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オーディオ : スピーカー・エンクロージャを作る
PIONEERのエンクロージャー<LE−101A>を利用してフルレンジスピーカ「DCU−F081PP」を作る

<PIONEERのエンクロージャー『LE−101A』を利用してフルレンジスピーカを作る (2011.01.22)>



 北欧家具で人気のIKEA(イケア)のテレビ用のボードを利用して、サラウンドスピーカを埋め込んで、コンパクトなAVボードを作成した。

 もちろん大きな音を出しても一向に構わないが、小音量で楽しむにはうってつけで、26インチのサブ・テレビにぴったりのものが出来あがって、先日エージングも済んだので、吸音材のグラスウールを手当てした。

 出来上がりは上々で作った本人が驚くほどのものになった。それですっかり満足なのだが、実はあの時期に、平行してもうひとつのスピーカへの手当てが進んでいた。今回は、そのスピーカについてお話しよう。



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購入したエンクロージャー 購入したエンクロージャー

PIONEERのスピーカ
 10cmフルレンジユニット「PE−101A」専用エンクロージャー

<LE−101A>

 さて、それは年末近くに始まった。

 買い置きの分では不足してしまい、先のAVボードで利用するターミナル・パーツを秋葉原の「コイズミ無線」へ買いに出かけた。そして2階の入り口脇に積まれた箱にふと目が行った。そこにはPIONEERが復刻版として発売し、ひどく評判となったスピーカ 『PE−101A』専用のエンクロージャが置かれていたのだった。

 この箱 『LE−101A』は、すべての板面が本物の木材でできている。

 いまどきの「リアルウッド」と称するものは、そのほとんどが表面に木目シートを張った「突板仕上げ」である。シートといっても木目様のビニールや木目を高精度にプリントしたメラミン樹脂ではなく、極く薄く加工された本当の板材を張ったものだ。
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 確かにそれらは「リアル(本物)」に違いないが、薄板が貼られた内部材は集積素材(チップを高密度に圧縮した板材)のMDF板というものがほとんどだ。

 なんとなくだまされたような表記なのだが、そんな中でも注意すると、無垢の板材を利用した逸品エンクロージャーもいくつか存在している。

 市販されたものでいえば、ビクターの美しい桜材を惜しみなく使ったウッドコーンスピーカ、パイオニアのウイスキーの醸造樽を切り出したモルトスピーカ、JBLの小型モニターなどが、そうした製品にあたる。

美しく仕上げられたい木目の生地
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 そうした市販されたスピーカの中で、パイオニアの『S−A4Spirit』という名称のブックシェルフに類型される製品群の中でもさらに小型といえる2ウェイがある。

 価格はひどく安くて、ペアで3万円程だ。5.1サラウンド用に開発された製品だが、勿論、従来の2Ch STEREOでの再生もターゲットにしているので、サイズからは考えられないような重厚な低音が出るし、高音も伸びやかに奏でられる。この製品は価格からは考えられないほどに優秀な小型スピーカと言えよう。

 今回購入したエンクロージャーの値段と、山椒のようにピリリとしたこの小粒スピーカの値段がほぼ同じである。

 LE−101Aは単品で、まさに「箱」だけなのだが、それに引き換えて、かたや2ウェイのユニットが付いている。たぶん、カーオディオ用スピーカの技術を応用したのでは、と思われる「ケブラー繊維」によるウーファーと、ドーム型のトゥイータで構成されている。それを思えば驚くべきコスト・パフォーマンスをもった製品といえよう。

 このスピーカは使われているユニットに元気があって鮮明な音が出てくるが、実はエンクロージャの素材が奢っているという特色を持っている。

 リアルウッドと謳われているが、それは従来言われているところの「リアルウッド仕上げ」ということではない。なんと完全な板材(木材)が利用されているのである。パイオニア社のプレス資料によれば、「高級感溢れる天然木無垢板を天板、側板に採用」とある。

 天然木無垢板と書かれているが、その内容は細い板材を継いで一枚にしたものだ。これも一種の集積材と呼べようが、細い幅での張り合わせは板の反りを防ぐための工夫だろう。もっと小型の設計であれば、多分、板を継がずに一枚の状態をそのまま利用したに違いないと思われる。

 このスピーカの外見は、やはり本物の板にしかない、しなやかな美しさを持っていて、私は随分気に入っている。

S−A4Spirit 高品位なサラウンド環境の構築をテーマに開発された
パイオニアの小型2ウェイスピーカ

S−A4Spirit』というお酒のような名称。

「ジン」などは私の大好きな蒸留酒だが、
JAZZを再生したときのイメージとしては
そんな感じ。

透明感があって、ぐっと響くパンチがある。

モルトやブランデーのように高級なものでは
確かにないが、
その世界には充分な楽しさがあり、
酔いしれることが出来る。


ピアノ・トリオのピアノの筐体の響きや
ベースの厚い唸りが
鮮度あふれて伝わってくる。


私は、このスピーカに
中域改善に特性を持つインシュレータを
利用している。

セラミックがベースで銅パウダーを混入したものだ。
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 コイズミ無線で見かけたのは、そんな2ウェイの筺体と同じ大きさのフルレンジ用の箱だった。

 およそ、30年ぶりに復刻された同社の銘機、10cmフルレンジユニットの「PE−101A」。そのための専用品として企画されたエンクロージャだという。だから、バッフル面にはそのスピーカユニット専用のマウント穴が開けられている。


<マウント部分を調整する>

 そのユニット復刻企画は大当たりで、大変な人気を出した。

 どの店でもユニットは多いに売れた。今は「完売御礼」の状態であるが、何とメーカは追加製造する気がない、という。このため、完全な限定品となってしまい、ユニットの在庫のある店ではプレミヤがついて販売されてもいるようだ。

 ユニットは悩んでいるうちに買いそびれてしまったので、残念ながら私が手に入れることはもうできない。

 区分でいうと10cmのフルレンジなのだが、実は独特の口径で設計されたものである。箱を自作する向きには問題が無いが、自作しない人にとっては市販のエンクロージャーではこのユニットを納めることが出来ない。このため、このあたりを判っているメーカが、専用設計の箱を用意した。

LE-101Aのバッフル面 LE-101A
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 それが、私が「コイズミ無線」で見つけたPIONEER(パイオニア)製のエンクロージャ「LE−101A」なのだった。

 バッフルのマウント口径(開口径)が111mm。大手メーカのフルレンジ10cmユニットを眺めてみると、マウント径はほぼ90mm近くで、大きくても100mm前後。このエンクロージャにマウントできるスピーカユニットは逆に、TANG BANDでもダイト―ボイスでもフォステスクでも存在していない。

 取付けようと思うユニットに合ったマウンター(バッフル面への取り付け台座やリング金具)をうまく見つければなんとかなるだろうが、困ったことに、通常の状態のままでは、ぴたりと設置が出来ないのだった。

 だから、折角の美しいエンクロージャーなのだが、マウント口径を広げるとか、安易にサブバッフルを宛がうとか、何らかの外観を損なうような加工が必要になってくる。先のマウンターがあれば一番雰囲気に与えるダメージは少なかろうが・・・。

スピーカターミナルは大型で真鍮削りだしバナナ端子
大型で真鍮削りだしの金メッキバナナターミナル
バスレフポート

 そうした事で、どうすれば最適に利用できるかを考えて購入を躊躇していたのだが、やはり、美しい木目を存分に活かしたいと考えて何日か迷った末に、後日出直して箱をペア分購入する事にした。

 しなやかな、温かみを帯びた木目の天然木で端整に作られた箱に魅せられてしまった、というところだろう。

 その後、ターミナルが足りなくなって、また店を訪れる機会があった。

 お誂え向きに性能のよいユニットが販売されていた。ウッドコーンを積極的に開発している気鋭のメーカ「PARC AUDIO」の製品で、口径は80mm。PPコーンによるフルレンジユニット『PARC−DCU−F081PP』だ。
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 外見上の特徴は、しっかりとしたアルミダイキャスト製の曲線基調のフレームと、金色に輝く、美しいアルミ削り出しによるフェイズ・プラグだろう。

 コーンは艶消し黒なのだが、ポリプロピレン製のためにうっすらと透けていて、いかにもしなやかな弾力を秘めている様子が見て取れる。

DCU-F081PP PARCオーディオの
DCU−F081PP


アルミ削りだしによる
フェイズプラグが印象的

ポリプロピレン製コーン

80mmフルレンジユニット

<PARC Audio の 80mm PPコーン・フルレンジ>

・超軽量コーン:
 真空成形法とマイカ強化ポリプロピレンコーン採用により、一般的なインジェクション成形法では製造困難な
 クラス最軽量の振動板を実現したという。
 聴き疲れのしないまろやかな音色、と謳われている。

・フェイズプラグ:
 アルミ製フェイズプラグを採用。素直な中高域を実現。

・その他の特徴:
 フルレンジスピーカーでは貴重なゴムエッジを採用し、小口径ながら表情豊かな低域を再生。
 銅製のショートリング採用により、磁気回路の電流歪を軽減。
 エアーフローを考慮したホール付き高品位コーネックスダンパーにより、リアリティの高い低域を再現。
 金メッキ端子を採用し、接続ケーブルとの伝搬ロスを防ぐ。

 と、いいことずくめだ。


<PARC−DCU−F081PP> の 基本仕様:

 インピーダンス …… 6Ω
 再生周波数帯域 …… Fo〜30KHz
 出力音圧レベル …… 83db
 最大入力耐圧  …… 15w
 バッフル開口径 …… 72φmm + ファストン端子ターミナル用のザグリ加工が必要
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80mmユニット DCU−F081PP DCU−F081PP のマグネット

<工作の開始 (ユニットの組み付け)>

 スピーカー・バッフルのマウント口径を実測してみた。

 ペアの両方ともに111mm。真円かどうかは判らないが、一流のオーディオ機器メーカ製なので、加工精度は良いだろう。

 このマウント穴を塞ぐ形でサブ・バッフル板を上面に被せる様に着けるのが一番安易な加工方法だが、それでは、サランネットを外した際に大分がっかりとしてしまう。

 そこで、ここはマウント穴にピタリとホールディングできる円盤状の板を用意し、そこにユニット開口径の72mm穴をあけて何とかしよう、と考えた。要はドーナツ形状への板加工を行い、それをバッフルマウント穴に埋め込み、そうやって小さくなった穴にユニットをマウントしようという作戦だ。

 そうすれば、普通にサランネットを取り付けられるし、バッフル面を表出させた場合でも、大きな違和感はない。何より、双方の板同士が圧着状態で保てれば、それをベースにして別の一般的な72mmの開口径をもった多くの8cmユニットと差し替える、という離れ業も可能となる。

 外径は112mmとし、これを削りつつ調整する事にした。内径は71mm。これもすこし余裕を見たが、ちょうど111mmと72mmで問題が無かったようだ。


 「朴の木(ほおのき)」を材料として、2個のドーナツ板(板厚は13mm)を作成した。

加工して作ったマウント用の輪 ドーナツ形状のリング板

別のユニット用に72mmφでは無いものも
作成した。

これなら、80mm口径ではなく、
その下の口径品 F66U3もつけられる。
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 では、具体的に工作の手順を見ていこう。


1.ドーナツ板を作る。

  まずは、適当な円形の板を探すところから始める必要がある。

  私は東急ハンズで120mmの円形の板材を112mmに加工してもらった。
  ハンズでの板材の加工は、工作精度が抜群なので、112mmではなく、111mmジャストで良かったようだ。

  左右として2枚必要なので、木目と色が揃っている素材を選ぶことに注意する。
  エンクロージャーそのものもそうだが、天然木は唯一無二だ。
  だから個性があって、なるべく同じ傾向の板材を選んでペアにする必要がある。

  バッフルのマウントにあてがって削り込んで具合を見る。あくまでも現物で調整する必要がある。

  バッフルへ接着しても構わないが、私の場合は密着状態が保持できた。
  そのため、圧着したままとして接着は控えることにした。


  なお、リングには予めユニット用のねじ穴として、下穴をあけておく。(1mmのドリルまたは、キリによれば良い)
  さもないと、ねじを締めこむ際になめたり、ドライバーの歯先が滑ってユニットに傷を付けてしまったり、という恐れがでる。

作成したバッフルリング
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スピーカバッフル バッフルへの組み込み

2.ユニットをマウントするためのサグリを入れる。

  ユニットのターミナル用に、ほんの少しサグリ(切り込み)を入れる必要がある。

  バッフルに作成したリング状のサブバッフル板を始めに付けてしまうと、若干の問題が出る。

  ユニットの大型なマグネット部の外周が開口径ギリギリで、それが端子の邪魔をするからだ。
  このため、バッフルへの装着が リング>ユニットの順だと、接続したケーブルまでは何とかなっても
  マグネット部にはみ出した形のターミナルが入らずにユニットの組み付けが出来ない。
  金属の端子部分を内側へ折り曲げてしまい干渉を避ける、という荒業を使うしかないが、
  それにはやはり躊躇があって、そうもできないではないか・・・。
  そうした順番での工作では、必ずターミナル用のサグリを加工することを忘れてはいけない。
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2+α.ユニットをマウントするためのサグリを入れる。

  板厚は13mmで準備したが、10mmでも充分だろう。

  ユニットのターミナル部分の余裕もそうなのだが、コーン裏面からマグネットまでの高さが少ない。
  あまり厚い板にすると、背面の余裕というか空間が少なくなる。
  最近はユニットのコーン背面とバッフル裏面とのエアーフローにも気を使う傾向のようだ。
  このため、写真ではけがき線のみで未加工だが、背面を加工して板厚を調整しても良いかもしれない。

  トリマーという工作機械を持っていれば、こうした形状加工が余裕で出来る。
  あいにく、私はそこまでの機材が無いので、こうした削り加工は大きな木工用の鉄やすりで行うほか無い。
  調理で使うおろし金で「鬼おろし」みたいな、ざっくりと削れるものがないとかなりの手間になろう。

  実は、東急ハンズなどでは、こうしたトリマーによる加工もお願いが出来る。

ユニット裏の状態 裏面加工への道
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3.マウントする。

  作成したドーナツ板(リング形状のサブバッフル)を本来のバッフル開口部に押し込んで、固定を確認する。
  先に書いたようにターミナル用のサグリを付けていれば、その後にユニットをはめ込むという手順になる。

  私の場合は、ユニットをサブバッフルのリング板につけた状態で、スピーカ内部と結線し、
  そして、リング板を木目方向に注意しながら、ゆっくりと慎重に押し込んでいった。

  なお、内部との結線だが、エンクロージャ付属の内部線材は終端がファストン端子で加工澄みなので、
  このユニットへの接続は実に楽に出来る。しかも端子の双方が金メッキで加工されている。


   ユニットを停める方向を再確認し、バッフル面との平滑に注意して圧着状態を保つようにしよう。

   ドーナツ板は、後日塗装する予定だが、まあ、今のままでも良いかもしれない。

バッフルへ装着する バッフルへ装着する
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 エンクロージャーは完成品なので、吸音材やターミナルからの内部接続ケーブルなど、一連の構成パーツを新規に購入する必要がない。

 今回は木工を行ったが、標準品のユニットが確保済みであったのなら、それをネジでマウントするだけで、完成となる。

スピーカ DCU−F081PP 前にやったように、オニメナットを利用して、
金属製のボルトでマウントするという方法も残っている。

バッフルへの固着が高まるためだが、
今回は、その部分にドーナツ板が介在している。

このため、通常の「木ネジ」での取り付けにした。

金具などの材料は用意しているので、後日検討することにしよう。
スピーカのバッフルへ

 こうして出来上がったスピーカでやらなければならないのは、エージング作業だけを残すことになる。

 だがこれは、単純に良質の音源で、弛まなく音を出していればいい。いつも聴いている内容を暇さえあれば再生し続ける、という作業なので神経質になる必要は無い。

 ポリプロピレンの素材が硬く馴染んでいないためなのか、当初は、妙な音が出て多少ガッカリする部分があるはずだ。

 私も、最初に出てきた音に対してはアレッっと思った。完成直後に出てきた再生音はなんだかぎこちなくて、しかも薄っぺらな感じがしたのだった。
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塗装前の状態

果たして、
バッフル面と色があわせられるのか、という懸念がある。


無塗装でも、慣れて来ると当初の違和感も薄まる。

 根気よく音出しを続けるうちに、音が瑞々しく感じるようになった。しばらくすると、一度聴いた曲をもう一度聴きたい、と感じることが出てきたのだった。

 高音部分がきれいに伸びて、音に張りがあり、旋律に艶が感じられる。こうなれば、ユニットのエージングもようやく済んだ、という状態であって、音が本来の安定した物に成ってきたということだろう。

 ちなみに、内部の吸音材やバスレフ用のポート長などは手当てをせずに、オリジナルの状態のままにしている。

LE−101Aの設定完了 LE−101A
に設定した


PARCの
DCU−F081PP
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