に、基板ピンを設定する。

RCAジャックは、別途ケースのリアパネルへ直付けするので、
そこへのアクセスを考えて、接続ケーブルはピン接合で仕立てる。
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RCAライン出力のパネル跡 RCAジャックがあった部分はそのまま基板上のランドになっている。

右Ch、左Ch、それにCh共有のGNDの3個。
ここにそれぞれ基板ピン用のソケットを立てる。

 だから、こうした外部や操作インターフェイスの各パーツをそのままでケースに収納するのが最適なのだが、そのためにはケースのところで書いたような機械加工が必要となる。

 もし、背の低いケースに入れたいのであれば、縦にRCAジャックが並んだサービスパネル(フレーム)を外す必要があるし、ケースパネルまでの距離が足りなければ、延長できるパーツを選んでそれを手当てする必要がある。

 だからやはり先に書いたとおり、リアパネルをそのままとしてボリューム・シャフトをジョイント金具で延長し、ヘッド・フォンジャックに別途ミニプラグを挿してそこからラインを延ばしてパネル上に設置した新たなジャックと結線する、というのが、一番簡易的な方法となろう。

新たに設置するRCAジャック リアパネルへ設置したRCAジャック
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 私の場合は、先のケース(PS−1実用ケース;サイズはW100*D75*H50 mm)を選択しているので、実は辛うじて上に書いた収納手法でいける状況だった。

 けれども、他にちょっとした考えがあったので、敢えていくつかのパーツ移動を行うことにしたのだった。まず、リア面はRCAのパネルを取り去って高さを押さえることにし、フロント側ではボリュームを基板から剥離し、ヘッド・フォンジャックにケーブルを結線するという改修の内容だ。

 ヘッド・フォンの音量調整用のボリュームは2連の小型のもの(20Kオーム、Aカーブ)が実装されているが、ケース収納の関係で基板上から外して、ケースの前パネルの特定位置へこれを固定する。

ヘッド・フォンの音量調節用のボリューム

基板裏からボリュームの接合を確認したところ
(この半田を溶いて、パーツを基板から離脱する)
ボリューム跡の基板ピン仕立て

ボリュームがうまく取り外せずに、基板上のランドは崩壊寸前の状態だ。
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 ボードのリア面にあるUSBジャックの端面をケースのパネル面になんとか着く様な状態にすると、今度はボリューム・シャフトの長さがケースのフロント側のパネル面まで足りなくなる。選択したサイズのケースでは、ケース・パネル面と基板前面端との空間がだいぶ開く状態になるからだ。その状態となってもボリュームに延長シャフトをジョイントさせて長さ自体を延長するという手段が取れるのだが、しかし、そのジョイントは直線状でのみ扱えるものだ。

 その昔、工作したベニア板のモータボートなどで利用したスクリュー用のプロペラ・シャフトと船内のマブチ13モータとの間をジョイントした金具のように、バネ仕込みのフレキシブルなものがあれば良いと思うが、見渡す限りオーディオ用として用意されたものは金属製の筒状ジョイントばかりのようだ。池袋や渋谷の「ハンズ」辺りに行けば見つかるのかもしれないが大宮には無かったので、いまのところ、ちょっと入手は考えられない。

ボリュームへの配線中 ボリュームと基板ピンの接合用ピン
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 私としてはボリュームつまみの取り付け位置をフロント・パネル中央部から是非にも右側へオフセットさせたかった。そうしたいのはただ見た目の印象、その良し悪しだけが理由なのだが・・。

 どうも、パネルの真ん中につまみがあるという状態がなんだか日の丸のような感じで、粋な雰囲気が微塵も無くて、あまりよろしくないなと感じるのだ。これが「実用ケース」ではなく、パネル面の板厚があって重厚なケースであればサマにもなろうが、私の選んだ実用ケースでそれをやると、途端に、なんだかひどく安っぽいものになってしまう。

 でもそうした印象は、実は重要な点だと思うのだ。だから私はその想いを尊重して、敢えて危険を犯して一歩踏み込んだ作業を行う事に決意を固めて、ボリューム・パーツの半田を溶いたのだった。

S/PDIFのランドに基板ピン用のソケットを設置する

S/PDIF用の基板ランドに、基板ピン用のソケットを設定する。

光コネクタ(TOSLINK)用の動作電源に関しては、
基板上の電源位置が何箇所かで用意されている。というよりそれは”TP”であり、電圧計測のポイントなのだろうが・・。

なお、動作用の5Vは外部供給する予定だ。そのためボード上での確保ポイント用としては、基板ピンや基板面ソケットなどは設置していない状態だ。
S/PDIFのランドに基板ピン用のソケットを設置する
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<改造 その8 :ケースの手当て  ― スイッチの取り付け>

 ケースへの収納位置が決まったので、次には、操作(電源投入や種別選択)用のスイッチについて考える。

 ますは電源だが、これは先に書いたようにDCジャックをスイッチ付きの製品(MJ−10など;センタープラスのアダプターなどの場合、スイッチが介在するのはマイナス側になるので注意)にすれば解決する。それで配線をひと工夫すれば、USBバスパワーと外部電源の自動選択の仕組みが出来あがるためだ。

 ただし、私は「STEREO」誌面で紹介されていたデジタル信号の出力端子を設置したかったので、ちょっとひと捻りが必要となった。そうした詳細は次のS/PDIF出力の説明部分できちんと解説するが、結局はその手当てに対応するために、電源系の選択は自動化した仕組みではなくプラス側に介在させてON/ONの3端子(1回路2接地)のスイッチによるマニュアル選択にすることにしたのだった。

 また、S/PDIFへの電源供給に関してもスイッチを付けることにした。メインの電源供給種別の選択スイッチと一括にしてもよいのだが、単独での出力(端子制御側へのプラス極性の通電)選択を可能にするためだ。ただし、USBバスパワー時には消費電力を節約させるため、5VDCを外部電源からの接続時のみTOSLINK回路への電源供給ラインへ通電し、それをスイッチさせる仕組みにする。

 まとめるとメインスイッチとインターフェイス出力選択の2つのスイッチを設定し、ボードへの電源供給種別の選択とデジタル信号の出力可否の選択を行う仕組みを作る。しかし、外部電源側にメインスイッチが選択されていないとS/PDIFバッファ回路への通電選択をONに切り替えても通電はされない、という配線にするつもりだ。

1回路2接地タイプのスイッチ
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 メインスイッチは基板の電源投入口(USBコネクターの基板への半田ポイント;端子1番と4番ピンがVccとGNDだ)へのライン上に接続する。

 今回のスイッチはプラス側の電極に入れるので、スイッチの設置にあわせて基板上の経路(1番ピンからコンデンサーへ、さらにそのポイントから分岐して抵抗へ向かう2又の電源経路がある)へ向かってへ手を入れることになる。マイナス側にスイッチを入れるのであればグランド側の4番ピンで接地箇所を考えなければいけない。しかし4番は基板上の広い銅箔のグランド面へ接続されているようなので、切断すべき箇所が見当たらない。

 USBコネクタから基板面の電源回路へ向かうプラス極性側の電源供給ライン(基板の裏面上の線になっている部分)を分離切断してそこにケーブルを取りつけてパネル上のスイッチへとそのラインを延長させる手を入れる。スイッチはON/OFFの選択ではなく、電源供給のセレクター機能にするのでそれに対応したパーツを経路上に介在させて、USBバスパワーを受けるだけだった電源ラインを外部からの電源供給ラインと切り替えて利用種別を選択可能にする訳だ。それを1回路2接地のON/ONスイッチで制御するという内容になる。

 そしてフロントパネル面でのスイッチ操作によって選択された電流を改めて基板へと接続(先に切断したUSB電源経路―1番ピン―の切断した、その先の部分)するというものがこの計画だ。

 つまり、メインスイッチはON/ONの制御が必要となるので1回路2接地のものになるし、S/PDIFバッファ回路の制御はON/OFFだけで良いので1回路1接地のものを使うことになる。

スイッチ各種 スイッチへの配線
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<改造 その9 :出力信号への手当て  ― S/PDIF出力化>

 月刊「STEREO」の誌面ではS/PDIF出力についての記述がある。TOSLINK端子(光コネクター)を増設して信号の出口を付けるというものだ。

 実はUSB−DAC回路を担うLCIチップの”PCM2704”は、そこにS/PDIF用の信号出力回路を内臓している。誌面のコラムで紹介されているのはこのS/PDIFのラインへ光出力端子を取り付けよう、という内容なのだ。

 TOSLINK端子(オプティカル・デバイス)は送信側と受信側でそのパーツが異なる。このボード上のチップ(PCM2704)にはS/PDIFデジタル信号を受け取るための入力回路は実装されていないので、当然ながら付録のボードにもデジタル信号の入力機能となる部分は存在しない。だから設置できるのは出力のみとなる。選ぶTOSLINKのモジュール(端子)は、このためデジタル信号の出力であり、送信用となる。

 ちなみにUSBのデジタル信号はバッファリングしたデジタル信号で、それぞれの機器に搭載されたクロックを使って補間・復号するものになる。だから時間軸に乗ったデータが同期して搬送されるS/PDIFのデータとはデータ伝送の仕様内容が異なっている。そして双方ともにデジタル信号ではあるけれど、データ搬送の方式がまったく違うので残念ながら互換性はまったく無い。そしてオーディオ・ビジュアル側の機器はS/PDIFの信号を受信・送信している。

 この基板には、S/PDIF信号の出力ポイントがUSBコネクター脇にランドとして用意されている。そこに出力デバイスを接続するだけでデジタル信号の出力機能追加が完了する。そのようにボードへの機能追加のための「手当て」は至極簡単なのだが、しかし実はTOSLINK用の光端子は現在では流通量が少なくて、その端子自体を入手するのは意外に難しい。出力端子として設置しようと考えている人は注意が必要だ。

TOTX177A(TOSLINK端子) S/PDIFバッファKITのプリント基板
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 まずはプリント基板へ各種のソケットや抵抗を半田付けする。

 TOSLINKの送信用のデバイスは ―例えば本家 東芝製の「TOTX177A」等の型番製品になるのだが― のシリーズ中には、3.3V動作と5V動作の製品とがある。なお、型番が「TORX177A」であれば受信側なので、送信には利用できない。製品の型番にある3桁目の英字、”T”はTrancemitterで ”R”はReseiverだろう。

 用意するTOSLINK端子によっては動作させるために2番ピンへ供給すべき電圧が異なってくる。このため、光端子(TOSLINK)パーツをボードに接続する際にはその動作用の電源を取るポイントを考える必要がある。

プリント基板へ各種のソケットや抵抗を半田付け TOTX177A(TOSLINK端子) 同等品
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 S/PDIF用のデジタル+とデジタルGNDの基板上の各ランドの近くにある電源ポイント(USBコネクタ横)の”TP1”は、3.3V用のポイントだ。

 確保したTOSLINK端子がTOTX177A(あるいはそのスペックの互換品)の場合は5Vで動作するものなので、基板上のオペアンプ横の位置にある2箇所、”TP3”か”TP4”のそれぞれの6V用のランドを選んでそこから光端子動作用の電源を取り出す必要がある。あるいは外部から5Vを供給するという方法をとるかなどの方策になるだろう。

 ちなみにボード上の「TP」は1番から4番までの全部で4箇所、残りのTP2は12Vのポイントでボリュームの左脇に置かれている。本来そこはテスターで規定電圧がでているかどうかを計測するためのものなのだろうから、ランドに基板ピンやソケットが挿せる様な貫通ホールが開いているかどうかは確認していないので、あしからず。

S/PDIFバッファ回路用の制御LSI プリント基板へ各種のソケットや抵抗を半田付け

まずはプリント基板へ各種のソケットや抵抗を半田付けする。
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 また、光端子の製品には仕様がある。その詳細が確認できるのだが、ちなみにTOTX177Aに関して抜き出してみると次のようになる。

 ピンへの半田付け時間は10秒以内、入力電圧は5V±0.5V、しかし仕様書の注意書きに0.5V誤差ではなく0.25V誤差の範囲で使い、さらに最大電圧が6Vを越えない事、と明記されている。

 だから正確を期すならボード上の利用する電源取り出しポイントの電圧をテスターで計測すべきだろう。注意書きされている「最大電圧」はいわゆる瞬電を含めたものだろうから、利用するポイントが5.5Vを越えていたら、もうアウトだ。端子へ通電したとたんに損壊してしまう。

 さて端子のモジュールは3本のリード状の足を持っている。

 そのピンの配列は光ケーブル挿入口を上面へ向けて足を手前側から見た状態で右側から1,2,3番となる。1番がGND,2番がVcc、3番がDigDataとなる。だから私たちは1番にボードのGからの信号線(信号アース)を接続し、2番に確保した電源、3番にボード上のデジタルアウト(D+)からの信号を繋ぐ事になる。

 先に端子のみで回路は不要と書いたが、開示された仕様書によると、1番2番ピン間には0.1μFのコンデンサー(積層セラミックコンデンサー等)をピン根元から7mm以内で装着する必要がある。

プリント基板が完成 <S/PDIFバッファ>


この回路はキットで販売されている。
私の場合は、光出力用のコネクターと同軸出力用のRCAコネクターをケースに直付けとする必要があって、基板には設置していない。

入力する信号と電源のポートと共に、別途購入した基板ピン用のソケットで仕上げている状態だ。
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 なお、オプティカル出力(光接続)ではなく、コアキシャル(同軸接続)の端子を着ける場合には、さらに大きな注意が必要だ。

 信号を出している”PCM2704”にはデジタル出力信号に対するバッファ回路がないので、そのままでRCAコネクタを付けてはいけないからだ。

 同軸による信号接続を行った場合、接続相手からボード側がデジタル機器として認識されなかったり、信号の同期が出来なかったり、搬送側のDAC回路を破壊(つまりボードが損壊するという意味)したり、といった障害が発生する。どうしても同軸で出力させたい場合には、ボードの信号出力とRCA端子(この場合はRCAジャック)との間に別途データバッファ回路を組み込む対応をとっておく必要がある。

 例えば、TOSLINKの端子自体の価格は200円から400円程度、そしてバッファ回路のキットの価格は1000円ほどの予算が必要になる。なお、バッファ回路はネット上にきちんとした回路図や製作事例が紹介されているので参照すると良いかもしれない。


 キットを購入するのではなく自分で部品を集めて回路構築することも可能だ。作成すべきバッファ回路の構成パーツ点数は少ない(簡単な回路なので)ので、もしそれを一から、基板上で自作をするのだとしても工作の難易度はそれほど高くはない。

 むしろ、抵抗やコンデンサーやバッファ機能のコア回路となるLSI「74HCU04AP」やトランスや通電確認用のLEDなどの各種パーツを確保する手間のほうが数段大変だろう。キットを購入したほうが無難といえよう。

電源系の回路部分 <S/PDIFバッファ回路用の電源部>

ソケットに挿されたバッファ制御LSI<74HCU04AP>。

その横に見えるのは、
電解コンデンサーとパルス変換用トランス(私は当初、これを電源供給用のトランスだと思っていた。)
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<「当たり」とはずれ というお話>

 帰省の折に買う事を想定して前橋にある馴染みの書店で「STEREO」誌の該当号(2013年1月号)を予約し、発売日に確保したものがある。

 年末の帰省した折に書店から引き取って開封して欠品の有無を確認したが、しかしそのまま前橋の実家に保管してしまった物件だ。年が明けてからはまだ前橋へは行っていないので未利用の状態であり、だから基板上の抵抗の種類といった詳細やノイズ発生の有無に関してなどは未確認のものだ。

そのボードは出版前に予約して確保したものなので、発売日ジャストに合わせて出荷された流通物件品である。それは事象発生をレポートしている多くの人達が雑誌を入手した時期と同じであると思われる。Web上での多くの報告者が購入したのは事前予約の状態での入手であり、その状況で確保したボードで事象が発生しるようなのだ。

 予約分に対する初回出荷の製品ロットに問題があるのだとするならば、場合によると私が前橋に保持しているその固体だけは発振音が盛大にするのかもしれない。多分その可能性が他の2枚よりも高いという事は充分にあるのでは、と思われる。

 その固体ではボードに通電しての確認はおろか、音出しさえもまだ出来ていないものだ。その確認を前にして異音が聴こえる様などを思い描いて、その対応を想像すると、実はなんだか今からワクワクしてしまっている。

 ところで、この付録に関しての感想で「異音がするのは大当たりで、それが発生していないものは単なるハズレに過ぎない」とネット上で表現していた剛の者もいた。まさにその通りに違いないだろう。発生機の保持者となった場合には、天からの恩恵とも呼べる「降って湧いたような改善」に取り組む余地がおおやけに与えられたのだから。

 なんとなれば、見事に金の卵のような「幸運の物件」を引き当てた人達は、何の躊躇もなく大手を振っていそいそと日夜改造に取り組めるに違いないのだろうから・・・。
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水晶発振子

水晶発振子(楕円の筒状の銀色のパーツ)は普及型のもの。

なにせ、ピュア・オーディオの世界では、CD再生の精度UPを図るために外部装置としてのクロック発生器が別立てで販売されている。しかも、驚くほどの高額で・・・。

回路自体をこのボードで目の当たりにすれば、そのパーツ構成は僅かに発振子と抵抗1つにコンデンサーが2つで良い。それに事例のように自分で高精度のものに交換することが可能だというのに、マニアはその機器を買ってしまうらしい。
DA変換用の基準クロック(12MHz)を創り出す水晶発振回路を俯瞰する。

このクロック回路のコアパーツを「高精度の発振子へ置き換える」という凄い事例が先日ネット上で紹介されていた。

飽くことなき探求者、
改造の剛の者(ごうのもの)はどこの世にもいるものだ、
と改めて関心してしまうことしきりだった。


プア(ピュアではありません)・オーディオ派の私としては、その紹介は興味津々たる事例だった。

<剛の者>

 ところで、異音発生の報告をネット上で寄せてきた多くの人達が、はからずも誰もみな充分な電気・電子工学の知識を持っているようなのは幸いなことだろう。

 そして実に喜ばしいことに、私のような素人衆を相手にしては、その事象は発生していない。大部分の「STEREO」誌の読者(アナログ世界のオーディオ・マニア層)やさらに一般的な購入者(付録に眼を惹かれて購入した私のような人びと)の間でも発生の模様は今のところ無いようなのだ。

 しかも異常が発生した固体を持つ所有者の多くにおいては、その原因を詳細に分析して最終的な発生源(回路上の問題点)までもを究明する能力を持っているようだし、発生源を撲滅するための改造や追い込みに関しても容易に取り組めているようなのだ。

 これで回路上の不正な発振を排除する手当ての詳細だけではなく、付随して達成された性能改善までもが多く事例として報告されることになるだろう。様々な調査や対応、改善や確認が積み重なって、やがて文殊の知恵となるのだろう。そうすれば、私達は手放しでその恩恵(改善案の数々)に浴することが出来る。
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<オペアンプの入れ替え>

 アナログ回路の経路上にある電解コンデンサーの交換に関しては、どれもみな基板から半田を溶いて、固定されたパーツを外す必要がある。

 けれどRCA出力とヘッド・フォン出力のためのアナログ信号の増幅機能を担うメイン回路となる2個のオペアンプはICソケット設定になっている。だから私達のDACボードにおいては、アナログ出力音を決めている主要機能部分に関しては半田細工が不要な仕様で設えられている。

 別途調達する必要があるが、2回路構成の任意のオペアンプへの交換(動作諸元を確認して、動作電圧の帯域などは適合を確認する必要がある)がそのまま手軽に出来る仕組みが施されているのだ。痒いところに容易に手が入れられるように充分に検討されて実装された、至れり尽くせりの嬉しい仕様なのだった。

デフォルト状態のオペアンプ

このオペアンプはデフォルトの状態だが、
別途、購入したものに置き換えて音色を変化を愉しむことができる。

1個50円から高いものになるとなんと1個で3000円まで、
多岐・多様に流通している。
<ライン出力とヘッド・フォン用のオペアンプ>

それぞれ共に基板へ直接実装されていないが、
これは、今回の企画における目玉の一つ。

「オペアンプを手軽に交換して楽しみましょう」という内容。
ちなみに「8ピン仕様のICソケット式」なので、
チップの抜き差しには半田ごてとの格闘は要らない。

2回路入りで12V動作のオーディオ用オペアンプは
多岐に渡り、内外の半導体各メーカーから販売されている。

オーディオ用や計測器用を選べば、充分な性能が保証されているのだ。
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 ちょっと見渡すだけで、低ノイズ・低歪品、更に超低ノイズ品、そしてさらにさらに改良品やら、選別品まで、が多彩に用意されている。その溢れる製品の中から私たちは一体どれを選択すればようのだろうか。

 考えてみれば「音」や再生にまつわるものは極め付きの主観的な世界だ。だから歪やノイズが少ない方を選択した方が好印象をもたらす結果となる、とは必ずしも限らない。

 例えば時に堪らなく「牛丼」が食べたくなったり、背油が濃厚な「とんこつラーメン」が食べたくなるのと同じ現象だろう。そのときの受け手(聴き手)側の体調や心理状態によってそうした感想は大きく変化するだろうし、普段でも私達はアナログ的な嗜好の部分で、再生される音の良否の多くの部分を評価しているのではなかったか。

 では、一体どれを選べばよいものだろうか?。

 しかもオペアンプを眺めてみると、それが「オーディオ用の開発製品」と謳われている物件だったり、さらに高級オーディオ用のモノであったりと、そのスペックや設計基準や追い込みの様子は多様極まりない状況なのだ。

 その展開はもう、引く手あまたの<素晴らしい世界>、まさに”It’s a Wonderfull World!”という感じで開けているではないか。

オペアンプ MUSE8820、OPA2134PAなどを確保した。

また、デフォルトのオペアンプが意外にいい感触だったので、
それぞれの選別品と改良品も合わせて調達し、ストックした。

さらにOPA2134PAが良い結果だったので予備用に幾つかを追加し、
それに加えて、NJMの5532DDと2114DDなども入手した。


もうこの時点で、深い沼の中に入りつつある。

しかし澄んだ音色や深い奥行きや豊かな響き、それにノイズの無い世界なので、そこにある深い沼は決して「泥沼」では無い。


デフォルトのNJM4558Dの華やいだ再生音も好感がもてるが、
例えば、私が購入した<OPA2134PA>などで考えるとその価格は
僅かに170円で済んでいる。

コーヒーチェン店のベローチェでの一杯分ほどの金額で楽しめる。

そのコストとは裏腹にチップの内容はかなり素晴らしいものだ。
クリアで再現性の良い、明度の高い音が流れてくる。
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 私なんぞは体験もせずに(この場合は試聴という意味だが)、そうした情報やスペックなどを見るだけで、もうすかさず気持が昂ぶってしまう。

 なんだかそれが、まるで春先のように柔らかで温かいものに溢れているように思われるからだ。手にする前から、薄薔薇色の明るい気持ちになって来てしまうのだ。

 そこで開かれている新たな世界は、あたかも台湾の中国茶のように多様であり、試そうにもとても追い切れるものではないだろう。そこには想像を絶する不思議な色を湛えた深淵な世界が広がっているようだ。

 だから私たちは、その広い海の中で好きな再現性や音色や透明感や艶などの諸々のエキスを見つけるという、再生して聴いて楽しむだけでないもの、自分の感性に合致するナニモノかを探し出したり追い求めたりする愉しみという醍醐味も味わえることになる。


 「安いから」といっても安心はできない。相手はひどく広大な裾野を持っているのだ。結局そのためにはいつもお財布との相談になるが、小さなICを誰もが好みに応じて取り替えて、様々な変化を愉しめる世界がそこにある。

RCA出力増幅用のオペアンプ <OPA2134PA> RCA出力増幅用のオペアンプ
<OPA2134PA>
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 私においては一向に異音が聴こえる事もなく、しかもこのボードが奏でる素晴らしい音に聴き入っている。

 この付録の実施でLUXMAN(ラックスマン)側の担当者が目指したものは、パソコンを舞台にして音楽再生等を手軽に楽しんでいる環境へ「品質の良い音」という新たな要素を提供すること、ではないだろうか。

 それによってパソコン・ユーザのオーディオ感を染めていって、彼らを新たなオーディオ愛好者へと変化させる。あるいはその興味を喚起させるための、ひとつの小さなきっかけを作ること、なのではなかろうかと思われるのだ。

 私には、その波及効果で衰退しつつあるオーディオ世界の裾野を広げて行こう、という大きな命題があるように思われる。さらにそれにもうひとつ付け加えるとすれば、オーディオマニアだけでなく電子回路(デジタル機器)のマニアや探求者へ向けた良質な素材の提供という、2点を目論んでという事ではなかろうか。

 そこで提供された世界を愉しんでいるし、充分に満足しているという事から考えれば、単なる「クソ耳」の持ち主に過ぎないのかも知れない。

 でも、私にとっては付録付きの雑誌として提示された価格以上の価値があった。音楽的な内容での大きな満足が、このボードによってもたらされたからだ。

 だから、私はこの企画に関しては充分に評価している。しかし、仮に、もしここで価格は無視して製品としての判断をせよ、と言われた場合はどうだろう。

 これは制約されたコストの中で実現されたもの。そもそも通常の一般的な価格帯で販売される製品(例えばONKYOのオーディオボード並みの2万円弱ほどのボードとして)と同等であるはずがない。「であったとしたら」という仮定は、だからあり得ないことだろう。


 まさにこの製品は、コストを睨んだ上で最善の設計と製造が行われたものなのだ。それは明らかなことだと思う。なぜなら、実装された基板のパーツ選択の状態(交換可能な状態を見据えてリード仕様の抵抗やコンデンサを選んでいる点やオペアンプがICソケット式になっている点)などを見れば明らかだろう。単なる「付録」としてのものであれば、すべてを低コストの基板面実装用のチップ・パーツにすることも出来たわけだから。

 オーディオ界の重鎮ともいえる老舗メーカーからすれば、この設定価格の付録として提供することに躊躇する部分はあったろう。だがその困難に立ち向かってもらえたお陰で、素晴らしいボードが<楽しさ溢れる優秀な素材>として提供されたのだ。

 そうした尽力のお陰を持ってはじめて、私達は(ほんの少し迷いつつも)複数台を購入できたと言えるのではあるまいか。
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