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オーディオ : 月刊STEREO誌 付録 LXU-OT2
STEREO誌の付録 ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC <LXU−OT2>を聴く

<LUXMAN ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC <LXU−OT2>を聴く (2013.01.13)>


 盆暮れ(8月と12月;ちょっと表現が古過ぎるかも知れませんな・・)に付く付録が実に魅力的な「月刊 STEREO」誌は、今年で創刊50周年を向かえるそうだ。付録の到来は、丁度、盆暮れの時期の浮かれた気分にぴったりとくるものだ。無事に実施されるのがいつも待ち遠しくて、その企画が大好きだ。

 過去に付録したスピーカユニットの自作企画、これなどは国産どころか正真正銘の国産品、何といっても「ユニット組立てからの自作」品なのだから・・・。あるいは2年続いたその後の企画、デンマーク製のフルレンジユニットの付録(こちらは完成品のスピーカー・ユニットが右左のセットで付いた)など、コンスタントに大いに楽しめる内容になっている。

 そしてとうとう今回のイケてる企画の到来だ。2013年1月号の付録はあの高級オーディオの代名詞とも呼べる「LUXMAN(ラックスマン;1925年創業の老舗メーカー)」が開発したUSB/DACなのだという。

 ラックスマンといえば、私が多感なオーディオ少年だった遥かな昔から今に至るまでの、憧れのアンプメーカーだといえる。どの機器も重量級の高級路線なのだがケバケバしいところなど微塵も無いすっきりとした粋なデザインであり、威厳溢れる上品な外観を持っている。いつも憧れてしまうようなピュアな製品がラインナップされている、代表的なオーディオメーカだ。

 パネルに流麗にメーカーロゴの入った、優秀な性能の「高級アンプ」を自分もいつかは手に入れたいものだという、垂涎の的だったブランド。それが私にとってのLUXMANというわけだ。


 関連ページ;

  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を確認する>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を手当てする>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を改造する>

  ・のんびり行こうよ: <TA1101Bボードで「LXU-OT2」を拡張する>
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」を収納する> 新規更新のページあり
  ・のんびり行こうよ: <月刊STEREO誌 付録  「LXU-OT2」で応募する> 新規更新のページあり

特別付録が付く2013年1月号

記念すべき、2013年1月号   定価は2800円。

「フル活用マニュアル」として特別付録の特集記事が14ページに渡って展開。
特別付録の特集記事(14ページ分)
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ヘッド・フォンアンプ付きUSB−DAC LXU−OT2 <LXU−OT2>


ヘッド・フォンアンプ付き
USB−DAC

パソコン接続用の
USBオーディオボードだ。

 オーディオ雑誌としては老舗出版社となる「音楽の友」社とオーディオメーカーの「ラックスマン」社とのご機嫌なタイアップ企画が今回の特集(2013年1月号)の内容になっている。しかし、実はこうした企画は初登場ではない。去年の正月にも実施されていて、今回がその2回目になるものだ。

 初回の企画は素晴らしい内容で、なんとデジタルアンプのキット(ラックスマンのアンプ!)が付録に付いたのだった。それは、基板にパーツが実装済みの状態なのでケースや電源を用意するだけで直ぐに利用が出来るというもの。だからキットといっても半田付けや各種の加工は不要で、実にお手軽な内容で楽しむことが出来るものだった。

 しかし、残念ながら私はそれを手にすることが出来なかった。その素晴らしい付録の存在に気がついたのがすでに12年の正月過ぎで、完全に一歩出遅れてしまったからだ。

 焦って必死に何軒もの書店を探したが、その懸命さはついに報われる事が無かった。すでにどこの店でも該当号は完売。どう足掻いても、見つけ出す事がとうとう出来なかったのだ。

 初回のタイアップ企画は大当たりして、完全に書店に出回ったすべての号が売り切れてしまった。なにせ直ぐに書店を通じて確認をしたが出版社からの取り寄せも不能という返事だったのだ。本当に大人気の企画だった。

 そしてとうとう、今回はその続編となる2回目。オヤジ世代にとってはリーズナブルでナイスな企画がやってきたといえよう。
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付録のスピーカ 付録のスピーカ


2010年7月号付録のスピーカ自作キット

<月刊STEREO誌の付録(オーディオ機器)の歩み>

 ちなみに過去の夏の号でのスピーカーの付録企画は、どれもみな随分と楽しめた。

 10年7月号付録のフォステスク社製の6.5cmユニット(フルレンジのペアセット) 「のんびり行こうよ; FOSTEX P650(STEREO付録 65mmユニットの自作)」にて紹介)、それに11年8月号付録の8cm(フルレンジのペアセット)といったスピーカー(ユニット自体の自作)の企画。  そして12年8月号付録のデンマーク製スキャンスピークのスピーカー・ユニット(ペアセット)、ただしこれはユニットを作り上げるという内容ではなくて10cmフルレンジスピーカー・ユニットの完成品が付いていたのだった。

 2年続いたフォステスク製のユニットは成形済みのコーン紙を金属フレームに接着し、さらにボイスコイルやマグネットなどを装着してユニットを組み立てるという楽しい内容だった。7cmユニットの自作キットの号の時は、複数を購入して、当時まだ小学生だった子供と一緒に作ってどっちがイイ音か、などと競作して遊んだものだ。
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付録のスピーカ SCANPEAKのスピーカ

デンマーク製スキャンピーク社の完成品ユニット。

とても付録とは思えない、完成度を持った内容。

 デンマークにあるスピーカー・メーカーのスキャンピーク社の付録、私はその再生音が大分気に入って今も良く利用している。デンマークのオーディオ・メーカーといって直ぐに思い浮かぶのは「オルトフォン」社くらいのもので、私は他に知らなかった。雑誌で紹介されるまでこのメーカーを知らなかったが、かなりの好印象となった。その音は、付録であるという領域を優に凌駕していて、そのまま製品で販売してほしいほどの内容といえるものだ。

 そういえば、フォステスクの企画製品はその後改良が加えられて、去年から完成品ユニットとして通常の販路(店頭)で流通されるようになったそうだ。

 付録も良かったが、本体の雑誌ではエンクロージャーの自作例なども沢山掲載された。いずれも自作派を標榜するオヤジ世代に対する、アツい「夏」の企画としては素晴らしい内容だったといえよう。

美しく仕上げられたLXU−OT2のボード実装
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美しく仕上げられたLXU−OT2のボード実装

<今回の付録の企画 USB−DACボード>

 さて、今度の企画に関しては、辛うじて情報が拾えた。予約して無事に付録号を入手出来たのだ。

 普段からSTEREO誌を購読していればそんな心配はいらないのだが、何せ誌面に載る製品はどれも高級オーディオばかり。読むほどに欲求不満が蓄積してしまうため、ここ数年は立ち読みもあまりしない状態になってしまっていた。

 だから、情報を入手できたのはたまたま運が良かったと言えよう。去年の心に残る失敗があったので、今回は用心のために11月号からチェックを入れていたのだ。

 そうしてうまく企画が進行し無事に出版されるという事が明らかとなって、11月の末には書店へ注文することが出来たのだった。しかも去年の付録号の騒動と違って、年が明けてもなお在庫がある書店もあるといった喜ばしい状況になっている。

 出版社としては部数を伸ばすまたとない好機なので、前回の品薄を教訓としたに違いない。マニアの需要に合わせて、いや数号に渡って事前特集を組んでマニア以外の需要を盛んに喚起していたから、その分も上積みして大分増刷したようだ。
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美しく仕上げられたLXU−OT2のボード実装

 なにせ、ラックスマンとのタイアップ初回の企画は未曾有の大当たりといえた。その付録が付いた「12年1月号」は大手アマゾンなどでの中古本枠での通常流通は皆無で、みなマニア出品でのプレミヤがついている状況なのだ。

 付録付きの雑誌の定価は2800円に過ぎないが、それらの出品価格は「諭吉」さんをどれも余裕で超えるというもの。随分と魅力溢れる雑誌(付録)なのだが、とてもではないが私などでは手が出せない価格がWeb上では平気で提示されている。

 本当は、前回のアンプと今回のDACをペアで利用すると「デジタル再生システム」としては大変な広がりが出るところだ。しかし、双方を共に入手する事はこのように今となってはまったく絶望的な状況なのだった。ヘッド・フォンだけで音楽再生を楽しむなら今回の付録単体(もちろんパソコンは必須)だけでも良いが、アンプとペアにしてスピーカ再生で楽しむ際にはやはり音の方向性を統一したいものだ。

 だが、先に書いたようなプレミア状態が形成されてしまっている以上、同じ方向のコンセプトで作成されたラックスマンの基板同士を接続して利用するということは、もはや儚い望みに過ぎなくなってしまっている。
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LXU−OT2ボードの裏面(表裏にパターンがある) ボード上のロゴマーク

ボードの型番が記されている。

<LXU−OT2>

LUXMAN社製(LX)のユニット(U)、
音楽の友社(OT)との2番目の製品と言うこと。

<ボードの機能概要>

 ところで、今回の付録はDAC機能(デジタル・オーディオ・コーデック)の乗った基板。

 しかも市販されているDAC製品と異なり、これはいわば「音声ボード」なのでパソコンとのUSB接続が必須要件となる。パソコン上での音楽再生用のソフトウェア(iTunesやメディアプレイヤーなどのソフト)が必須であり、パソコンに接続してS/PDIF出力の音声機器として認識させないと使うことが出来ないものだ。

 ちなみに小さな筐体で売られるDAC製品のなかには違う系統のものもある。デジタル入力端子を持っている製品などは、他の再生機器へ接続してデジタル信号を入れてやればそのままアナログ信号へ変換して出力してくれる。だから、それらの専用機器ではパソコンへの接続(パソコン上のソフトの介在)は不要となっている。

 そうした製品では、何でもよいのでデジタル出力する機器からの信号を、光または同軸のケーブルで接続すればよい。

 たとえばBlu−rayやDVDなどのプレイヤーやレコーダー、ハードディスク・レコーダーなどでデジタル出力端子を持っている機器と接続すればよい。それで機器(DVDプレイアー等の家電製品)内臓の貧弱な変換回路ではなく、別体の専用品として設計・製造がなされた品位の高い回路でデジタル・コーデック(デジタルからアナログへの信号変換)が可能となる。
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 そうした機器が存在する一方で、この付録はパソコンに内臓された音声ボードと同等のものだ。

 USBケーブルでの接続が唯一の信号入力経路となっているが、それ以外にデジタル信号用の入力コネクタは用意されていない。オプティカル端子(光ケーブル入力接続;TOSLINK端子)やコアキシャル端子(RCA同軸端子)が入力側として設けられていわけではないのだ。だからこの基板だけの単独状態ではオーディオ再生機器としては利用出来ないので注意が必要だ。

 パソコンを制御機として接続し、そのOS上で基板を認識(S/PDIF出力機器のひとつとしてボードを登録)させた上で、お好みの音楽再生用のソフトを起動する必要がある。アップルの「iTunes」やWindows標準添付の「メディアプレイアー」、あるいはフリーソフトの「foober2000」などでオペレーションしてやらなければいけない。

PCM2704 チップ

基板中のシルク印刷、<U5>のICがこのボード上の”キモ”となる。

DAC用のチップであるPCM2704。
DAC回路の<PCM2704>だ。
(この基板のチップはBurreBrownプロダクツ TI社製)
*テキサス・インスツルメンツ社は
 いわずと知れた半導体の最大手の
 製造供給メーカ

基本機能として、
STEREO AUDIO DAC WITH USB INTERFACE, SINGLE-ENDED HEADPHONE OUTPUT AND S/PDF OUTPUT と仕様書に明記されている。

要するに、USBからのデジタル信号入力をヘッド・フォン出力と
S/PDIF出力が可能となる機能を持っている。

しまも、このチップの仕様(推奨例となる基本回路を併記)は公開されていて、量産品である。・・という事は安価で利用可能であることを意味している。
だから、仕様に基づいた回路を組めば、誰もが安定した性能を享受できる。高性能のデジタルオーディオ機器を驚くほど安価で作ることが出来るがるのだ。

つまり、仕様を守って回路を組めば、USBからのデジタル信号を変換して、アナログの音声信号へ復号すると共に、さらに一般的なデジタル入力機器への信号を出力する、という基本的な機能が実に簡単に実現できることになる。

チップ内の回路動作用の電源供給回路、バッファリングされたデジタル信号(USB信号)を復号させるためのクロック発振回路、それに出力されたアナログ信号を増幅するアンプ回路をつければ、オーディオの入り口となるDA変換・アナログ復号機能ががお手軽に達成できてしまうというものだ。

<ボードの利用方法>

 この基板にはDAC機能としてのデジタル・アナログの信号変換だけでなく、ヘッド・フォンアンプとしての増幅回路(可変)が装備されている。さらにまた、アナログ信号に変換された微弱な音声信号をアンプへつなげるレベルに増幅する固定出力の回路もある。

 ヘッド・フォン出力においては固定出力ではないので便利な仕上げになっている。基板上のボリュームつまみで音量を調整することが出来るという事は、パソコンソフトでの音量調整が不要となる事を意味している。パソコン上での音量調整の操作に関しては好き嫌いもあろうが、それをしなくて済むこの仕組みのほうが私には使い勝手が良いように思える。

 ところで、ヘッド・フォン出力のレベル増幅ならば賄えるが、この基板のみでスピーカをドライブするほどの信号出力は出来ない。

 だから接続用のスピーカ端子は用意されていない。スピーカーを使っての再生を楽しもうとする場合には、ライン出力(出力用のRCA端子が付いている)の信号を改めてRCAケーブルで外部のパワーアンプに接続する必要がある。


 だから音の入り口から出口までの一環した再生を今号付録のみで達成できるのは、名称で謳われている「ヘッド・フォンアンプ付き」という部分が表す通り、ヘッド・フォンを繋げてボードによる再生音を聴く事というものになる。

 モバイル使用時でのヘッド・フォン利用ならともかく自宅での据え置きという状態でヘッド・フォンを利用する機会は滅多にない私にとっては、RCAからの信号固定出力をアンプに繋いでスピーカーで楽しむというのが、このボードのもっぱらの利用形態になろう。
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ONKYO製音楽再生専用パソコン HDC−1.0S

<HDC−1.0S>  ONKYO製音楽再生専用パソコン
音楽再生に特化した仕様で仕上げられてた、凝った造りになっている。
ONKYO製音楽再生専用パソコン HDC−1.0S

パソコン内部のDAC基板

アナログ回路設計に特に力が入れられている。

<市販されているオーディオボードとの比較>

 ところで私の環境では、据え置きパソコンとしてはONKYO製の音楽再生専用に特化したものを持っている。ONKYO自慢のDAC回路が搭載されていて、さらにアナログ再生を意図して充分な回路設計がされている基板を搭載したものだ。

 「音楽再生専用」を標榜した製品(「のんびり行こうよ; HDオーディオという潮流」にて紹介)なので、回路自体に多くの特色があり、さらにボード(音声回路)だけでなくパソコン全体として一貫した設計がなされている。ボード上では高品位なオーディオパーツが吟味選定されて回路に使われているし、アナログ増幅でのアースラインにも深い工夫が凝らされている。

 特色があるのはそういったオーディオ・ボード上の信号変換や増幅回路だけではない。パソコン本体の共振防止対策や静音設計としての多くの工夫、デジタル信号とアナログ信号の分離など。そのようにパソコン本体側の機構に関しても意識された多くの内容を持っている。そうした多くの対処でコストが掛かり過ぎたためか、あるいは需要が想定を大幅に下回ってしまったのか。

 残念ながら終了モデルとなってしまい、現在では継続開発されていない。なので、その型番の製品を幻のパソコンと呼んでも良いかもしれない。
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ONKYO製音楽再生専用パソコン HDC−1.0S <GX−D90> ONKYO性のDAC機器

こちDAC回路とアンプ内臓のアクティブスピーカになる。

光ケーブルまたは同軸ケーブルでS/PDIFのデジタル信号を入力して音声を再生するというもの。
DAC回路を内臓しているが、USB機器ではない。
パソコン不要で、これのみで独立して利用が出来る。


パワード・スピーカーの「GX−D90(Y)」。
目を閉じてみると、再生しているのがそんな機械とは思えない実力を持っている。

デジタルアンプのA−933と
スピーカーはJBLの4312M(ミニモニター)のセットで普段は聴いている。
が、このアクティブスピーカーは小粒で接続即再生が可能となっている。
こうした場合のちょっとしたリファレンスにはもってこいのものといえよう。

 しかもそこに搭載されたボード(専用開発品)ではCDを上回る高音質となる24Bit/96KHzのDAC(変換)がされる。このため、パソコンを作ったONKYOはそのスペックにあわせて、Web上に「ハイレゾ」音源を用意している。

 有料であるが、そこでダウンロード・サービスを展開していて、CD録音を余裕で上回る音源を入手することが出来るのだった。ちなみに、私と同型のパソコンが無くても、「ハイレゾ音源」は楽しめる。同社のサウンド・ボードであれば対応が可能なので、これを自分のパソコンに組み込めばよい。またボードが装着できない場合は、外部機器(この付録と同じ方式になるUSBオーディオ機器)も用意されている。だからデジタル音源での音楽再生を楽しむとしたら、もっぱらこのパソコンの占有領域といえよう。

 さて、今回の付録基板に関してだが、こうした状況から考えるとノートパソコンを利用した際の、BGM再生が一番の目的になるのでは、と考えている。

 そこで再生するのはBGMに過ぎないとはいえ、音楽を愉しむ事にはオーディオ製品を利用する際と変わりがないといえよう。じっくりと音楽を聴く訳ではないだろうが、どうせなら、その再生音は出来るだけ品位が良くてしかも高音質のほうが良いに決まっている。そう考えると、さしずめ今回の企画ボードなどは、うってつけの優れもの、といえようか。
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アナログ音声信号用のオペアンプ

アナログ信号の増幅回路

ヘッド・フォン用とライン出力用の2つのオペアンプは共に新日本無線株式会社製の高性能品。
それぞれのスペックは、以下のとおり。

<JRC4556AD>はヘッド・フォン出力用のアンプ回路。
  NJM4556AはNJM4558の出力段の改良で、
  低電圧動作を可能にしたオペアンプ。
 ・2回路入り
 ・動作電圧:±2V〜±18V
 ・高出力電流:73mA

<JRC4558D>はライン出力用のアンプ回路。
  NJM741の入力部をPNPトランジスタに変え、
  低雑音化したオペアンプ。
  高利得で入力抵抗が高いデュアルタイプとして、
  計測器に最適です。
 ・2回路入、バイポーラ構造
 ・電源電圧:±4V〜±18V
 ・ローノイズ 1.4μVrms
 ・高利得・広帯域 100dB、3MHz  
3端子レギュレータ

電源供給回路


5VのUSBバスパワーをボード全体の基本として受けて、この3端子レギュレータやIC等で変換する。

<ボードの接続>

 さて、手元にある付録を開封し、とりあえずそのままノートパソコンに自前のUSBケーブルで接続してみた。

 OSはWindows7の64S版。何らの工夫もなく、単にメモリーを増設しただけのマシンだ。購入のままの素の状態で、HP社製の15インチのノートパソコン(10年夏モデル)だ。ノートパソコンだけれどスペックはネットブック並みではない状態で、ソフト開発にも使えるという、そこそこの製品といえよう。しかし携帯することは考えていなかったので、15インチという大きなサイズである。しかも少し重い。そういった機械に今回の付録を接続した。

 何の手当てもせずに接続した付録のボードが認識されたので、ボード前端部にあるミニ・ジャックにいつも使っているイヤ・ホーンを繋いでみた。メディアプレイヤーを通してすんなりと再生がされ、耳元に音楽が流れてきた。だから雑誌に書かれていたボードの設定などは皆無の、いたってお手軽な状態であっけなく接続ができてしまった。

 そのまま、今度はiTunesで音楽を再生してみた。たとえばノラ・ジョーンズのファーストアルバム。これはCDを購入してあったもので、この試聴のためにノート・パソコン内にリッピングしてみた。いや、どうして捨てたもんじゃない。そこから再生された音は粒が立っていて、想像していたよりも繊細なものだった。
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水晶発振子 DA変換用の基準クロックを創り出す
水晶発振子(銀色のオーバル筐体)


<X1>と書かれた枠内が発振制御回路。

<付録企画への感想>

 コレ大分いいではないか、と改めて感心した。

 私は最初、何を置いても実現に漕ぎ付けた企画(そのコンセプトと価格)に関心したのだった。2800円で購入した雑誌の付録でしかないが、普段は1000円弱ほどの定価なので付録に支払ったコストはおよそ2000円少しといったところだろう。

 デジタル回路とはいえこれは立派な音響製品である。設計や企画、部材の調達や管理、そして確認や製造などのメーカーにおける一連の作業工程を思えば、その工程数は果てしも無いものだったはずだ。とてもではないが2000円の売価で供給できるものではなかろう。ましてや、単一の製品としてではなく、一過性の(その程度の価格に抑えた)付録として世に出せたということが、私には俄かには信じがたい。

 これは禁句なのかもしれないが、先のスピーカー・ユニット用のエンクロージャーの自作セットが付録となった別冊のような例もあるのだ。なんといっても4800円もの定価がついて出版されたのだから、あの時には心底驚いたものだ。

 ユニットの開発メーカーのフォステスクは実に良心的な会社で、自作スピーカ用のユニット単体での販売や収納する推奨エンクロージャーの販売などを長きに渡って継続し、私達自作愛好者の真の味方であり続けている。

 その我らが味方の頼もしい会社は、付録のユニットに適合する新しいエンクロージャーを開発し、ユニットに合わせて販売をしてくれた。発売直後から大人気となって予約分で完売となり製造が追いつけない状況が続いたのだった。ようやく私が入手したのは発売から8ヶ月後のことだった・・。それは木製の製品で2台一組で2900円という価格設定がされたものだった。

 こうした嬉しい事例がある。筋の通ったまっとうな音響メーカーのきちんと開発した優良な製品(ファストン端子付きの内部接続ケーブルや外部接続用のケーブル・ターミナル、定在波の発生防止用になる吸音材なども付属した状態)よりも、「なんちゃって付録」の方が高いのだから、開いた口が塞がらなくなろうというものだ。しかも付録はフォルアタ材を使っている。あんな素材がエンクロージャーに使えるものなのか、どうか・・・。

 だから今回のUSB−DACボードに関しては、関係各位の日夜におよぶ血の滲んだ努力があって初めてこの付録として結実したのだろう、と関心せずにはいられない。後味の悪い前例と比べると、本当に素晴らしい尽力を頂いたものだ、と心底思えるのだ。
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USB(Bタイプ)コネクター USBのコネクターは基板上に固定実装されている。
ミニではなく、”Bタイプ”が付いている。


なお、金メッキ仕上げされたコネクターを持つ素敵なUSBケーブル(A−Bタイプ)が奢られていて、
雑誌にひっそりと付属(付録ケースに同梱)している。
これだけ音が変化するのなら、表紙あたりに記載して、付属することをもっと高らかに謳えばいいのに・・。

 くどい様だが、付録を含めた雑誌の価格を改めて思えば、メーカーの製造原価はいったいどうなっているのかと心配になってしまうではないか。

 製品の構想から始まって、回路設計・検討から試作、訂正、改版と積み上げて熟成させていって、さらにそこからコストに見合った部材の選定と調達、製造(外注や内製)、確認までの気の遠くなるような一連の工程。しかもそうした標準工程を費やしても単なる月刊誌の「付録」に過ぎない、だから普通に考えれば一発で製造終了(フォステスクのように後に製品化してコスト回収するという手立てもあろうが・・)となるものなのだ。

 しかしそうであっても工業製品としての製作過程を積み上げていく必要がある。そうした地味な工程を経て初めて出荷に至ることが出来るはずだ。その間の工程管理や指示やテストや検品などといった付随作業も含めれば、この基板は「諭吉」さんレベルに値付けなければ、とても採算ラインに乗らないのではなかろうか。

 実は私の中では、ラックスマン設計及び監修とはいえ「所詮は雑誌の付録だから」という意識があった。

 品質は確かなものに違いないのだろうが、音質に関してはそれほどのモノではなかろう、と。「ああ、確かにデジタル変換されて、ステレオ音声が再生できますね」といった程度のものだろうとすっかりタカを括っていたのだ。

 これは所詮は雑誌の付録なのだ。だから当然、値段相応のものにしか過ぎないだろう。そこにあまり過剰な期待はしないほうが良いだろう、と・・・。
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林立する電解コンデンサー群
オペアンプへの安定した電源供給や、音声信号用の電解コンデンサー群。

ライン出力、ヘッド・フォン出力、ステレオ音声それぞれのチャンネル、アンプへの入力段と出力段がある。さらに、音声信号が通るものではなく、そしてアンプ動作用の12V電源供給の安定化のためのものが設置される。

それぞれがスペースの関係で置かれていて、シンメトリー化されてはいない。
この辺りがメーカーの流通商品の高級ボードと異なるところか。


音声信号用のコンデンサーはライン出力用とヘッド・フォン用で2回路あり、それぞれ右と左の2チャンネル分のセットが組まれている。
ライン出力側は、
 右Ch用;C31,C38
 左Ch用;C88、C39

最初の(C31,C88)がオペアンプの入力段にあり、後ろがアンプ出力後の信号を賄っている。


ヘッド・フォン側は、
その出力を分岐して、
 右Ch用;C21,C32
 左Ch用;C16、C45

最初(C21,C16)が
オペアンプ入力前段。
後ろがアンプ出力後。


ヘッド・フォン側の信号入力経路はPCM2704直結ではなく、ボード上のライン回路の出力をさらに分岐している。
だからライン回路の影響を受ける。

<ボードの試聴>

 たとえば、先程聴いてみたノラ・ジョーンズ。

 彼女の記念すべきデビュー作の「Don’t Know Why」などはどうだったのか。この曲はデビューを目指してレコード会社へ送った自作のデモ録音を、あまりの出来のよさにプロヂューサーがそのまま使って、CD化したものだ。だから何というかリラックスした独特の雰囲気がある。

 その録音で実現されたなんともいえない空気感は、彼女のボーカルが持つ個性によるものだ。独特の質を持った音声の特性によるところが大きいと言えよう。しかし、そうした個性とは別のところにある、何よりデビューをかけた気合というか、音楽で生きていくのだというひしとした情熱、いわば静かに湧き上がる熱気が彼女のアンニュイな歌声にも伴奏側にも溢れている。そうしたことが明確にこのボードを通した再生音から伝わってくる。

 最初の数フレーズのドラムの響きと切れの良いギター、途中から入るドラムのスネアーと立ち上がった高音のピアノ、それに続く囁きかける様なノラ・ジョーンズのアルトのゆったりとした歌声・・・。

 鮮やかな存在感がそこに溢れ出るような、豊かな再生音が流れてきた。それを聴いて、正直、私は倒れそうになるほど驚いた。
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ICソケット(8PIN)仕様

ライン出力とヘッド・フォン用のオペアンプは
それぞれ共に基板へ直接実装されていない。

これは、今企画の目玉の一つ。
オペアンプをお手軽に交換して楽しみましょうという内容。
ソケット式なので、抜き差しに半田ごてとの格闘はいらない。

2回路入りで12V動作のオーディオ用オペアンプは多岐に渡り、内外の半導体各メーカーから販売されている。

オーディオ用や計測器用を選べば、充分な性能が保証される。


1個50円から高いものになると3000円まで。
(スペックを満たす)好きな製品を選択して、それぞれのチップが持つ再現性(音色)を楽しめる。
(実際、100円や170円ほどの製品へ置き換えると驚くほどの変化が出る。もちろん、デフォルトのチップも性能は高く、そのままでも充分な内容だろう。なお、同一機能を持った低ノイズの選定品が用意されている。)
だから財布との相談になるが、誰もが取り替えて変化を愉しめる。
RCAコネクター(音声アナログ出力)

ライン出力用のRCAコネクター


コストとの格闘であることは充分に理解しているが、出来れば普及品でなく、金メッキ品などを採用頂くと手間要らずで嬉しかった。

 さすがに日本を代表する偉大な音響メーカーの企画した製品、これは本当に買ってよかった、と。

 コスト投資の満足感は100%以上。近年まれに見るヒット、久々のいい買い物をしたものだと一人笑みを浮かべずには居られない気持ちで一杯になったのだ。

 いや、その再生音はとても「雑誌の付録」といったレベルのものではなかった。諭吉さん何人かに出動願って製品を買いました、といっても誰もが信じるに足りるのではなかろうか。

 しかもこの低価格でそれを実現させたという気概に関心せざるを得ないし、なによりも製品として得難い優秀さがそこにあった。
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ヘッド・フォン用音量調整ボリューム

ヘッド・フォンの音量調整用のボリューム
2連の小型のもの(20Kオーム、Aカーブ)が実装されている。
ヘッド・フォンジャック(ミニプラグ用端子)

ヘッド・フォン端子

もう限界、というまで奥まで差し込まないといけない。
半端な差込み状態だと、再生音が小さかったり、
ステレオに定位しなかったりするので、要注意。

 ノラ・ジョーンズでこうなら、ダイアナ・クラールあたりを再生したら一体どうなってしまうのか・・・。

 その期待を込めて彼女のパリでのライブ演奏などもあらためてパソコンに取り込んで聴いてみた。

 こちらもかなりいい。ライブの雰囲気というか、会場の澄んだ空気感や演奏者の緊張感が伝わってくる。しかもいままで気付かなかったライブ会場でのしわぶきや、彼女のささやかなブレスなどといったディティールまでもが、そこからはっきりと聴こえて来たではないか。

 これは、まる一日以上に渡ってエディ・ヒギンズ(ピアノトリオ;JAZZ)の演奏を連続再生して、愛情を込めてこの小さな回路をエージングした結果だろうか・・・。
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電圧増幅回路

電源系の増幅回路。

右は3端子レギュレータからコンデンサーや抵抗、整流用のダイオードなど。基板上にも基板実装チップの小さなパーツがところ狭しと設置されている。増幅インダクターからの発振が話題になっている。

先達の血の滲む調査の結果、L1とC10のパーツが問題を含んでいるようだ。
電源系の回路を俯瞰する

L1のインダクターを遮蔽するとノイズが低減されるとのこと。
コイルがケーシングされていないところが、よろしくないらしい。

 ちなみに雑誌には、「是非、付属のUSBケーブルで接続して聴き比べてください」とも書かれていた。

 デジタル信号の伝送に線材の良否は無関係、もしそこで減衰があってもレベルが低下するだけで信号の欠落(ビット落ち)は通常は起きないので「音としてのケーブルがもたらす影響は皆無」というのが、私の認識だった。デジタル系のワイヤリングに関しての<ご託>については、「いったい何をナンセンスな事を」と、巷間でまことしやかに言われていることに前から疑問を感じていたのだった。

 これにも実は面食らった。明らかに音の明度が変わったからだ。基板だけで肝を潰している場合ではなかったのだ・・。

 霧が晴れるとまでいうと大げさだが、薄いベールで覆われるようにかかっていた僅かな靄が取れるというか、一段階、明瞭に音が響くようになったのだ。それはかつて無かった新たな体験だった。そこにはオーディオ少年の頃に味わったものと同質の素朴な驚きがあり、豊かな世界が広がっていた・・・。
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ONKYO ND−S1(インターフェイス)とCR−D2(レシーバ) <ND−S1>

iPhone、iPod用のデジタルインターフェイス機器

これはにS/PDIFのデジタル信号を取り出しているだけの役割のもの。

<再生音の比較>

 CDを入れてミニコンポ(CR−D2;ONKYO製のコンパクトオーディオレシーバ ;CD付きのデジタルアンプのセット「のんびり行こうよ; デジタル・アンプを物色する」にて紹介)で再生して、それを同じイヤ・フォンで聴いてみる。こちらは可もなく不可もなく。普通に聴こえていますねといった音で、あえてこのセットでイヤ・フォンを選択して聞くことはあるまいと思う音がしている。

 それからiPhone4Sのままで再生してその音を比べる。そこでは改めて表現するまでも無い、普段聴き慣れた明瞭な音が聞こえてくる。その音に関して、比較して判ったのは、クリアーさは充分なのだが背景まで浮かんでくるような特別な空気感を伴ったようなものではない、ということだった。

 普段の移動時などで、私はもっぱらiPhoneかiPod NANOを利用している。それらを使ってイコライザーをかけずに、音楽をノーマルの状態で聴いている。

 その音は決して悪いとは感じていなかったが、こうして改めて腰を据えて聴いてみると、イヤ・フォンから流れてくる音には歴然とした違いがあった。音質が悪いとか何かの文句をつけるわけでもなく、iPhoneの音でもまったく何の問題もないし存分に楽しめるのだ。けれどこうして比べてしまうと、少し粒の感じが違うように思われる。
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<CR−D2>

ONKYO製のCDレシーバ。

アンプ回路ではアナログ信号の増幅ではなく、
デジタル信号化して増幅をおこなっている。

 子供は少し前に買ってあげたiPod Tatch(第四世代。しかも、買った途端に新モデルが発売となる)の音が良くないといっている。結局、先日新たにSONYのウォークマンを購入させられて、それに切り替えた。それに友人のなかにも「iPodは音が悪い」といって譲らない者もいるが、私にすればそんなことは少しも無くて、iPhoneやiPodの音が悪いと感じたことは皆無なのだった。そのクリアーな再生音は素晴らしいと思うし、その世界には不満はまったくない。

 そうした感想を抱いていたのだが、改めて今回比べてみて気が付いたのは、そこではバックで演奏されている一つ一つの楽器の音があまり明確には立ちあがってこないように感じられる、ということだった。十把一絡げというか、その他大勢に取りまとめというか、言って見ればそんな感じだ。多くの楽器は、背景として完全に均されてしまっている。

 臨場感はあるのだが、流れてくる音楽からは「そこにある雰囲気」というか、別の表現をすれば「音の味」というか、あるいは「場の色あい」とても呼ぶべきものか、そうしたうまく表現できない何者かがあまり感じられないのだ。

 両者から流れるのは等しく明瞭な再生音なのだが、実際の(録音された)源音の周辺には密かに漂う何かがあって、しかしそれが再現されずに欠落してしまっているように思える。あるいはクリアさの代償として、何ものかに変質してしまっているのかもしれない。
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ミニ デジタルオーディオセット TOPPING社製
ミニマムデジタルセット

DACとアンプの組み合わせ。



TP21(上)はアンプ
D20(下)はDAC
となっている。


失礼。
「峰 富士子」嬢は
単なるご愛嬌。

 いずれにせよ、その存在やそれが醸し出す色合いのようなものが、付録のボードと比べるとすこし違うような気がする。

 そして最後にiPhone4SをND−S1(ONKYO製のiPhone接続専用のS/PDIF変換機器)でデジタル信号を取り出して、Topping社製のDACを経由し同社製のデジタルアンプへ接続して再生、とさらに試聴して付録の再生音と比べてみた。

 iPhoneについては説明するまでも無いが、比較したもう一方のTopping社製のセットについて、ここで説明しておくほうが良いかもしれない。


 判りやすくそのセットの品質を把握してもらう為に、その定価を記述しておくことにする。

 なぜなら、今の製品スペックはいずれも優秀であって、その数値データからは製品ランクや音質といった内容を汲み取りずらくなっているからだ。特にデジタル関連の製品はそうした特性が顕著といえる。

 DAC機器の製品名は”D20”といもので価格は1.3万円ほどになる。それに繋いだデジタルアンプの製品名は”TP21”というもので、こちらは少しお安く0.7万円弱。そしてiPhone(iPodを接続しても良い)からデジタル信号(S/PDIF信号)を取り出すための接続ドックがONKYO製の”ND−S1”というもの。こちらの価格は1.3万円。オーディオ製品と呼べるような部類ではなく、いずれもパソコン周辺機器といえるもので、どれもみな大した製品ではない。
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TOPPING製 デジタル変換(DAC)機器

<D20>

TOPPING製 デジタル変換(DAC)機器
TOPPING製 デジタル変換(DAC)機器

裏面のコネクターパネル

コアキシャルの入力端子(RCA同軸)、及びアナログのライン出力端子(RCAジャック)は金メッキ品が使われる。

 この構成ではデジタルアンプが外付けになる。DAC機器の中にヘッド・フォン出力を含めたアンプとしての機能(アナログ信号の増幅回路)がないためだ。

 そこでDACで一旦アナログ化された音声信号(ライン出力)をアンプへと導き、その内部回路で再度デジタル化する。その信号をデジタル状態のままで増幅しで再びアナログ音声信号へと変換する。その結果として取り出された音をヘッド・フォン端子を使って聴く、というものになっている。

 信号変換の経路としては次のようになっている。

 デジタル信号の取り出し―>D/A変換―>それからA/D変換・増幅―>再びD/A変換、という信号変換の経路を通している。考えてみれば随分と余剰(冗長)な構成になっている。それぞれの機器の性能が次第に重なって、最終的な音声の質に反映されてくるといった内容だろう。


 だからそもそも、相互の再生音を比較するための環境構築の度合いには、実は大きな差異があるといえよう。

 そのせいだといったらどうかと思うが、その環境と今回の付録基板の音を比較してもさほどに明確な差が開いてこないように思われた。波形の確認という計量化した世界ではなく、単に自分の聴覚を頼った感性での比較を行っただけなのでなんら参考にはならないだろうが・・。

 そうした前提を踏まえ、感覚としての試聴比較の実施結果を敢えて言えば、俄然「付録君」が頑張りを見せていて、まるで遜色がない。両者の音質に関しては、明確に甲乙と判定するほどの大きな差異がなかった、といっても良いだろう。

 一方は都合三人ほどの諭吉さんに登場願うコストでもって構成されたシステムな訳だが、結局、そこの変換経路の多さ(余剰さ)が足を引っ張っているのかも知れない。
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TOPPING製 デジタルアンプ TS−21 <TS21>

TOPPING製 デジタルアンプ

<低価格で楽しむデジタルオーディオ>

 ちなみにTopping社の製品はどれもみな驚くような低価格だが、その品質は悪くないものがある。

 ケースを開放して確認してみると、基板の出来は良くてパターンや実装は美しくて無駄がない。使われているパーツもニチコンやPIONNERの電解コンデンサなど、音に関係する部位のものは高品位の日本製オーディオパーツが選定されている。そしてRCAジャックやスピーカターミナル(バナナプラグを装備)などはすべて金メッキが施されているし、筐体もアルミ材の厚いものだ。信号の損失はそうした工夫によって低いレベルに押さえ込まれている。

 特に前面パネルなどからは低価格の様相は少しもない。価格からすればとても実現できない内容を持っている、好製品なのだ。さすがに海外(中国)製造の意味に溢れていて、国内で企画・設計・製造したら、とても3倍程度の価格では収まるまい、と想像される品位のものだ。

 機器構成の冗長性が影響して明確な品位の差は少ないと書いたが、しかし大きく違っている部分もある。冗長ではあっても、電源がそれぞれの回路で独立していてしかも充分な量が供給されているということだ。勿論、音の中に感じられる透明感やスケール感に関しては両者では歴然とした違いがあるのは確かだ。信号に対するノイズの類は比較にならないといえよう。(Toppingの構成の方が冗長なのだが、音はクリアに感じた。)
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 余談だが「TOPPING」は高級オーディオとは別の世界に存在する製品だろう。

 オーディオ製品というよりも「デジタル機器」や「パソコン周辺機器」と呼ぶほうがむしろぴったりしている。国内のユーザの中には「ろくな音がしない」と貶す向きもある。中国で立ち上がったメーカだが、そもそも彼らには「オーディオ(再生音響)製品を製造している」という意識はないだろう。企業理念としてはあくまでも音響関連の「デジタル機器を開発している」だけなのだろうと思う。

 しかし、販路を求めてデジタル市場で広く世界規模(今はアジア地区だけを視野にしているだけだろが)での競争力を獲得するためには、使うパーツにも神経を配る必要がある。そうした志向で企画・開発、運営しているだけなのかも知れない。

 伊達に「音響メーカー」を標榜しないところが、かえって潔いではないか。私などは彼らの立ち位置に共感してしまうが、どうだろう。

TOPPING製 デジタルアンプのリアパネル

リアのライン入力端子(RCAジャック)、
及びスピーカ端子(バナナジャック)は金メッキ品が使われる。
TOPPING製 デジタル機器のフロントパネル


TOPPING製 デジタル機器のフロントパネル

アルミの厚板が使われる。(国産でも見かけることがない様な威厳の溢れた板厚だ)

 付け加えていうと、彼らの持つ製品群の実力や可能性には侮れないものがあると思う。魅力あるコンセプトの製品が続々と開発されていて、製品企画力や価格競争といった面で本家の日本製品はすでに水をあけられているのが現実だ。

 もしそこに、開発の低調な日本で活躍の場を失ったメーカーの技術者、音の色や味付けまでもが吟味できるような昔堅気の優秀な技術者、が数名ほど行って尽力すれば、スペック面だけでなく音の質まで視野に入れた様々なチューニングを施すことができる。そうなれば瞬くまに、多くの回路まで手が入れられて改善が施される事になるに違いない。

 そして、もしそうした取り組みが彼らのデジタル機器の開発現場で為されれば、とてもではないが日本製品ではもう太刀打ちが出来ないといった一流の音響機器に変貌してしまうことだろう。
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 実は、TOPPING機器側のシステムでヘッド・フォン端子を使うことはまったくない。

 普段は、先の紹介でデジタルアンプが担っていた部分を自作した真空管アンプや他のデジタルアンプと切り替えて愉しんでいる。再生では皆、スピーカーを接続して鳴らしているからだ。そこでのDAC機器やS/PDIF変換機器は、もっぱらデジタル音源の供給源として利用しているわけである。

 だから付録のボードと、比較した側のシステムとでは、そもそもの利用局面がまるで違うのだった。

 両者比較の結果が大きく開いていれば勿論納得できるが、それが僅差に過ぎないので、私としてはすこし気になるところだ。設置しているスペースは何倍にも及ぶし、掛けたコストは10倍ほどの差となるからだ。でも、だからといってそれが精神面に響くかといえばそういうことにはなってこないだろう。

 現状の利用方法がそもそも両者でまるで違うのだから、そうしたことで考えるなら両者のコスト差はあまり大きな問題にはならないといえようが、しかし仮に私がヘッド・フォンの愛用者だったとしたら多分もう少し愕然としたに違いないだろう。

通電中のボード

上に透明のカバーが付くわけだが、何を置いても付属の6角棒の足のパーツは是非つけておくべき。

(基板裏面に空間を確保して使うべきだろう)
基板(パソコン用DACボード)はむき出しの状態だ。


だから、外部からのノイズも拾いやすい。
基板裏面でのショートも発生する。

実は私は利用中に不用意に裏面をアルミ板に載せてしまった。

パソコンは瞬時にブラックアウト。
電源を投入しても反応は皆無。まさに青くなる事故だった。電源バッテリーを一旦ノート裏面から取り外して、再度取り付け、改めてアダプターに接続してやっと再起動が出来た。

サージが電源まで通電しているUSBケーブルを逆流したようだ。

皆さんも、是非、ご注意を。

 スピーカーから音を再生する機会が少なく、普段の状態で音楽をヘッド・フォンで聴いているような状態だったとしたら、今回の付録ボードだけでも充分だろう、と感じてしまったからだ。


 何故このボードだけで充分なのかと言えば、単純にこの付録の企画内容が理由となろう。

 パソコンのUSB接続によるバス・パワーで新たな外部電源の用意が不要だし、ヘッド・フォンでの音量はパソコン外で調整できるし、RCAでのライン出力も備えている。「いいな」といえる満足感を充分に与えてくれる内容に溢れているからだ。

 これだけで幸せになれるな、と心底思えてくるほど、このボードの内容は良く練られていて、しかもきちんとしたものだ。
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<試聴結果を想う  〜再生音から感じたこと>

 これは仮説だが、こうした試聴の結果からするとヘッド・フォンあるいはイヤ・フォンの持つ性能で、音の色合い等が収斂されてしまう、という事なのかもしれない。

 解像感や音の奥行きや広がりといった計数化しずらいアナログ的ないくつかの部分は、やはりアナログとしての再生デバイスに左右されるのは自明のことだ。だから最終的に音を創り出す機器であるスピーカーやイヤ・フォンやヘッド・フォンが持っている性能やその製品の性格に左右されて決まってくるものだろう。

青色の抵抗をもつボード 2つのボードでパーツが多少違っている。

例えば、ヘッド・フォン出力に直結する抵抗の2つ。(写真のLEDの右横)

ヘッド・フォンのミニジャックの両脇にあるR10(右Ch)とR8(左Ch)とのペアの色に注目して欲しい。

 そもそも私が利用しているヘッド・フォンはSONYの安価な製品に過ぎないし、持ち運んで使っているイヤ・フォンに至ってはパナソニック製の密閉型の低価格な商品、僅か数千円(4千円ほどではなかったか)といった代物だ。

 そもそも比較試聴に適した資材とはおくびにも出せないもの、と呼べよう。

 そうしたことを踏まえて考えれば、その最終端の製品の能力に機器の<質>が収斂される。だからどんなに前段を変えても、結局そこまでで得たすべての性能や積み上げた質といった大切なものは、あっさりと消え果てしまうのではないか。

 たとえば、広大なレンジで再生された周波数(要は豊かな表現となる倍音の成分)が、イヤ・フォンの再生素材の都合であっさりとカットされてしまうといった内容があろう、と思われるからだ。あるいは振動板の運動能力とかが響いて、音の定位や像がぼやけると言った事象が発生するのではなかろうか。

 私が利用しているようなレベルのイヤ・フォンを利用する前提の場合には、この付録ボードのみでいいではないか、と徐々に思えて来たものが確信になりつつある。

 もうこれで必要にして充分、そうした万人向けの性能を持っていると断言できるのでは、と改めて思えるのだ。
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勿論、両ボードでの抵抗値は33オームであり、
カーボン皮膜と思われるその材質は同一だ。


まあ、両基板の誌h外は他にもあって、
例えばPCM2704のチップや電源回路用のコンバータチップなどが微妙に異なっている。



設計企画が済んで、販売予測も立って無事に部材調達も完了。
さて、あとは出来上がりを待つのみだ、
という状況で雑誌連載記事への反響が想定を上回る勢いでぐんぐんと高まっていった。
(数号に渡って特集が組まれていた。)

そんな感じが原因であろうと思われる。
製作開始をした後に、当初予定した製造数を大幅に増量したためだろう、きっと。
緑色の抵抗を持つボード


異なる書店(購入場所は共にさいたま市内)で確保した2枚のボードで
実装された抵抗等が別品となっている。

 実はあまりに素晴らしかったので、STEREO誌に記載された改造を試みるために、加えてさらに予備として確保しておこうと、私はもう一冊(都合、合計で3冊)を確保した。

 今、手元にある2台を見比べると、両者のパーツには若干の違いがあった。ヘッド・フォン出力端子横(回路的には信号出力の前段)の2個の抵抗、それに電源系を構成するチップが違うものだった。電源の3端子レギュレータ以外のU3とU4のチップがそれぞれで異なっている。

 抵抗に関しては、値は勿論おなじものだが一方は鮮やかな青そして片方は緑の背景色を持っているものが付いている。雑誌の記事では「この抵抗を切り替えるとヘッド・フォンでの再生音が変化する」とあった。すでに提供された製品のなかで違いが発生しているわけで、果たして両者(ボード)は同等・同質なのかどうか。

 そこで両方のボードをそれぞれにエージングして比べてみた。エージング、すなわち文字通りその地味な作業は「老人力」の付与である。あの偉大な力を、愛情込めて基板に向かって注ぎ込み、それを受けて基板側では劣化に及ぶこともなく充分に応答してくれたようだ。

 その抵抗の差は音色として、どうも違いがあるようだ。私には青い色のカーボン皮膜色を持った抵抗が乗った基板のほうがヘッド・フォンからは澄んだ音色が流れてきたように感じられた。再現性が透明であるように思われるのだ。幾分かそちらのほうがクリアーで気に入った音だった。

 確かに2つのボードでは違いがあるのだけれど、そもそもヘッド・フォンでの利用は私のターゲットではない。だから極端な話をすれば、抵抗がどちらのものでも構わない、といえよう。
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<感謝の気持ち>

 憧れにしか過ぎなかったラックスマンのロゴが入っているボードが、今は私の眼前にある。

 その基板からは回路上の部品点数を見ただけでは信じられないような音が溢れてくるのだから、それだけでモノを所有するという満足もひとしおのものだが、利用しての充足感も深く満たしてくれている。

 しかもそれを素材として活用して、更に音質を高めていくという滅多に味わう機会が無い、言い知れぬ愉しみまで、そこに広がっているのだ。手塩に掛ける(工夫、改善、エージングなど)ことによって今の音がさらに改善されて、いったいどんな風に変わっていくのかをということを考えてみる。

 あらためて言うまでもないが、この低価格であれば投資はさほど神経を使う必要は無い。

 しかもその小額の投資によって得られる「充足感」は、その負担の少なさゆえに誰もが経験できることだ。潤沢な資金力をもった一握りの人達や特定のマニアだけに用意された高級オーディオのような世界ではなく、このボードによって均等な機会が誰にとっても用意されたのだ、といっても良かろう。

 そうしたもろもろを想像してみる。すると、その可能性と広がりを思っただけで、大きな期待に明るく胸が膨らむではないか。
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