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オーディオ : スピーカー・エンクロージャーを作る
タンデム駆動スピーカー (多用途 汎用エンクロージャー)

<8cm―12cmユニット用タンデム・スピーカーを自作する (2009.04.12)>

 今回のスピーカはちょっと変わった構造にしようと思っている。

 最初はサブ・ウーファーを作成するつもりで、箱の仕組みを考えていた。バッフルごとエンクロージャー内部に格納し、外部からはユニットが一切見えない、という仕様のもの。

 バッフルが前面或いは下部面に設定され、ユニット背面の音がエンクロージャーに設けられたスリットやダクトから排出する、という構造のサブ・ウーファーもある。メーカーから発売される製品は、ほぼこの形状のものだ。

 通常のそうした製品のバッフル面の外に、もう一つの箱を繋げた構造が考えていたものだ。いつも利用させていただいているエンクロージャー設計支援ソフト「SPED」で紹介されているものだ。

 そうした再生方式は「四次バンドパス」とか「六次バンドパス」とか呼称されるものだ。特定の周波数(音域)を増幅、選別・通過させる方法として電気的なフィルターで信号を加工するのではなく、あくまでもアコースティックな仕組みでそれを行おうというものだ。エンクロージャーの仕組みを工夫する事で「響き」を調整して特定の音域(バンド)だけをサポートするという発想のものだ。

 外からはスリットしか見られないが、箱の中では盛んにユニットが働いている不思議な構造なのだ。


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バンドパス方式の仕組み

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バンドパス方式の仕組み

図中、エンクロージャー内の水平板部にユニットが付く。この場合、上側がユニット面で下側がコーン裏面となる。
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 そうした形状と内容で構想していたのではあるが、ウーファーだけというのはやはり寂しくなってきて、結局フルレンジのユニットをつけることにした。

 但し、このバッフル面(前面)に付くフル・レンジには裏方というか「縁の下の力持ち」を存在させようと思う。もう一つ、別のユニットがエンクロージャー内部に収納され、色々に働かせるのだ。

 内部に追加したサブ・ユニットは、アンプに接続して信号を流しても良いし、そうしなくてもよい。サブ・ユニットをアクティブにすれば「コイズミ無線」などのスピーカー専門ショップで評判の「タンデム駆動」の仕組みとなり、接続を切れば前面ユニットの背面部の振動を受けて補強して働く「パッシブ・ラジエター」方式の仕組みとなる。


 さらに、工作上の工夫をしてユニットのバッフルを可動式とすることで、もうひと働きが出来る。

 内部に格納するサブ・ユニットを取り外せるように工夫をすれば、前面のフル・レンジ単一での「ダブル・バスレフ」方式のエンクロージャーとすることができるではないか。また、前面のユニットを外してダクトに付け替え、さらに内部のサブ・ユニットもウーファーへ付け替えれば「六次バンドパス」方式のスピーカーが出来上がる。

 バッフル面を可変とし、その部分の設定を換えることで、一つのスピーカー・エンクロージャーで(実験的にはなるだろうが)複数の方式をサポートされるものにする事が出来上がる。その時々の気分で音の変化を楽しめるではないか。

<8cmユニットでスピーカーを自作する (TB(Tang Band) W3−582SC について)>

 以前のダブルバスレフ・エンクロージャーは、台湾のスピーカーメーカーのTB社(Tang Band Speakers)製の8cmフルレンジ、「W3−593SG」をユニットとして想定して作成したものだった。

 そして、アルミ・ダイキャスト製のマウント・フレームが同一なので、そのままの状態(マウントネジ径)でDIY−AUDIO社製の「SA/F80AMG」に付け替えて愉しむことが出来る。ユニットを何度も付け替える想定だから、ネジ穴がヘタらないようにバッフルのネジ穴は「オニ目」ナットで加工してある。(接合も木工用ではなく金属用のトルクがかけられるボルトが利用できるのだ。)

 本来は、あの箱で色々とユニットを付け替えながら音の色の違いを楽しむつもりであった。

 そのトールボーイ的なベースデザインをそのまま流用して、今回の基本形状としようと考えている。

 そして、メインとして設定するのが、8cmフルレンジのユニットで、Tang Band社製のポリプロピレン・コーンを使った「W3−582SC」だ。低価格のマイナーな製品であるが、能率が高くて充分に響く、その道ではちょっと知れた隠れた逸品なのだ。

オニ目ナットでの加工 オニ目ナットでの加工
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<容量8リットル、タンデム形式のバスレフ・エンクロージャーを設計する>

 今回の設計は先の「六次バンドパス形式」や「ダブル・バスレフ形式」の外形寸法と構造をそのまま流用して基本形状とし、その内部にもう一つのユニット用のバッフルを設置するもの。

 スピーカー・ユニットの前面と同じく、背面側でも盛んに音が鳴っている事はすでに述べたが、その背面振動を箱に開けたポートから外部に送出する仕組みが「バスレフ」という形式だ。

 箱に用意された「ポート(バスレフ・ポート)」は低域音の増幅が第一の役割だが、それとは別の働きも担っている。私の箱では、こちらの方が主目的だと思うが、エンクロージャーの内圧を下げてユニット動作に対する空気抵抗を減らし、有効な運動量を確保する、というものだ。


 今回設定の内部ユニットは、信号を流して通常に動作させた状態とすると、フロント面のスピーカーと同様の振動方向で動作する。すると、内部の圧力は微妙な状態でバランスするため、フロントユニットは動作の負荷が少なくなるのだ。動作を補強する、と言えばようだろうか。さらに内部ユニットでの背面振動(低域)は、バスレフのスリットによって増幅されて、前面に排出されるはずだ。ユニット単独での動作よりも豊かな低音と、主ユニットそのものの明瞭な音の「切れ」が期待できるのだ。

 内部ユニットへの信号をカットすれば、ユニットは自分では動作しないが、先の内圧の働きで振動することになる。「パッシブ・ラジエター方式」というのは、前面のユニットの効率の良い動作で密閉された内部の空気圧を利用して第二のユニットを受動的に振動させ、その低域成分である背面音を利用する仕組みだ。だから、「タンデム駆動方式」の内部ユニットへの接続ケーブルを外すだけで、簡単に「パッシブ・ラジエター方式」の動作へ変化させることが出来るのだ。

 前回もお世話になったポート設定シミュレーションのソフトを、今回も設計に利用するが、ソフトではタンデム駆動形式やパッシブラジエター方式はサポートされていない。そのため、あくまでも参考値として利用するということになる。

8リットルのバスレフ

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 バッフル部分の付け替えによる組み合わせで実現できる各方式は、基本的にはこのスピーカ単独で利用することが出来る。

 ただし、「六次バンドパス方式」だけは単独では音楽を聴くための音域自体が成立しないので、別途、フル・レンジなどの主音域をサポートするスピーカーを別に用意してアンプに接続する必要がある。

 また、「タンデム駆動方式」では二本のユニットを並列で接続するため、インピーダンスが4Ωとなる。このため、サポートする対応アンプ(アンプのスピーカー接続インピーダンスは6Ωから8Ωが一般的)が必要となる。

 このふたつの方式に関しては利用するための条件が付くが、私の環境では別のスピーカはあるしONKYO製の4Ω対応のアンプもあるので、どちらも条件を満たせる。考えてみれば、実に楽しめる企画なのだ。

基本として利用するダブルバスレフ

図中、エンクロージャー内の水平板部は置換できる構造とし、もう一つのユニットが付く。
上側がユニット面で下側がコーン裏面となるが、ケーブルをはずしたり、ユニットではなくダクトだけとしたりが可能。
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<タンデム駆動・エンクロージャー用の板取り>

 まず、板材の手当てだ。

 今回も従来どおりニュージーランドからの輸入品である「ラジアタ・パイン」の板を利用する。複雑な構造だしユニットも複数個同時にドライブする事になるので、板厚は14mmではなく厚めの<18mm>のものを選んだ。

 ほんの少し冒険もしたいので、天板、前板、底板をこの板材とし、側板は別のものを利用する事にしてみた。今回のエンクロージャーでは、側面は木目プリントの棚材とした。

 「木目プリントの棚板材」は両面だけでなくコバ面にもプリントの木目が圧着されている。この板材(18mm厚)を長辺中央で両断し、切断面を下部側に持ってきてエンクロージャーの側板とすれば、前・上・後・横の部分が同一のプリント面となる。

 プリントといっても違和感のあるものではなく、オーソドックスな木部の再現がされている。

 メラミン合板とは違うし天然木でもないが、2mmほどの厚さの突板が圧着されていて強度的には問題なさそうだ。化粧板の内部は短冊状の天然木の集積材で構成されていて、学生時代に懐かしい「カラーボックス」のように空洞となっているものではない。だから、釘もネジも効くし、変な振動もない。

 エンクロージャー内部の側面も化粧板面になるから、内部では音は盛んに反射する。自作のエンクロージャーで「ダブルバスレフ方式」のものや「バックロードホーン形式」のものでは内部をラッカー塗装として音の吸収を止めて反射を積極的に利用する考え方もあり、今回の側板ではそれが図らずも実現できるのだ。

 側板に挟まれた内側の部分を同じく黒色化粧板の棚材で作る事も考えたが、そうなると板材を切断した後のコバ面をどう組み上げて隠すかが問題となる。黒のシートを貼付する方法もあるだろうが、綺麗に仕上がってこその黒色だろう。うまく仕上がらなかった場合、逆に美しくなくなる可能性が大であろう。ならば既製の化粧板に挟まれた内側は木目のラジアタ・パインを持ってきて無色のウレタン塗装としたほうがずっと綺麗なものになるだろう。


 それでは、側面用の化粧棚板、前面や天板用の木目板、を利用してエンクロージャーを作成していこう。

 板取りは、何度かの試行により添付図面の切り出し方とした。しかし、内部や後板は別の木材を利用してもよいかも知れない。

板取り <板取りの図面>

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基本は910mmの板材。
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 910mmの板を2分して側板部分を取る。だから、側板用に2枚の化粧版を用意する。910mmの板を短辺側で2分する。これがやはり2枚で、バッフル、天板、底板、裏板となる。こちらは普通の集積材なので、なるべく木目の美しいものを選ぶ。

 バッフル板は付け替えとして2枚用意するので、実際には同一の板から2枚を取ったほうがよい。図では別の板としたが、考えてみたらこれは失敗であった。木目が連続しないのだ。同じ板から2枚(左右なので都合4枚)をとらないと、バッフルを付け替えた際に別の木目になって少し気になる。要注意。また天板もできれば同じ板からとったほうがよい。裏板、底板、内部バッフル、スリット板をもう一枚から取る。

 別に、補強用と、付け替え部分の桟となる角材(20x20mm程度)を用意する。


 前回同様の注意となるが、最終的な組立では現物合わせでの「削り整形」による調整が必要だ。

化粧版の側板 バッフル下部と裏板
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<ダクトの位置>

 今回作成するエンクロージャのバスレフ・ポート形状は、従来同様に加工と調整の楽な「スリット形式」とする。

 スリットの幅は、設計では10mmだ。スリットの長さを決めるには実験を行う必要がある。まあ、前回作ったダブル・バスレフのエンクロージャーでのスリット状態から判断して長さを決めたので大きな問題はないと思う。音を出して具合がよければそのままにするつもりだ。

天板、底板、バスレフスリット、バッフル 切り出したバッフル(メイン、サブ)

<内部のサブ・バッフルの仕組み立て>

 ダブル・バスレフの第一気室の底板部分と第一スリット部分だが、ここの基本形状は密閉状態とする。そして底面部分は可動式としてサブ・ユニットをマウントする内部バッフルを準備する。ここには12cmのフルレンジ・ユニットがついて「タンデム駆動」または「パッシブ・ラジエター駆動」となる。メインのフルレンジのユニットと同位相でもう一つのユニットが付く。

 サブ・ユニットは、コードの接続状態でアクティブとパッシブの動作状態を切り替え可能とするものだ。接続すれば積極的に動作してメインの動作を助長・補強して音に力強さを加える結果となるし、接続を切れば、メイン・ユニットのドライブ結果を受けて低域成分を取り出す働きとなる。

 もうひとつ、メイン・ユニット単独での「ダブル・バスレフ」方式とするため、サブ・ユニットがない状態のダクトのみが設定されたバッフル板を用意する。ダクトは第一気室からのバスレフ・ポートとなる。板状のスリットではなく60mm径のパイプであり、長さは120mmとする予定だ。メインユニット側に向かって伸びる状態の内部ポートとなる訳だ。パイプはダンボール製だが、強度はかなりのもので、横方向にして私が乗っても変形しない。

 これらを同一サイズのバッフル板(155x123mm)として用意し、サブ・ユニットが付いたバッフルとバスレフ・ポートが付いたバッフルとを置き換えられる構造とする。
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<箱の接合>

 箱の組立は、釘やネジが板面に出ないように、接着材での接合とした。簡単なクランプであるが、前回作成したものがあるので圧着ができる。

 全体に「ねじ」が切ってある金属棒を利用し、1100mmの棒から300mmを2本切断し、さらに250mmを2本取った。適当な端材(300mmの杉板で一枚僅か30円!)に穴を開けて蝶ナットで締めこむという単純な構造だ。全部品代しめて300円程で出来てしまったもの。

 側板の接着はテストをしてみるつもりだ。単に接着剤による圧着ではなく釘を使うかもしれない。接着では不十分な場合には、板材接合用の「合い釘」を打ち込んで補強するつもりだ。本当はタボ材(木製の円柱状のピン)用に板面を加工したいところだが、ボール盤のようにドリルの深さが調整できないと難しいので、釘がせいぜいであろう。

板材を圧着する
バッフル保持用の桟や補強材を接着する。
ここから、さらにそれらを組み上げていく。
ターミナルへのコネクター
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エンクロージャー内部(仮組み) エンクロージャー内部(仮組み)

 写真は、各板材を仮組みした状態だ。

 こうすると、エンクロージャー内部の構造がよくわかる。メイン・ユニットのバッフルは取り外せるように、「ネジ」による接合とする。メイン・ユニット用の第一気室はおよそ4リットル。内部にバッフルがあるが、こちらはサブ・ユニット用のものだ。これも先に書いたように取り外せる構造だ。内部でのネジ止めは困難なので、こちらはユニット(12cm)の自重で密閉状態となる。

 各バッフルは、ほぼ密着した状態となるように桟に当たる部分に「モルト」を貼る予定だ。カメラ補修用のフィルム室密閉用の「モルト・ブレーン」があるので、それを利用するつもりだ。

 そしてこれらのユニット用のバッフルは、バスレフ・ポートと交換できる状態とする。そうすることで、メイン単独での「ダブル・バスレフ方式」となるし、単純に抜いてしまえば「バスレフ方式」となる。さらにメイン・ユニットを外してポートとしサブ・ユニットでドライブすれば「六次バンドパス方式」となるのだ。バンド・パス方式はドライブユニットがウーファーではなくフルレンジなので、正確にはバンドパスではない。そうする場合には、内部のサブ・ユニットをウーファーに置き換える必要がある。

スピーカ正面
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二つのバッフル 内部の状態

 一枚ごとにクランプ締めを行いながら、板材を圧着する。

 このときに接着剤の関係で僅かに板にズレが生じる。だから、クランプ締めの最中にズレをチェックしないと、悲しい事態となるので要注意だ。

 接着剤は非常に強力で、一時間ほどで硬化が始まる。一時間が経過した後は、まず完全な接着状態であると認識したほうが良い。

 一度、接着してしまうと、破損覚悟でないと付いた板を取り外す事はできない。

天板を固着する
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オニメ・ナット スピーカーマウント

<エンクロージャー組み立ての工夫>

 ユニット・フレームのマウント方法であるが、バッフル箱側に「オニメ・ナット」を埋め込んで、留めネジとは金属同士での締め込みを可能にする。こうすると、マウントネジに対して、箱側は木地ではなくそこに埋め込まれた金属製のナットが受けることになる。

 ユニット側の留め具には「木ネジやタッピングネジ」ではなく金属接合用の円柱状のネジやボルトが利用できるのだ。だから、何度もユニットを付け外しても、木がへたってネジが利かなくなる心配が要らない。


 私の場合は、ユニットの付け替え(他のメーカー製の8cmユニットへの置換)やエージング中の調整での取り外し、など、何回もの付け外しを想定しているので、こうした工夫は標準仕様として必要なもの。当然のことだが、金属用のネジでの締め込みとなるので、バッフル面とスピーカ・ユニットのフレーム部分とは強力な圧着状態となる。振動に対しても有効であろう。

 バッフル面の取り付けに関してもこうした「オニ目」ナットとしたいが、どうしようかは迷っている。ユニットのマウントよりもむしろバッフル面の取り付けこそ、付け替えが行われるのだから「オニ目ナット」で仕上げる状態とすべきかも知れない。

バッフルのマウント部 バッフルの状態
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ターミナルへのコネクター 接続端子(ファストン端子)

<ユニットの接続>

 スピーカーとの接続ケーブルもユニットの取り外しを視野に入れて、「ファストン端子」にした。これも定番仕様だ。

 今回のスピーカ・ユニットのターミナルは金メッキ製ではないが、ファストン端子で極性によってピンの大きさが違う規格になっている。プラス側がMサイズ、マイナス側がSサイズだ。

 スピーカー・ターミナルは、「コイズミ無線」のバナナ・ターミナル。箱への取り付けはケーブル接続用の10mm穴を2個開けて、本体はネジ留めする方式だ。メイン・ユニット用とサブ用の2個組が片側につく。この2個を同一極性で並列に結合すれば「タンデム駆動」となるわけだ。(2本のユニットの合計インピーダンスは並列接続なので半分となるので4オーム。)

 これへ内部ケーブル(DENONの「AK−1000」)をハンダ(銀ハンダ)付けする。アンプとの間の接続ケーブルは、エンクロージャ内部の線よりも太い「AK−2000」だ。これらのスピーカー・ケーブルもやはり私の定番だ。

板の接着 接続端子(バナナブラグ)
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板の接着 板の接着

<箱の補強>

 今回のエンクロージャーの側板は最初に書いたように化粧版であるが、この板は接着後に化粧面が剥がれる懸念がある。板目が出ていればいつも利用する強化接着剤が効くだろうが、化粧面では板全体が密着しないだろう。そこで、やはり板材接合用の「合釘(あいくぎ)」を使うことにした。両先が尖っていて、双方の板へ釘が食い込む仕掛だ。あらかじめ、錐(きり)でガイド穴を開けておく。こうすれば、外側へ突き抜ける心配は不要だ。勿論、さらに強化接着剤を使うことは言うまでもない。

 ユニットが2本、ドライブされるので板面などに木片を接着して補強する。下の写真は、上板、側板、後板と補強桟を接着した様子だ。さらに、スリット板には、前板の補強を兼ねた板材(当初は垂直版とする予定だったがやめた)を接着している。この補強桟は、各板面の共振防止用の補強と共に、定在波を避けるための平行面の防止の意味を持っている。

 裏板の長さが側板よりも長い。これは、側板を両断した際の切り代の関係による。3mmほどは長い状態なので、ミニカンナを購入して、裏板の飛び出したコバから削りこんだ。現物による削りはどうしても発生してしまう。


 さて、考えてみるとこの「側板作戦」は大きく失敗した。

 従来のラジアタ・パイン同士であれば、強力接着剤によって板どうしが密着して接合できた。板を割らずには引き剥がすことが困難な程、見事に接着されたのだが、この棚板材は接合状態がいまひとつだ。プリント面が平滑すぎて密着状態とならないのだ。力を入れると剥がれてしまう。しかも、プリント表面がシールの様に剥がれる場合がある。このため、合い釘の登場となったわけだが、これが実は曲者であった。

 本来、すべての釘位置をけがいておいて(板にマーキングする)釘用の下穴を加工すべきだったのだ。私は爪が甘いというか面倒くさがりというか、最後の接合工程で手を抜いた。下穴に合い釘を挿して、上から板を圧迫し、釘でもう一方の板にマーキングをし、そこを錐(きり)で穴あけしたのだ。その状態から板を押し込むと、微妙に位置がずれてしまった。1mm程度、大き崩れた箇所でも2mmみは満たない状態だが、本来あるべき位置より全体に1mmほどズレが生じた。上板が片側で1mmほど即位便りの上になり、前板の上部も1mmほど側板より出ている。しかたがないので、上板や前板をカンナで削って修正した。

 板面同士の固着という意味では少し不安が残る。合い釘で内部に隠すより、むしろ位置を正確に合わせて細釘を打ち込んだほうが良かったかもしれない。細釘の頭は着色や潰したりすれば目立たないからだ。

板の接着 ユニット用に切り抜いた丸板を接着する。

今回は接着剤だけでなく、細釘を打ち込んでいる。


補強が終わった状態。
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<音の調整>

 今回も、側板を仮止めして何度も同じ曲を聴きながら、吸音材の位置や種類、分量を決めていく事にする。

 内部の吸音は基本的には建築材のグラスウールだが、第一気室内にはティーバックを利用する。グラス・ウールは、ケーブル・ターミナルの部分を中心に、後板から側板の補強桟の部分までを取り巻く状態で接着することにした。

 底面の仕上げだが、側板のこば面に木目のテープを貼った。その上でコルクのシートを切り出して接着した。コルクは振動吸収と安定性の確保のためだ。音にとってはどうだろうか。メーカ製スピーカーなどでは、最近良くコルクシートが付属する。当初、フローリングなどの住宅事情をメーカが考慮したためと思っていたが、先に書いた振動吸収などの意味合いで添付しているらしい。

内部ユニット
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内部ユニット 内部ユニット

<内部ユニットの収納>

 内部に格納するのは、12cmのフルレンジユニット。

  FOSTEX FF−125Nだが、このスピーカはセンターキャップ部がアルミでコーティングされている。コーンは紙製でエッジはゴムではなくウレタン製だ。いまでは古い設計のスピーカといえよう。ただし、現在のものよりも音圧は大分高くて、能率はよいもの、といえよう。

 このスピーカをメインとしても充分にイケる物に成るかもしれない。タンデムとして格納するスピーカは影の立役者、言うなれば文楽を支える「黒子」のようなものだから、通常はあまり優秀な製品を使わない。タンデム用のキットで売られている半製品などでは、単独で聞いたらちょっと、というようなものを内部ユニットとしてエンクロージャー内に入れる場合が多いようだ。

 内部ユニット用のバッフルは、前面のメインユニット用のサブバッフルと同じ寸法としている。このため、内部ユニットをそのバッフルごと外して平板と入れ替え、抜いたユニットをメインに付け替えれば、12cmユニットでのダブルバスレフに変身する。

 この状態もまた悪くはない。素直な音で聴きやすいものになるだろう。
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<箱の塗装>

 今回は水性の「ウレタン・ニス」を用意した。

 エンクロージャー内部は、先にも書いたとおり化粧版なので塗装せず、色着けするのは外部だけとする。側板の色目はウォールナット調なので、バッフル面は無色のウレタン塗装とし素材の木目色を活かすことにする。

外観 設定が完了したスピーカ
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内部ユニット 入替ユニット

メインユニットをDIY−AUDIO SA/F80AMGへ付け替える。

<音の印象>

 最近よく聴くのが、クミコ・グレースのピアノだ。「From NewYork」、「Tokyo」などのアルバムだ。

 「SWINGジャーナル」誌でも評価が高いが、瑞々しいタッチの重厚なピアノが華麗に響く。驚くべき新人の出現だ。都会的なセンスのよさが際立っていて、クールなピアノの名演奏が聴ける。たとえば「TOKYO」というアルバムでは、「かごめ」などの唱歌や私の世代には懐かしい「春先小紅」などのPOPな曲が華麗にアレンジされていて新鮮だ。

 このピアノを美しく響かせるようとすると、当初企画した内容から踏み出して、メインスピーカを切り替えた方がよいようだ。

 実はメインのユニットは8cmのフルレンジなので、選択の候補が多い。

 そこで、私の手持ちユニット中で、一番煌びやかな表現力を持つ優秀な「DIY−AUDIO SA/F80AMG」に付け替えて鳴らしてみた。ユニット自体の能率が良いためもあるが、周波数特性としても高音部が伸びているし、低音部も先の「W3−582SC」よりも深いスペックを持っている。両ユニットの単体での価格差が2倍なので、性能が違っているのは当然なのだが、このユニットを着けたほうが箱全体が無理なく自然に響いている感じがする。

 だからといって、W3−582SCが悪い、というわけではない。

 当初の目論見のタンデムスピーカを構成するユニットとしては、むしろいい選択だろう。何故かと言えば、SA/F80AMGでタンデム状態で接続すると、低音部がより強く張り出し過ぎるからだ。

 音楽としての迫力は増すが、高音での静かなソロパートなどは内部ユニットの接続を切って、単独(パッシブ状態)に繋いだ方が好ましい。
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