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オーディオ : DAITO−VOICE 7cmスピーカ・ユニット
F66U63 (フルレンジ)

<DAITO−VOICE製 F66U63 7cmユニット (2010.11.14)>


 秋葉原の「コイズミ無線」に行ったら、3個のユニットがマウントされた背の高いスピーカーが鳴っていた。「共鳴管方式」であり、2m程の細長い四角柱に、それぞれ別の8cmユニットが3個、縦に列を作って並んでいる。

 上部に開口があるようだが、背が高いのでそれが見えない。エンクロージャー内部のユニットの背面には、対角線に板(遮蔽板?)が渡されている。エンクロージャの上部背面から、底部の前面側へ向かって斜めに板が渡されている。勿論、外側から内部の様子は判らないが、ユニットが着いていないバッフル穴から中が見える状態の箱が横に置かれていたので、そうした様子が判ったのだった。

 その箱で、優雅に鳴っていた3台のユニットは、ダイトーボイス製の80mmフルレンジ・ユニットだ。いずれも低価格のもので1000円を少し超える位のものだった。

 アルミキャップの着いたAR−7、PPコーンのF−77G、それにペーパーコーンのF−77A。いずれも、普段ならあまり注目しない製品で、それが上から一列に微妙な間隔で付けられていた。

 そんな低価格の製品の組み合わせにも拘らず、そのスケール感は実に雄大だった。目を閉じれば、とてもあんなユニットが着いているとは思えないような高級な音が響いていた。その音は、ゆったりと繊細で、ボーカルの張出しもいい物があった。


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P66U63
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 戦国武将の毛利家には「三本の矢」の家伝がある。1本の矢は簡単に折れるが、3本の束にした矢を折る事はなかなか出来ない、というものだ。毛利宗家を小早川と吉川の両家が支えれば、中原を狙うのはともかくも中国地方では磐石の態勢が維持できる、という教訓だ。

 室町の戦国の世はもとより、遥かに江戸300年を生き残った外様大名家の雄である。それを支えた誰もが知る有名な家訓のひとつだ。

 今回私が見たのは、ダイトーボイスの80mmユニットを3個、巧みに組み合わせたもので、まるでこの話を地で行かれたという気分を味わった。いずれもが極めて安い製品なので、私はちょっと馬鹿にしていたのだが、リファレンス機で再生しています、といっても過言ではない質の音が店内に溢れていたのだった。

 設計さえきちんとすればこうしたユニットでも充分のパフォーマンスを引き出せる、という、スピーカ工作の醍醐味と、ひとつの可能性を見た。


 他にもいい製品があるかも、と現物が置かれたディスプレイ棚を物色したのだが、そうして目に留まったのがダイトーボイスの70mmユニット、ペーパーコーンの「F66U63」だった。

 13cmフルレンジユニットのFW130G51−5Fもそうだったが、流通している状態は「ダイトーボイス」社の商品だが、実は、この製品は「東京コーン紙製作所」の手になる物だ。この会社では多くのスピーカーを作っていて、歴史としても40年を向かえる。優秀そうなユニットが同社のHP状では沢山「製品紹介」されている。

P66U63
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ファストン端子 ボイスコイル部分

細部のデザイン(仕様):

 ユニットのバスケット・フレームとマウント・フレームは、低コストの打ち抜きのプレス品。しかし黒色の焼付け塗装で仕上げられているので、先のコーン部分の見栄え同様に、外観上では価格を感じさせるような安っぽい雰囲気はない。

 この口径での同価格帯の他社製品と比較すると、むしろ高級であり優雅でもある。

 ターミナルは「ファストン端子用」のMとSサイズ(プラス側がM、マイナス側がS)であり、マグネットのヨークに接触するため、ビニールの絶縁テープでマグネット部が処理がされている。端子の素材は通常の切片で金メッキ品ではない。
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マグネット:

 このマグネット材質は、一般的なフェライト製で重量は64g。
 42gのキャンセルマグネットが着いていて防磁対応に仕上げられている。
 70mm口径のユニットに対するマグネット構成としては重量級の部類だろう。

コーン:

 紙製のコーンだが、センターキャップは紙ではなくポリプロピレン製のようだ。
 コーンのエッジはブチルゴムであり、効果的な仕様となっている。
 低域は稼げていないが、良く伸びる高域が特色。
 160Hzから20KHzという周波数特性を持っていて、能率は8Ωで84dB。

マグネット バッフルのサグリ穴

 コーン面にはリード線の取出しが無いので、一見して良い顔つきをしている。

 周波数特性や再生能率は欲張っていないが、充分な音色だ。音を聴いてから価格を知ったら、私同様に唖然とするに違いない。この性能・品位で、価格は僅かに1500円ほどなのだ。
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<音の傾向>

 低域の周波数は期待できないが、実に素直な音が鳴る。今回はサラウンドのフロントスピーカとして考えているので、この特性で充分だ。

 中高音の歯切れの良さは、センターキャップ(ポリプロピレン製)のためかもしれない。マグネットの重量とキャップの大きさから類推すると、ボイスコイルの径もコーン径との比率から考えると随分大きいものを持っている。

 こうした部分が動作特性になって、歯切れと明瞭な輪郭に繋がっているのかも知れない。

 弦楽器の音がきれいに伸びて、口径を感じさせないおおらかなスケール感がある。渡辺貞夫さんのアルトサックスの音も良かったが、小野リサさんなどの女性ボーカルも素晴らしい。アルトなどの中域だけではなく、先日のSONGSでの八神純子さんのハイトーンも素晴らしい再生になった。

自作AVラック

 まるで余談で恐縮なのだが、年齢を重ねて、芳醇さを加えた八神純子さんの歌声に魅了された。

 はるかな高校生の時代を思い出し、しばし彼女の歌の世界に浸ることが出来た。当時のレコード盤は結構高価で、ボーナスの入った従兄弟にねだって彼女のデビューLPを買ってもらったこと。歌声に魅了されて、盤面が痛む程、聴き入った事など、高校生という多感な時代の懐かしい日々が浮かんできたのだった。

 あのNHKのスタジオライブはステージとしても一品で、「思い出は美しすぎて」は実に素晴らしいアレンジだった。

 サラウンドアンプによる再生だが、アコースティックギターの爪弾きの中からハイトーンが立ち上がって、静かに曲が進んでいく。やがて聴き入る私たちの中でそれぞれのイメージが広がって、想いに囚われるときに、ストリングの響きが間奏から自然に入ってきて重なる。

 バイオリンの旋律もあいまっての最後のフレーズ、「もう、今は別々の夢  二人 追いかける・・・」。

 まったく、震えてしまうほどの鮮やかな演出だった。


 ウッドベース、ドラムス、ピアノのJAZZのトリオ編成にリードのエレキギターという構成で歌った「思い出のスクリーン」も大人の曲調でアレンジされていて、これもまた会心の一撃だったろう。

 改めて聴きなおしてもボサノバ・タッチのバラードの名曲で、あの番組内でこの曲を聴いて新たに彼女のファンになった人も多いのではないだろうか。

 アコースティックの楽曲に関しても、素直に伸びやかに、このユニットは奏でてくれた。そして、製作者の意図を省くことなく充分な感動を伝えてくれたと思う。
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 今回はこのユニットでAVラックを作成してみた。別のページで紹介した通り、サラウンドアンプでドライブしている。

 このONKYOのアンプの仕様では、フロントの帯域が150Hzからのサポートと書かれている。150Hz以下の低域はそもそも送出していないようだが、サブウーファーのクロスオーバ周波数を指定できて100Hzや150Hzが選べるが、そのあたりはどうなっているのだろうか。150Hz以下の音域はサブウーファーだけが受け持っていて、その他のスピーカ出力音域の特性が150Hz以上をカバーしている状態だ。

 そもそもアンプから信号帯域が送られない状態なので、このスピーカユニット製品の周波数特性、特に低域が160Hzからと伸びていない状況であっても、なんら問題はない。

 4リットルのバスレフ・エンクロージャーにマウントしたから、そのポートから充分な低域が出てくる。

 ユニットで無理をせずに素直な特性の音を出して、箱側で合成周波数として低域をサポートする。それが、先の店頭で出合った「共鳴管方式での実践例」だったと思う。目からウロコの体験を通して、その方法論が私の中で確信となったものだ。

 70mmユニットで4リットルの箱は過剰のきらいがあるのだが、そこに100mm長のスリット板を着けて合成周波数を工夫した状態は、実にいい結果を生んでいる。

自作サラウンドAVラック
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