まるで余談で恐縮なのだが、年齢を重ねて、芳醇さを加えた八神純子さんの歌声に魅了された。
はるかな高校生の時代を思い出し、しばし彼女の歌の世界に浸ることが出来た。当時のレコード盤は結構高価で、ボーナスの入った従兄弟にねだって彼女のデビューLPを買ってもらったこと。歌声に魅了されて、盤面が痛む程、聴き入った事など、高校生という多感な時代の懐かしい日々が浮かんできたのだった。
あのNHKのスタジオライブはステージとしても一品で、「思い出は美しすぎて」は実に素晴らしいアレンジだった。
サラウンドアンプによる再生だが、アコースティックギターの爪弾きの中からハイトーンが立ち上がって、静かに曲が進んでいく。やがて聴き入る私たちの中でそれぞれのイメージが広がって、想いに囚われるときに、ストリングの響きが間奏から自然に入ってきて重なる。
バイオリンの旋律もあいまっての最後のフレーズ、「もう、今は別々の夢 二人 追いかける・・・」。
まったく、震えてしまうほどの鮮やかな演出だった。
ウッドベース、ドラムス、ピアノのJAZZのトリオ編成にリードのエレキギターという構成で歌った「思い出のスクリーン」も大人の曲調でアレンジされていて、これもまた会心の一撃だったろう。
改めて聴きなおしてもボサノバ・タッチのバラードの名曲で、あの番組内でこの曲を聴いて新たに彼女のファンになった人も多いのではないだろうか。
アコースティックの楽曲に関しても、素直に伸びやかに、このユニットは奏でてくれた。そして、製作者の意図を省くことなく充分な感動を伝えてくれたと思う。
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