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2009.04.30
裏高尾;日影沢を登る

アクセス;
 JR中央線―高尾駅または京王線―高尾駅 より小仏方面バス(日影バス停下車)

コース;
 高尾駅北口バス停より 小仏行き(日影バス停下車);乗車時間約15分
    ―休日はバスが大変混雑するが、増発があり2台が一度に発車する。

 日影バス停〜ウッディハウス愛林(いろはの森分岐);10分、〜日影沢始点;45分、〜城山分岐;40分
 〜一丁平;20分、〜四号路分岐;20分、〜いろはの森・日影沢出会;35分

カメラ;
 PENTAX K10D

レンズ;
 PENTAX DA 18−55mm  F3.5−5.6 ALU
 PENTAX DA 50−200mm F4.0−5.6 ED
 PENTAX DFA 100mm F2.8 MACRO
 PENTAX FA135mmF2.8

三脚;
 ベルボン ULTRA STICK50

 (画像添付時に約30%程度に圧縮)


 ワンゲル部 『恒例 春のハイク ; 筑波山(つくばさん)でカタクリを愛でる』は手術後のこともあり不参加だったが、やはり春の山へは行きたい気分でいっぱいだ。ゴールデンウィークの今となっては、すでに<春>は過ぎてもうすっかり初夏になってしまったが、若葉萌える高尾山へ出掛けてみた。

 ゴールデンウィークの高尾山(たかおさん)

 紅葉の時期にも大変なことになるが、ゴールデンウィークも同様ですさまじい混雑になり、毎年いやになる。今年は「ミシュラン」の三ツ星登録の影響で、さらに人気が高く一層の人混みが予想される。「高尾山口」からのコース(一号路、琵琶滝、稲荷山の各コース)は絶望的だ。

 さて、今回の目論見。自然溢れる初夏の高尾を愉しむため、「日影沢(ひかげさわ)」林道から裏高尾のコース取りで人ごみを避け、静かな低山歩きを楽しもうというものだ。

 <2007・04・21;裏高尾を登る;穀雨> のページ を表示します。
 <2007・04・29;裏高尾、日影沢を登る> のページ を表示します。

日影沢
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 「高尾山」は自生する独自の固有種も含め、自然あふれる特異な環境を持っている。以前にも書いた事だが「新宿」からわずか一時間足らずの大都市近郊でありながら約1400種もの植物が溢れている。

 特に四月中旬から五月の時期は、萌え出る新緑が眩しさをまして実に楽しい季節になる。

 しかも、この山は他の低山と違い杉やヒノキなどの針葉樹はきわめて少なく、鮮やかな広葉樹林で覆われている。これは、修験道の聖地として歴代領主に保護されてきたり、明治以降は国定公園として整備・保護されるという歴史の賜物だろう。

 その豊富な広葉樹の林床では、多様な「スミレ」、「ムラサキケマン」や「ヤマエンコグサ」などが紫色の花弁を競いあっている。

渓流沿いに咲くシャガの花

渓流沿いに咲くシャガの花

もとは中国原産の外来種だが、
日本の自然に適合して
沢沿いの風景に溶け込んでいる。
渓流沿いに咲くシャガの花

 混雑を避けて高尾を楽しむなら、「小仏(こぼとけ)」から「城山(しろやま)」方面、いわゆる「裏高尾(うらたかお)」を歩くのが最適だろう。

 今回も相当な人出が予想されるので、「日影沢林道(ひかげさわりんどう)」を歩くことにしたが、このコースは沢沿いの道でほぼ平坦路が中心だし、山側へ向かう途中の「いろはの森」の中でも傾斜は比較的緩やかなものだ。とはいっても高尾メインの<一号路>よりは斜度はあり、森から先は多少きつい登りになる。「裏」といってもコース上に岩場がある訳でもないので、平易な道だと思う。

 アクセスはJR高尾駅(京王線「高尾」でもよい)の北口から「小仏 行き」の京王バスに乗り、「裏高尾」または「日影」バス停で下車する。
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 首都圏の交通情報では毎度渋滞でおなじみの「小仏トンネル」がある場所だが、それは山の向こう側の話だ。

 交通量が多いし、近年、圏央道の工事が続いていて賑やかだが、工事の様子はバスの車窓からも見える。小仏から城山方面、そこから「相模湖(さがみこ)」へ抜ける山道は、眼下に渋滞する道路が見えたり、車音が響いたりする。しかし、高尾側の山中はいたって静かだ。

 JR高尾駅北口から出るバスは毎時一本、土日・祝日には昼の時間帯を中心に増便され、朝などは増発(2台での運用)になる。

 人ごみを避けようと、ゴールデンウィーク中の平日(4月30日)を狙ってみたのだが、そのくせ<平日は毎時一本の運行>だった事をすっかり忘れていた。次発のバスを40分近く待って、目的の入り口となる「日影バス停」へ向かったのだった。

ミヤマハコベ 渓流の様子

 「日影バス停」から道路脇の渓流に沿ってゆっくりと登っていく。すぐに橋が現れて、そこを越えると道は未舗装路になる。「日影沢林道」の始まり(それとも終わり?)だ。

 渓流脇の道はバラスで足に優しく、疲れずに歩くことができる。

 しかも道脇には様々な種類の「スミレ」、「イチリンソウ」や「シャガ」などがずっと咲いている。それらの花を撮影しながら進んでいく。道はずっとなだらかな登りで、写真を撮りながら歩けば平坦な道を行くのと変わらないだろう。手術後の身としてはあまり無理はできないので、足慣らしを兼ねた、こうした平易な道を行くのが丁度よい。

 なにより楽だし、沢沿いの清々しい空気が心地よい。

 しばらくすると「ウッディハウス愛林」というログハウスが現れるが、ここは、森の資料館だ。前回はこの分岐から「いろはの森」へと向かったが、今回はそのまま林道(沢沿いの道)を行くことにした。
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水音を立てる沢

 沢沿いの土手には、「スミレ」や「ヤマエンコグサ」が咲いているが、今回目立っていたのは「ラショウモンカズラ」の花だ。薄紫や濃いムラサキで、必ずペアで花をつけている。少し不思議な花だ。「カキドオシ」や「ムラサキサギゴケ」の花と非常に似ているが、サギゴケはこの花に比べると1/2程小型になる。

 今回は林道の一番奥まで行ってみるつもりだ。高尾方面へ登り返せるのかどうか、調べなかったでこの行程はちょっとした冒険でもある。

 前回はこの道の分岐で大変な目にあった。ずっと歩いて行き止まりになった道はひとつの教訓だったので、今回は途中のコース掲示板でしっかりと確認した。本来は地図で事前に調べるべきなのだが、どうも高尾となると気が緩む。

 「日影沢林道」は「城山(しろやま)」方面へと続いているようだが、登れなければそれでもよい。

ラショウモンカズラ
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渓流の様子 ミヤマキケマン

 沢は静かな水音を立てて流れている。その沢に沿って、時に水面近くまで土手を降りたりしながらゆっくりと歩く。なにせ沢筋には様々な花があちこちに咲いている。

 ふと見ると、道の脇に「水場」があった。

 山側の岩斜面から水がこんこんと湧きだしている。パイプが通してあり、地面の石の上にワンカップの空瓶(ガラスのコップ状のあれ)が数個置かれている。登山道での定番仕様で、「飲める水」の証だ。

 渓流を挟ん出道の向こう側、すぐ近くに藪に隠れるように六畳ほどのコンクリート製の小さな取水場がある。確認したら地域の水道用の施設だった。この林道沿いには人家が無いが、バス通りを高尾駅に向かって少し戻れば集落がある。この辺りの人は湧き水をふんだんに飲めるらしい。私たちが湧水を得ようと思えばペットボトルで買わねばならない。料理や喫茶だけでなく洗顔や風呂にまで利用できるとすれば、考えられないほど非常に贅沢なことだ。羨ましい限りではないか。

 その水場でペットボトルとプラティパス(ポリエステル製の袋状の水筒;飲み終われば丸めて畳める便利なもの)に水を詰めることにした。

ミヤマキケマン マルバスミレ
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ムラサキケマン ツルカノコソウ

 そのままさらに進むと「NTT施設道」という標識があった。

 少し迷ったが、進んでもよさそうなのでそのまま沢沿いを登ることにした。少し道の斜度が増して、汗が出てきた。

 沢の水で顔を洗う。沢沿いは山側からの風が通って、濡らした顔に涼しい風がそよぐ。これだから低山歩きは止められない。なんとも気分がよく、充実していて、しかも心和む時間だ。

 道からは沢の流れが良く見える。

 所々で踏み跡があって沢へ降りられるのだが、これがメインコースであったら大変なことになってしまう。植生および環境保護のためにロープでコースが規制されているが、近年の人気でオーバーユースによる環境破壊が懸念されているためだ。紅葉シーズンの高尾も春山の時期に負けず素晴らしいが、去年の紅葉時期での休日には一日で七万人の入山があったらしい。低山の常識を破る途轍もない人数だと思う。

ヒメウツギ 日影沢
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シャガ 日影沢脇のシャガの群落

 私の好きな「吾野(あがの)」周辺や「越生(おごせ)」など(2008.05.01 奥武蔵、顔振峠から黒山三滝へ抜ける(吾野、越生))は、やはり道脇に渓流が流れ、その沢筋に沿って登る道が多い。

 低山歩きは私の趣味だが、もしそれらの幾多の小径が沢筋(沢登りではない)脇の道でなかったら、大分つまらないものになってしまうのではなかろうか。歩く愉しさは確実に半減し、植生の豊富さも失われて興味は薄れるだろうと思う。


 登山道自体が想定以上の人出で掘り下げられ、踏み固められ、そのため周囲の植生が失われる。やがて下草を失った木樹は保水できずに枯れていく。斜面の保水力が低下することで沢筋が枯れ、そうして豊かだった山全体が荒廃していってしまう。

 低山歩きの楽しみは享受したいが、さりとて過剰に利用すればやがて破綻が来る。そこをバランスをとって守るにはどうすればいいのだろか。

沢の小さな落差 ミヤマキンポウゲ
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その事を少し考えてみよう。

<大勢での入山形態を改める>

 まず大勢での入山形態を改める必要がある。いくつもの小グループに分けることで環境への負担や様々な問題の発生を軽減する事が出来るはずだ。

 学校行事での入山などでは、一度に連綿と百人(あるいは数百人)単位の大人数が闊歩するように狭い登山道を進む。そこでは自然を学ぶという意味合いは薄く、坂道を駆け下りたり、コースを外れたり、傍若無人な振る舞いをしてしまう。蟻の群れのように直ぐ前の人の背中や自分の集団しか見えず、絶えず集団として移動していて自然の中にいるという感覚が希薄となるからだ。そして「行事」という蓑の下に本来各人が持っている「個人」というものが完全に隠れてしまう。

 責任感は人数と共に減少するのではなかろうか。公共性やマナーとは、集団の中でこそ必要となるのだが・・・。

 多人数での行動が常となる富士登山などではゴミを平気で捨ててしまう。あの広大な富士山がシーズンを過ぎるとゴミの山となってしまうのは有名な話だ。富士がゴミで溢れるのは、それが個人や少人数での山行ではなく、「富士登山という行事」のためではなかろうか。修学旅行での歴史建造物への落書き、海外への団体旅行での悪ふざけ、低山へのお花見行での度を越した振る舞い、みな根本は同じであろう。

 個人的に責任を負った自発的な行動の色合いが薄く、密集した集団による行動、つまるところ「行事」であるためにこれらの問題が発生する、と私は考えている。私達の意識の底では集団化して没個人となることでの安心感がある。社会性を捨てる(逃避)事の中には一時の「子供帰り」のような、何らかの気分の開放やストレスの発散があるのではないだろうか。

 個人が見渡せる少集団であれば、こうした我を忘れた行動はずっと少なくなるだろう。さらに密集した集団がなくなり負担が平準化されるので、登山道への短時間での高負荷が軽減できるはずだ。

 回復の余地なく間断なく負担を強いられれば、やがては包容力のある自然も破綻してしまう。だから本当は総量規制をするしかないかも知れない。

 高尾はひとつのケースを持っている。山腹にある「薬王院(やくおういん)」への参道の<一号路>とケーブルやロープウェイの存在は、登山に無縁な人々の手軽な山頂へのアクセスを保障する。通勤時の革靴やハイヒール姿の人が歩いていたり、充分に酒が回ったそこいらのオッサン達やがやがや世間話を声高に話しあうおばちゃん達など、これらの充実した設備が人出を招いている要因だ。山頂近くの「薬王院(やくおういん)」までの道は完全に舗装されていて、登山道というより広い道であり文字通り境内へ続く参道なので、山へ入るという意識は持ち辛いだろう。

 近年、入山者数を底上げしている先の普段着の人たちや明らかに別種の人々、一見悪く思える彼らは山頂駅周辺の茶屋や「たこ杉」をこえて「薬王院」までしかそもそも行動しない。だから、こうした人達に関しては実はあまり考慮はいらない。


 そこで提案だが、「20人を超えるような集団の入山は<一号路の通過>を必須とし、アクセスは高尾山頂までとする」というのはどうだろう。

 別のコースでの登頂や山頂からさらに奥へ入るには、集団を分散して小さなグループを単位として編成を変えさせる。はじめはレンジャーの監視や指導が必要だが、やがてはそれが「高尾ルール(スタイル)」というような暗黙のルールとなって定着していくだろう。
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ヨゴレネコノメ

 「日影沢林道」をなおも登る。 沢の脇には多くの花が咲いているので、飽きることなく登ることが出来る。

 大分の登ったところで大きく道がカーブし、その先に鉄製のゲートが出現して道が不意に終わりになった。この場所が林の終点(始点?)らしい。

 さて、どうしようか、と思った。

 途中で二人ほどとすれちがったが、彼らはここまで来て引き返してきたものらしい。沢の左側を見るとずいぶん細い流れがあった。これが日影沢の源流らしい。藪というか低潅木に覆われた杣道(そま道)のような細い道筋がひっそりとある。
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 川幅は今までとは比較にならず、わずかに50cm程だ。これが本流であり、山から流れ出しているようだ。

 潅木に覆われつくした沢の直ぐ横に肩幅ほどの踏み跡が続いている。確かにそれは「道」のようだ。多少不安に思ったが方向が尾根側へ続くようなので、潜るように入っていく。

 足場の悪い中、心配しつつ登っていくと、やがてひっそりとした階段が現れた。

日影沢?なの 日影林道からの道

 そろそろ戻るべきかもしれない。この先、道が尽きたり、忽然と滝の下へで出てしまったり、といった具合になるかも知れず、徐々に不安が兆し始めた。

 それらの不安感は密生する潅木で視界がないために生じたものだが、階段の出現はまさに絶妙なタイミングだった。しばし迷った後に現れた階段は、この道が登山道であることを雄弁に物語る物証だ。先があるのだし、整備されていることを確信させる構造物だ。

 設置者の絶妙な配慮に感服するばかりだが、たくみに凝らした工夫ではないか。
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イチリンソウ ツボスミレ

 その後、狭い石段は急登に変わり、一気に高度を上げた。シャガの群落を越えて一汗かいて見上げると頭上を覆っていた藪がひらけ、稜線が近いと思わせるような明るみが広がった。

 さらに登っていくと杉の植林帯に入った。その中を登り続けると、木々で崩落を止めたて斜面へと出た。その木で作られた通路のような九十九折の道には沢山のスミレが咲いていた。

 何度か折り返しながら50mほどの高さがある斜面を登り詰めると、明るい稜線へ出た。城山から高尾へ向かう道へ入ったようだ。

高尾への分岐 登ってきた植林帯
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イカリソウ

 出た稜線では、季節の花が一杯に咲いていた。

 たまらずに写真を撮り始めた。さすがに「城山(しろやま)」からの尾根道には人がいて、幾組かのハイカーが行き過ぎる。

 狭い登山道なので三脚などは立てられない。そのためストックを兼ねたモノポッドを私はいつも山行の際には携帯している。五段に収縮できて軽量・強靭・コンパクトで山では便利な代物だ。今回も樹木の下などの暗い状況ではそれを利用した。

 スミレが多く咲いていて嬉しくなって写真を撮り歩いていたら、別の紫色が目に付いた。近づくとそれは「イカリソウ」だった。驚いてこちらの花も数枚撮ったが、ほかにも色々な花が咲いていた。

イカリソウ
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チゴユリ ヒトリシズカ

 若葉萌える広葉樹をたたえた斜面、その下には「イカリソウ」、「チゴユリ」、「ヒトリシズカ」など、小さく可憐な山野草が咲いている。高尾の山稜は実に豊かな植生なのだ。

 「城山」から「一丁平(いっちょうだいら)」へ続く明るい尾根道は、季節を示す山野草で一杯になっていた。その様子は、まさに季節そのものがあふれ出してきたような、圧倒的な豊かさだ。
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日影沢から出た地点 分岐

 <日影沢林道>から出た辺りの地図標識が出ていた。写真に撮ったコース図のオレンジ色の道が歩いてきた日影沢林道だ。<現在地>の文字のあるあたりが私が登ってきた植林帯で、もうひとつコースが明瞭ではない。

 登った先の赤色の尾根道が「小仏城山(こぼとけしろやま)」から「一丁平(いっちょうだいら)」を経て、高尾山頂へ至るメインの整備された登山道だ。

 実はこの道。いつも出会う<関東ふれあいの道>だ。

 千葉の海士有木(あまありき)鋸山(のこぎりやま)、埼玉の吾野(あがの)奥多摩の高水三山、神奈川の三浦海岸など、首都圏をめぐる広大な遊歩道の一部として続いている。


* 関東ふれあいの道(埼玉県)へのリンク

一丁平の白樺 若葉萌える紅葉(もみじ)
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ナットウダイ 八重桜

 尾根道を「一丁平」方面へ向かう。この道には「一丁平の園地」へ至る手前にブナや白樺が自生する尾根道脇の斜面がある。

 その斜面へ差し掛かったところ、林床に輝く紫色の粒を見つけた。先に出合った「イカリソウ」が群落をなしているのだった。いや、これ程までの群落とは思いもしなかった。向かっている園地よりもう少し高尾山頂寄りの場所で、道脇の斜面に咲いていた幾株かのイカリソウを以前見かけた事があった。その場所の植生がガイドなどに記載されている自生地なのだと思っていた。そうではなく、この場所こそが地図に示された<イカリソウの自生地>だった。

 凄まじいスケールで圧倒されるが、花自体はごく小さく、しかも下を向いて咲くので決して派手な訳ではない。

 そんな可憐な小花が、木樹の間の下草一杯にほぼ全面に渡って一斉に咲いていて、小さく風に揺れている。あまりのことに、はじめは幻かと思ったほどだ。

イカリソウの群落
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イカリソウ

 「イカリソウ」はその可憐な姿を見て、いっぺんに好きになった花だ。なぜこんな造形なのか、精巧な工芸品のような信じられないような美しい姿に見とれた。

 今回も、群落を前に我を忘れた。夢中で撮ったので、冷静な構図などすこしも考えられない状態になってしまった。

 もう、これだけで、今回の山行の甲斐があったというものだ。不思議、可憐、清楚なその様子を気に入っているが、さらに今回の出会いでこの花が好きになった。

 昼食を摂るのも忘れるほどであったが、写真を撮ったらにわかにお腹が空いてきた。

イカリソウ
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もみじ ヤマルリソウ

 少し歩いて「一丁平の園地」へと着いた。ここは広い空間でトイレや水場がある。林の中が広場になっていて多くのハイカーが休憩をする場所だ。丘状に開けた小高い場所には木製のベンチやテーブルなども置かれている。

 高校生だろうか、100人は超えると思われる大集団が休憩していた。彼らはどうやらここが目的地で、ここで昼食をとったあと高尾側へ道を戻るようだ。丁度帰り支度の間際だったようだ。休憩のために元気になったのだろうか、その集団が大騒ぎをしている。

 彼らにすれば普段の昼休みと同じ状態なのだろうが、私はずっと静かな山を歩いてきたので、異様な喧騒として感じられ困ってしまった。彼らの下山コースを避けなければとんでもない事になるので、そこを早めに抜けることにした。そのため、昼食は少しの間お預けだ。

 「一丁平」から<五号路>を通って山頂を迂回し、<四号路>の分岐から「いろはの森」へ抜ける道を下山することにする。これなら、なおも静かな山行が楽しめる。

 それにしても、見事な「イカリソウの群落」に出会えたことは、なによりの収穫だった。

ワニグチソウ 目に青葉
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