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カメラ;
PENTAX K10−D
2006年発売 ( ボディ価格:オープン;発売時の実勢価格128,000円 )
レンズ;
PENTAX DFAシリーズ (バヨネット KAf2マウント オートフォーカス対応)
PENTAX DAシリーズ (バヨネット KAf2マウント オートフォーカス対応)
シャッター;
電子制御式縦走りフォーカルプレンシャッター(1/4000秒、ストロボ1/180同調)
露出モード;
16分割測光、スポット測光、中央重点平均測光 の切り替え
プログラムAE、絞り優先AE、シャッター速度優先AE、感度優先AE、マニュアル、
ハイパープログラム、ハイパーマニュアル
画素等;
1020万画素、JPEG、RAWでの記録
<K10−D>はPENTAXのデジタル一眼レフのハイエンド・モデル。
PENTAXでは35mmだけでなく<67>や<645>フォーマットのフィルム用一眼レフも発売している。メーカー自身がカメラ・システムを35mmのフォーマットだけでは考えていないので、「フラッグ・シップ」という表現をするとそちらのフォーマット向けのモデルになる。
「フラッグ・シップとしてはスペックが少し足りない、云々・・・」などというカメラ雑誌に対しては「うちはプロユースの645や67もやってますから」というのが、PENTAX開発陣からの返答で、大抵は軽くいなされてしまうのだ。確かにその通りで、風景分野でのプロ写真家は645や67のフォーマットで写す場合、一様にPENTAXを使っている。マミヤやフジ、ゼンザブロニカなどのメーカーがあるが、PENTAXのシェアは圧倒的だ。
35mmフォーマット機という特定をした場合、このボディはハイエンド・モデルなのだが、あくまでもメーカーでのフラッグ・シップ機では無い。しかも他メーカーも含めたデジタル一眼レフの市場で言えば、<中級機>のひとつというところに落ち着くスペックのものだ。
このカメラの型番は、PENTAXでは伝統ある<K>だ。エッポク・メイキングな呼称であり、メーカーにとって大きな転換点の際に登場する<King>と命名されたボディは、実に野心的ではないか。今までの小型・軽量路線とは異なりずっと大型であり、従来の小型・軽量機からの変化はフィルム・カメラの名機<K2−DMD>の登場時を彷彿とさせる。
<画質革命>というキャッチ・コピーがある。このカメラの開発コンセプトを明快に表した言葉だ。被写体にじっくり向き合いましょう、というメーカーからのメッセージがひしひしと伝わってくる。
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販売価格はオープン・プライスで、発売時の平均価格は128,000円程度。今では、その座を2008年初頭に登場した後発の<K20D>に譲って、販売完了となった。
<K20D>はイメージ・センサーがK10Dのもの(CCDの10万画素)ではなく、さらに進化したものに変わっている。ノイズに強くダイナミックレンジの広いC−MOS方式へ切り替えられている。さらに、イメージセンサーの画素数も大幅に増えて14万画素となっている。
K10Dを私が購入したのは、発売後一年を過ぎて、値段も落ち着いてきた頃だ。2007年の冬、新品では10万円(ヨド○シ・カメラなどでは98000円)を切り、中古でも75、000円くらいまでに値段が下がってきた。新機種が出るとのアナウンスは無く、もうじき年末となる頃、年末商戦の値引き扱いとして新品84000円ということで、いつもの西新宿のカメラのキタムラで購入した。
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<Ist−D>から数えると、私にとっては二台目のデジタル一眼レフとなる。
基本設計のステンレス・プレートによるシャーシは、このカメラも初代の<Ist−D>と同様であり、その構造を受け継いでいる。ボディ外装は相変わらずエンジニアリング・プラスチックだが、特筆すべきはシーリングの構造だ。ボディ全体が防滴・防塵構造なのだ。
よくこの価格設定で実現出来たと思うが、「防滴・防塵」はPENTAXでは二機種目。未だにプロの過酷な利用に耐えているメカニカル・カメラの名機、私も愛用(というか愛蔵)している<LX>以来のものなのだ。
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主な機構としては、<Ist−D>とほぼ同じだ。
「16分割の評価測光システム」、「光学式の絞込みプレビュー」、「ペンタ・プリズムによる明快なファインダー」(特に視野率が高い)、瞬時にモードが切り替わる「ハイパー・システム(露出制御の切り替え機構)」、などが搭載されている。カタログ上のスペックは従来機とあまり変わっていないが、フォーカスや測光の部分はアルゴリズムが改変されていて、進化した新世代のものとなっている。
ファインダーに関しては、この機種でも非常に優秀だ。視認性に優れ、立体感があり、細部まで鮮明だ。
<Ist−D>でも書いたが、<Z−1P>や<MZ−S>でおなじみのハイパー・プログラムやハイパー・マニュアルが搭載されている。実に使いやすいもので、ボディーをホールドした状態で右手の親指と人差し指により前後のダイヤルを操作して、カメラ任せのプログラム露出から任意の値に切り替えて、「絞り優先」や「シャッター優先」に瞬時にシフトする仕組みだ。
このホールド方法は、実はバドミントンのグリップと同じ。中指、薬指、小指でグリップし、親指と人差し指は開放する。親指をずらしてバックハンドに切り替えたり、人差し指の位置を変えて微妙なコントロールを調整したり、スマッシュの力を加えたりするのだ。中学三年から高校生の間に熱心に取り組んだバドミントンのグリッピング同様に、開放した親指と人差し指で、前後のダイヤル(絞り値とシャッター・スピード)を調整する。今では確信に近い状態になっているが、多分、ハイパー・システムの開発者は実業団か市民サークルのバドミントンをやっている人なのだろう。
さらに、このボディからは、「感度優先AE」というシフトの仕組みが搭載されている。「絞り」や「シャッター」は光学的に測光値を切り替えて「絵」を想いのままに表現するために利用するものだが、さらにデジタル・カメラならではの設定が出来るのだ。
露出感度はイメージセンサーで像を捉える場合の感度だが、従来の「絞り値」や「シャッタースピード」という露出を決定する要素に、この感度を加わえて制御ができる。
従来の二次元的な縦横(絞りとシャッタースピードの二要素)という「光の量」のコントロールだけでなく、言うなれば三次元的な<深さ(感度)>という要素でも調節できるので、写真としての表現の幅が広がるのだ。
予断だが、さらに最新機種の<K20D>ではダイナミック・レンジまで調整できる。フィルムで言えば「ラチュード」だ。ネガやリバーサルのフィルムでは露出範囲は決まっていた。範囲外は黒つぶれや白とびとなっていたのだ。しかし、それも設定で拡大が出来る。こんな部分までもが調整範囲となっているのだ。フィルムというメディアの性能に縛られないデジタルならではの仕組みだ。
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液晶パネルは2.4インチの大型だ。
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<Ist−D>から比較するとふた回りほど大型のボディ。
グリップ部分も大型で、握りやすい仕組みになっているが、実はこのグリップ、改造が出来る。サービス・センターでの受付(有償)で既存品よりさらにグリップしやすい形状のものに付け替えてもらえるのだ。この新しいグリップが実にいい具合で、しっかりとボディのホールドが片手で出来る。
PENTAXのサービスセンターは三井ビルから中央ビルに移ったが依然「西新宿」にある。会社のすぐ近くにあって、何かと便利だが、ここに持ち込めんで依頼すれば一時間ほどで改造してもらえるのだ。
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内臓ストロボは、私にとっては一眼レフでの撮影ではほとんど利用しないので、本当は無くてもよいものだ。
このボディでは、レンズ径が大きくても照射光が「けられない」ように、あるいはレンズ中心からの距離をとる事で「赤目」を防ぐために、ポップアップしたときの高さを稼ごうとしている。そのため、おでこの部分が妙に張り出しているのだ。どちらかといえば形状的には邪魔ですらある。
唯一、苦情を言うとすると、この部分になる。
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フォーカス・スクリーンはフィルム・カメラ譲りのピントの山がつかみやすいナチュラル・ブライトマットU(プラスチック製)。
このボディでも<Ist−D>と同じくスクリーンの交換が出来る。クラスから考えれば必須の機構だ。元々着いているのは、オート・フォーカス用なので「全面マット」タイプのもの。私はこのボディでも、<Ist−D>と同じく縦横に分割線が入ったものに付け替えている。(黄金分割に近い状態で構図採りが出来るし、水平・垂直がつかみやすいためだ。)
フォーカス・スクリーンでの明るい結像が、優秀なペンタ・プリズムを通してすっきりと見える。ピントがとり易くボケ具合も良く判る極め付きの明るいファインダーを備えている。この特徴は、ぜひとも今後引き継いで欲しい点だ。
私はファインダーに、高倍率アダプターの接眼レンズを着けている。視度調整をした上で、ファインダーの像倍率を自然な状態で上げることが出来るのだ。
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このボディの特筆部分は、やはりなんと言っても<SR>、シェイク・リダクションの仕組みであろう。
フローティングさせたイメージセンサーを電磁石の仕組みで瞬時にシフトさせる。精巧な振動センサーで揺れやぶれを感知して受光素子を高速で移動させ、結像を補正するのだ。
だから、ボディ部に仕組まれたこの機構のお陰で、どのレンズを着けても「手ぶれ補正」が有効となる。
そのうち、サード・パーティ製の新開発のレンズ(レンズメーカー製のもの)は近いうちにすべてレンズ内補正方式となってしまうのだろう。CANNONやNIKONの二大大手メーカーがボディ内補正の仕組みでないためだ。当然それは、レンズ一本づつの価格に転嫁され、消費者が負担することとなる。こうしたことを考えるとPENTAXのこの仕組みは秀逸で、きわめてユーザの立場に立っているものだ。
こうした姿勢は、もともとマウントの互換を最も大切に考えて基本設計としているメーカーのためだ。
PANTAXの古いレンズ、それはすでに半世紀も前の資産だ。ところが、PENTAXユーザにとっては、それらがすべて現役なのだ。1960年のTAKUMARレンズが、今、手振れ補正付きで利用できるのだ。
ボディと古いM42仕様のレンズを接合するための「マウント・アダプター」は企業吸収によって3倍近い値段になってしまったが、それでもわずか3000円ほどで入手が可能。このアダプター・リングをつければ、PENTAX製品以外の、ドイツ製やロシア製などの世界的なレンズ(M42マウント)が手振れの無い世界で蘇る。
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<Ist−D>から始まる、デジタル一眼レフは、<DA>と名付けられた専用設計のレンズ・シリーズを持っている。
イメージ・センサー(画像素子)のサイズがフィルム時代に新規開発されたものの市場認知が得られずに継続しなかった「APS−C」サイズだ。このサイズは35mmの銀塩フィルムよりも小さな面積のものだ。このため、規格に応じて作られたレンズの径も、その面積に合わせて小型化される事になるのだ。
従来の35mm用のレンズでいえば、この新たなイメージ・センサーに対する場合にはレンズの画角への相対比が変化し、焦点距離での換算値でおよそ1.5倍の扱いとなる。逆に、この規格のデジタル専用レンズを35mm用のボディに使うと、イメージ・サークルが合致しないので、フィルム上は丸く縁が切られることになる。
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