「吾野」駅からは、西川小学校を目印にして山へと入っていく。学校の坂を越えると家が立ち並ぶ里(「長沢の集落」)に入って「高麗川(こまがわ;荒川水系)」に出るが、「吾野橋」を渡って川沿いに下って東吾野方向に歩く。高麗川は、彼岸花で有名な「巾着田(きんちゃくだ)」の横を流れる日高の川で、ここはその上流域だ。川底の石も綺麗で、まさに絵に描いたような清流だ。
「蛍 生息地」の看板がでていたが、夕立が去った後の気持ちの良い夏の夜、この河岸を散歩したらどれほど素敵だろう。
夏の夜、父親が「ちょっと来てみろ」と私を外に連れ出すと、家の前の水路(農業用水から分岐した小さな流れがあった)に数個の淡く光る物があった。静かに近づいてみると、それはホタルの光であった。就職して大分経ってからで、多分30才に近かったと思うが、成人してからホタルを近くで見た最初だった。
高麗川の澄んだ流れをみていたら、そんな忘れていた15年以上昔の出来事を、ふと思い出した。
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